BMW X1

<FRからFFへ! 実用性は大幅向上、気になる走行性能は?>

BMW X1BMWは、コンパクトSUVのX1 をフルモデルチェンジし発売を開始した。X1はこのモデルで2世代目となる。

コンパクトSUVは、ここ最近輸入車・国産車問わず人気の高いカテゴリー。そのコンパクトSUVセグメントに、先代 X1は2010年から国内マーケットに投入された。当時は、このクラスにライバルはほとんどいない状態で、X1はコンパクトSUVのパイオニアともいえる存在だ。そして、注目したいのは、他のXモデルと同様にFRベースであるということだ。そんなこともあり、SUVでありながらスポーティなハンドリング性能をもっていた。その後、多くのコンパクトSUVがマーケットに投入されたが、ほとんどがFFベースでX1はとてもユニークな存在だった。

ある意味、X1はFRベースであることが存在価値でもある。そんなX1は、フルモデルチェンジで大きく方向性を変えた。なんと、FRベースからFFベースへとなった。FF化することで、より高効率なパッケージングとすることが目的だ。フルモデルチェンジにより、X1のボディサイズは、先代モデルから全長が30mm短くなり、全高が35mm高められた。

BMWX1FF化のメリットは、実用性に大きく貢献している。後席には用途や乗車人数に合わせて居住性とラゲージ・ルーム容量を自在に調節することが可能な、スライディング機能(60:40で前後130mm調整可能)を装備。ニールームは、先代モデルから最大66mm拡大された。全長が短くなっているのに、ひとクラス上のモデルに匹敵する後席空間を実現した。

スペース効率の向上は、ラゲッジスペースにも及ぶ。SUVである以上、ラゲッジスペースの広さは重要な要素だ。X1のラゲッジスペースは、先代モデルから85Lプラスの505L。ひとクラス上のX3が550Lなので、X3に近い容量をもつ。また、ライバルのメルセデス・ベンツGLA が421Lなので、GLAより広いラゲッジスペースをもつ。さらに、2列目シートのバックレストを全て倒すと、ラゲッジスペースは1,550Lに拡大。GLAの1,235Lを大幅に上回る。

使い勝手面では、小回り性能の基準となる最小回転半径はX1が5.4m。FF化されても先代モデルと同等のレベルを確保。対して、GLAは5.7mなので、ライバルを上回る機動性を誇る。

X1のデザインは、先代に比べ大きく変化した。旧型は、どちらかというとセダンに近いスタイリングだった。今回のフルモデルチェンジでは、X5と同様な押し出し感あるタフなルックスとなった。着座位置では、前席で36mm、後席で64mm高められた。乗降性が向上したと同時に、アイポイントが高くなることで良好な視界が確保できるようになった。インテリアの装備面では、8インチの画面をもつiDriveナビゲーションシステムが、全車に標準装備されている。

BMWX1また、エアロパーツや専用サスペンションを装備した人気グレード「Mスポーツ」の他に、新グレード「xLine(エックスライン)」が新設定。マットシルバーのフロントアンダーガード、サイドスカートインサート、キドニーグリルバーや、パワフルなデザインの18インチYスポークアロイホイールなどを装備し、よりSUVらしいたくましさをアピールする。

FFの他にAWDも用意されているX1。AWDのxDrive車には、新開発のオンデマンド式インテリジェント4輪駆動システムを搭載。通常走行時には、燃費など効率的などを重視しFF状態。ただし、ステアリングの切れ角やホイールの回転速度などの車両データからオーバーステアやアンダーステアなどの兆候を察知すると、ファイナルドライブに一体化された電子制御式多板クラッチシステムが瞬時に前後アクスルへの駆動トルクを可変配分し、優れたトラクション性能を発揮する。

また、FFベースということもありアンダーステアをいかに減らすかという機能もプラスされた。横滑り防止装置を使った車両安定化技術であるパフォーマンスコントロールを全車標準装備。コーナリング中にアンダーステアの兆候が出ると、システムがコーナー内側のリヤホイールに軽くブレーキを作動させると同時に、エンジンの駆動トルクを増加させることで、外側のホイールへの駆動力を高め、コーナーでの駆動力を最適に制御する。こうした機能により、FR車にも負けないニュートラルなハンドリング特性として、BMWらしいハイレベルなハンドリング性能を実現している。

新型BMW X1に搭載されるエンジンは3タイプ。注目は、新世代モジュラーエンジンである1.5L直3ターボ。18iに搭載され、136ps&220Nmを発揮。20iには2.0L直4ターボが搭載され192ps&280Nm、25iは2.0L直4ターボで231ps&350Nmをアウトプットする。

残念ながら、2シリーズグランツアラーに搭載されている2.0Lクリーンディーゼルエンジンの搭載は見送られている。欧州仕様には、X1にもクリーンディーゼルを搭載したモデルがラインアップされているので、近いうちに導入される可能性が高い。

BMWX1燃費値はxDrive20iが14.6km/L、xDrive25iが14.3km/Lという低燃費を実現。こうしたSUV車は、背が高く顔も大きいことから空気抵抗も悪く燃費に悪影響を及ぼす。そのため、X1はフロントエプロンのサイドエアインテークに配置されたエアカーテン、リヤスポイラーにはエアブレードなどを採用。クラス最高レベルの空気抵抗係数(Cd値)0.29を実現している。X1 sDrive18iの諸元値は国土交通省に申請中だ。

X1の安全装備に関しては、一定水準以上を確保。自動ブレーキを含無安全装備ドライビング・アシストを全車に標準装備。車線逸脱警報や、歩行者検知式自動ブレーキ機能をもつ。こうした安全装備が標準装備化している点は高く評価できる。こうしたアクディブセーフティ機能だけでなく、車載の通信モジュールを利用したBMWコネクテッドドライブ・スタンダードを標準装備。この機能は、エアバッグが展開するような深刻な事故が発生した場合、車両から自動的にSOSコールセンターに接続。緊急時にも安心できる機能といえる。

さて、新型BMW X1の価格はX1 sDrive18iで3,850,000円から。先代のエントリグレードより、やや価格はアップ。ライバル車よりも、高めの価格設定のように見えるがX1はエントリグレードでも装備がなかなか充実している。LEDヘッドライトやナビ、自動ブレーキなどが標準装備化されている。こうしたことを加味すると、逆にやや安めの価格設定ともいえる。ただし、アダプディブクルーズコントロールがオプションだったりする。アダプディブクルーズコントロールくらいは装備したいのだが、なんとヘッドアップディスプレーとセットで155,500円と高価だ。そのため、納得のいく装備ににすると少なくとも400万円くらいからの予算が必要となる。

X1のグレード選びは、本来ならSUVとの相性もいい2.0L直4のクリーンディーゼル車としたいのだが、導入されていない。クリーンディーゼル車を待った購入を考えた方がよい。日本に導入されれば、エコカー減税免税レベルになるので、減税メリットも大きい。さらに、ガソリン車はハイオク仕様なのに対して、クリーンディーゼル車は軽油なので燃料費が30円/L以上違い燃料経済も高い。

ガソリン車を選ぶ場合、まずAWDかFFかという選択になる。降雪地域に住んでいるとか、ウインタースポーツを楽しんでいるという人以外は、FFでも十分だ。AWDになると、2.0Lターボになり価格もイッキに上昇する。ザックリ80万円もアップするので、AWDが本当に必要かどうかジックリと検討したい。

2.0Lターボは、出力違いで価格差が大きく異なる。出力が192psから231psになると、やや装備差があるもののザックリ80万円くらい価格がアップする。X1 xDrive25i M Sportになると5,910,000円にもなる。この価格は、ひとクラス上のX3 xDrive20iと同じ価格帯。231ps仕様は高価な印象が強い。よほど予算がある人向けのエンジンだ。

新グレードのXラインもなかなか魅力的。しかし、BMWの場合、やはりMスポーツを中心に考えたい。Mスポーツは、日本マーケットで非常に高い人気を得ている。他のモデルでも売れ筋グレードで、リセールバリューも非常に高くなる。短期の乗り換えならMスポーツが特にお勧めだ。ルックスや装備も充実しているので、満足度も高い。FFモデルでは、エントリグレードと46万円差。この差は、短期で売却する場合、リセールバリューの差でほとんどなくなる可能性もあるからだ。グレード選びに迷ったら、Mスポーツを買え! これが、BMWグレード選びの鉄則なのだ。

■BMW X1価格
・X1 sDrive18i ¥3,850,000
・X1 sDrive18i xLine ¥4,130,000
・X1 sDrive18i M Sport ¥4,310,000
・X1 xDrive20i ¥4,730,000
・X1 xDrive20i xLine ¥4,920,000
・X1 xDrive20i M Sport ¥5,110,000
・X1 xDrive25i xLine ¥5,690,000
・X1 xDrive25i M Sport ¥5,910,000