ここ20年ほどの間に、世の中の様々な分野においてIT(情報技術)化が急速に進みましたが、自動車業界にもその波は押し寄せています。
2014年から本格的にクルマとITの融合が始まり、世界中の自動車メーカーや大手IT企業などが、こぞってコネクテッドカーを市場に投入しようとしています。

コネクテッドカーとは、常時インターネットに接続し、様々なデータを収集・分析して、それをあらゆる面で活用するクルマのことです。
そのハイテクぶりは「走るIT」とも呼ばれ、世界中でこの新たな市場へ注目が集まっているのです。

名だたる自動車メーカーやIT企業の開発競争が今後ますます熾烈さを極めることが予想されるコネクテッドカーですが、その魅力とはいったい何なのか。
そしてコネクテッドカーの普及によって、どのような未来がもたらされるのでしょうか。

今回は、新しいテクノロジーによって生み出される次世代のクルマ「コネクテッドカー」について考えてみたいと思います。


コネクテッドカーの魅力

2015年1月4日から9日まで、
ラスベガス(米)で世界最大規模の家電ショー「International CES 2015」が開催されました。
ここ数年間は4Kテレビやスマートフォンが展示のメインだったのですが、今年はインターネットに接続した次世代のクルマ「コネクテッドカー」が際立った存在感を示していたといいます。

コネクテッドカーとは、クルマを常時インターネットに繋ぐことで、安全性・利便性などを高めるための様々な情報を収集・分析します。

このデータ収集には、GPSによって収集される走行速度や位置、路面状況、交通情報などを知る「プローブデータ」や、ドライバー・モニタリング・センサや車間距離センサなどの「制御データ」があります。
通信システムをクルマと組み合わせることでリアルタイムに様々な情報を集められるというわけです。
こうして集められた情報は、運転支援、渋滞緩和、安全性の向上(衝突保護・危険警告)、保険サービスなどに活用することを狙いとしています。

また、コネクテッドカーは、地図、店舗情報、音楽や動画の再生といったエンターテインメントなど、「情報の発信」という機能もあります。これらの機能によって、コネクテッドカーはこれまでにない新しい価値を創造することが期待されているのです。


【相次ぐIT企業の参入】

carplay●アップルの「CarPlay」
クルマとITの融合によって生まれたコネクテッドカーですが、これらのシステムの基盤となるのが、車載OSです。
アップルやグーグルといった巨大IT企業が車載向けのOSを提供するなど、自動車産業に新たな風を吹き込んでいます。

アップルは、iPhoneとクルマを接続し、iPhoneに搭載されている音楽や動画、メッセージ、地図といった機能を、クルマのスピーカーやディスプレイを使って表示・再生する「CarPlay」を開発し、自動車産業への先陣を切りました。
様々な機能がハンズフリー・アイズフリーで利用(音声認識のSiriも利用可)できるCarPlayは、日常的に使っているiPhoneをクルマの中でも使用できる、とても便利で画期的なシステムなのです。

android_auto●グーグルの「Android Auto」
一方、グーグルはCarPlayに対抗するかのように車載版Androidの「Android Auto」を開発しました。

Android AutoはCarPlay同様、クルマとスマートフォンを連動させ、音楽・動画再生やメッセージサービス・Google Mapのカーナビ機能など、様々なスマートフォンの機能を、車内でそのまま使用できるようにするシステムです。

2015年内には次期バージョンの「Android M」を発表(現時点では開発者だけを対象としており、一般提供はされていない)予定で、Android Mは、スマートフォンとクルマを接続しなくても、Googleの各サービス・機能を車内で利用することが可能だといいます。


マイナー企業のシステムを選んだトヨタの挑戦

自動車メーカー各社はアップルやグーグルと連携し、CarPlayやAndroid Autoを車載OSとして採用していますが、カーナビメーカーなども、これらのシステムを取り入れたコネクテッドカーの開発を進めています。

熾烈な覇権争いが予想される中で、IT企業がこの分野までも引っ張っていくのか、それとも自動車メーカーが独自の価値を創造し、主導権を取り戻すのか、大きな注目が集まっています。
自動車業界は今、収益構造・ビジネスモデル自体が大きく変化しかねない転換期を迎えているといえるでしょう。

そうして各自動車メーカーが、Apple CarPlay、Android Autoのどちらか、もしくは両方を相次いで採用する中、トヨタは名前のほとんど知られていない企業のプラットフォームを自社のクルマの車載OSとして採用しました。

アメリカのテレナ社が開発した「スカウトGPSリンク」と、同じくアメリカのUIEvolutionが開発した「UIEngine Link」です。
アップルやグーグルといった巨大資本ではなく、知名度の低い企業のシステムを採用したことで、自動車メーカーよりもOSにこだわる若者世代に敬遠されてしまうのではないかといった声もあり、今後ユーザーからどのような反応があるのか、自動車業界では注目の話題となっています。


コネクテッドカーの未来

コネクテッドカーに導入されているシステムの進化に伴って、クルマの安全性と利便性は今後さらに高まっていくことでしょう。
コネクテッドカーとは、ただクルマに通信機能をくっつけただけのものではなく、日々の生活の中で活用する情報端末のひとつとして、当たり前のように使用する未来が、遠からずやって来るのではないでしょうか。

今後CarPlayやAndorid Autoなどの車載OSが普及していくと、アプリの開発・販売を行っている多くのメーカー(企業・機関)が、クルマ用のアプリを次々とリリースしてくることも考えられます。
そうなると劇的に車内の運転風景が変わり、クルマがより便利になっていくことでしょう。