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一枚の名車絵 第8回 フェラーリ ディーノ246(Ferrari Dino 246)

フェラーリの名車とされるディーノですが、フェラーリの総帥、故エンツォ・フェラーリの息子で、若くして亡くなったアルフレッド・フェラーリ(ディーノという愛称だった)の名を与えられたこのクルマは、本来のフェラーリ・ブランドではなく、ディーノブランドで発売されたクルマだったことは有名な話かと思います。そのため、ボンネットには跳ね馬のエンブレムがついていません。


◆V6であるがゆえに


ディーノが別ブランドになったのは、その成り立ちの違いにもよります。それまでフェラーリのロードカーは、すべてV12エンジンを搭載した高級スーパースポーツでした。V12でなければフェラーリではない、とも言われていたほどです。ですが、ディーノはコンパクトなV6エンジンを乗員の後ろに搭載した、コンパクトスポーツカーで、かつ、フェラーリ初のミッドシップカーでした。このV6エンジンはフェラーリが設計しフィアットが製作にも関わったもので、当初の排気量は2リットルでした。

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ちなみに、このエンジンでフェラーリはF2レースに出場するために「連続する12ヶ月に500基」というホモロゲーションの条件をクリアしないとならなかったのですが、そのためにフェラーリはフィアットにこの「ディーノ・エンジン」を搭載するクルマの量産を依頼した経緯もあり、フィアットからは「フィアット・ディーノ」というスポーツカーも登場しています。

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そのため、ディーノは1967年登場時の排気量は2リットルで、「ディーノ206」と言われました。20は排気量、6はシリンダー数を現します。1969年には2.4リットルに拡大されてディーノ246となりますが、エンジンの変更のみならずホイールベースまで変わっており、206と246では実際にはボディ形状、ホイールの留め方、室内の広さ、バンパー形状などにかなりの相違があります。エンジン自体もコストダウンが図られ、エンジン本体がアルミから鋳鉄へと変更されています。パワーは206では185ps、246は195psを発生しました。


◆ピニンファリーナが描く美しいライン


小さな車体にキャビンとエンジンと実用的なトランクスペースを巧妙に押さえ込んだ優秀なパッケージングを包むボディは、現在もフェラーリ各車の線を引くピニンファリーナが手がけています。抑揚の大きな美しいフェンダーと完璧とも言えるバランスを持ったサイドビューが特長です。当初はクーペのGTのみでしたが、1971年からはタルガトップの「GTS」が追加され、2つのボディが用意されることになりました。

ディーノはその後1975年にV8エンジンを搭載した308GTB/GTSに発展、V12フェラーリとは違う、現行車種である488まで続くもうひとつのフェラーリである「V8コンパクトミッドシップフェラーリ」というラインを築くことになったのでした。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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