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「もやもやクルマ選び」第4回 メルセデス・ベンツCクラス(W205) C220d

レアでマニアックなだけがクルマじゃない。新型車たちにも、世間から忘れられた中古車たちにも、クルマ好きのぼくらをワクワク「もやもや」させる悩ましい魅力を持つクルマがたくさんあります。第4回は2015年に追加された注目の一台、「メルセデス・ベンツCクラス(W205) C220d」をお送りしましょう。


◆同じドイツの競合とも鎬を削る激戦区


メルセデス・ベンツの販売の中核をなす、Cクラス。BMWの3シリーズなど競合ライバルがひしめくボリュームゾーン「Dセグメント」に属するサルーンです。Cクラスの歴史は1982年登場の「190シリーズ(もしくは190クラス)」(W201)がその原点となります。それまで「コンパクト」といっても今の「Eクラス」に相当するミディアム・クラスしか持っていなかったメルセデス・ベンツが、3シリーズやアウディ80と真っ向勝負をするために、従来のコンパクトよりも小さい車種として投入したのが190クラスでした。

190クラスは日本でも六本木カローラとさえ云われた3シリーズ同様にかなり売れましたが、世界中でも大ヒットしました。たしかにボディが小さい「小さなベンツ」だったのですが、小型車だから装備や安全性が失われるということはなく、上位車種をそのまま小さく作るという発想で開発されていたのが190クラスの大きな特長といえました。

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その後190クラスは1993年にCクラスに発展。この初代Cクラス(W202)はボディサイズを拡大することで190クラスのネガでもあった室内の狭さを解消、ワゴンボディを用意するなど、いまのCクラスにつながる基本を確立しました。Cクラスはその後2000年に2代目(W203)、2007年に3代目(W204)へとモデルチェンジを重ね、熟成を進めていくことになります


◆大きく舵を切った野心作のW205


copyright_izuru_endo_2016_03_C220d_1280_570(クリックで拡大)そして2014年、現行型であるW205型が登場しました。これまでのCクラスが初代からの熟成モデルだとすれば、W205は大きく変化のある世代といえます。ある程度居住性を犠牲にしつつスタイリッシュさを優先したアグレッシブなデザイン、オートマチックのシフトノブをステアリングコラムに移したり、3眼メーターを廃止したり、操作系やメルセデス・ベンツの文法にまで踏み込んだ“野心作”ともいえる内容を持っています。「メルセデスの本気」というキャッチコピーの通り、モデルチェンジで手が入っていないところがないのではないかと思わせるほどに、新しさを感じさせるのです。

2015年秋には、このW205に待望のディーゼルエンジン搭載モデルが追加されました。欧州ではメインエンジンともなっているクリーンディーゼルは、スタイリッシュさを得たものの「実用車としての本質」を失っていないCクラスにとってまさにぴったりのエンジン。パワーと燃費を両立したクリーンディーゼルエンジン搭載のCクラスは、ディーゼルエンジンへの考え方が変わってきた我が日本市場で台風の目になるかもしれませんね。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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