水素をエネルギーとして走るクルマ「FCV(燃料電池自動車)」に注目が集まっています。

トヨタが昨年12月15日に、世界に先駆けてFCVの『MIRAI』を発売し、ホンダも来年の3月までにFCVを販売予定。日産も2017年中にFCVの発売を予定しています。

FCVは日本のみならず、世界的にも普及に力を入れ始めているクルマです。

大手自動車メーカーが開発に注力し、国際的な関心が高まりつつあるFCVの魅力とは何なのでしょうか。今回は、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッドカー)以上に注目を集めているFCVについてご紹介したいと思います。



◆FCVのここがスゴイ!


9-7【その1】環境への負担を軽減する
FCVは燃料となる水素と酸素の化学反応を用いて発電させる電気で走行するクルマで、走行中に水しか排出しないため「究極のエコカー」とも呼ばれています。

排出ガスや大気汚染物質を低減する効果が期待されているため、日本政府もクリーンな水素社会を目指してFCVの普及を後押ししています。

また災害発生時に家庭用電力を補ったり、医療用電源として活用できるということも政府が普及を後押しする理由のひとつです。

【その2】充電の必要がない
FCVは水素を補給するだけで走行可能なため、充電をする必要がありません。
水素の充填時間も3~5分程度と短く、手間を取らせません。

FCVとEVの充填方式を比べた場合、FCVが水素を補給する専用の水素ステーションまで行かなければいけないのに対し、EVはユーザーの家庭で充電することができます。
ということは、EVの方が楽で便利なのかというとそうではありません。

EVを充電するためには専用の充電器を自宅に設置しなければいけませんが、お住まいがマンションであった場合は充電器を設置することは事実上不可能です。
自宅に充電器を設置できる環境であったとしても、EVをフル充電するまでの時間は通常で約8時間、急速充電でも約30分かかってしまいます。

FCVであれば、ガソリンスタンドに乗り付けて補給しているのと同じやり方で、水素ステーションで水素を短時間で補給できるのです。

【その3】航続距離が長い
また、EVと比べて航続距離が長いというのもFCVの強みです。
EVの航続距離は150~200Kmですが、FCVは500~700Kmとガソリン車並みに長い距離を走れます。
ホンダが来年発売予定のFCVは水素燃料の満充填時の航続距離が約750kmと、トヨタが昨年発売したMIRAIよりも約100Km長くなるそうです。

【その4】走行中の音が静か
FCVはガソリン車に比べて走行時の音が静かなことも特徴です。
搭乗者が快適に過ごせるだけでなく、音を出さないFCVのみが走るようになれば、街全体の騒音対策にもなります。
また、FCVは水だけを排出するので嫌なニオイもまったくしません。

【その5】万が一の時の安全性
水素と聞くと「爆発する」といったイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
しかし水素は自然発火の可能性はゼロに等しく、しかも水素は空気よりも軽くて拡散性が高いため、例え着火してもすぐに鎮火する性質です。
万が一漏れたとしてもガソリン車よりFCVの方が安全であると言えるでしょう。


◆FCV普及のために必要な水素ステーションの整備


利便性に優れ環境にも良いFCVですが、普及させるためには燃料を供給するための水素ステーションの整備が急務となっています。

一基につき数億円の費用が必要とされる水素ステーションを整備するのは容易なことではありませんが、FCVの普及を後押しする企業が中心となり計画を進めています。

2015年2月に、トヨタ、ホンダ、日産の大手自動車メーカー3社が、水素ステーションの整備を促進するために協力することを発表。
水素ステーションの運営経費の一部を負担してインフラ事業者を支援するとのことです。

昨年6月に政府が策定した『水素・燃料電池戦略ロードマップ』では、2015年内に4大都市圏を中心に100ヵ所程度の水素ステーション整備を目指しており、100ヵ所の設置が実現すればその数は世界一になるのだといいます。


FCVは高級車!?

2014年12月15日に発売が開始されたトヨタのFCVの「MIRAI」ですが、発売当時はニュースでも取り上げられたのでご存知の方も多いかもしれません。

MIRAIは700万円以上する高級車ですが、一般的なガソリン車では受けられない補助金や各種関連税の減税(エコカー減税)で、200万円以上も割安で購入することができます。

FCVの車両本体価格は一台あたり数億円と言われていた時期もありましたが、開発技術が劇的に進歩したため数百万円というところまで下げることができたのです。
とは言えまだまだ高額であることには間違いありません。この高価な価格設定は「水素ステーションの整備」と並んで、FCVの普及に向けた最大の課題と言えるかもしれません。


本格的な普及は2020年以降と言われているFCVですが、水素ステーションが全国各地に整備され、価格もリーズナブルになれば一気に普及するかもしれません。
今後クルマを買い替える際にエコカーを検討される際は、こうした状況を踏まえた上で賢いクルマ選びをしましょう。