近年、様々な分野において目覚ましい勢いでIT(情報技術)化が発展を続けていますが、自動車業界も例外ではありません。

世界の名だたる自動車メーカーや大手IT企業などが、自動運転技術やクルマが常時インターネットに接続された状態のコネクテッドカーを競うように開発しています。
クルマは益々便利な乗り物へと進化し、誰もがドライバー不要の完全自動運転車に乗って移動するというような社会も現実味を帯びてきました。

そんな自動運転車・ITカーという新たな市場の発展に大きな注目が集まっている中、今回は、自動運転技術で他の企業より一歩先を走っているGoogleの取り組みについてご紹介してみたいと思います。


Googleの自動運転車「プロトタイプ」

9-3自動運転車の分野において先行していると言われているのが、2009年から自動運転車(Google Car)を研究・開発しているGoogle です。

2015年6月には、Googleの自動運転車の最新モデル「プロトタイプ」をGoogleの本社があるカリフォルニア州のマウンテンビュー市で走行実験しました。
プロトタイプは2人乗りの小型電気自動車で、ハンドルやアクセル、ブレーキペダルのない100%自動で運転するクルマです。
搭乗者がスタートボタンを押すだけでクルマは走り出しますが、試験運転中は無人で走るのではなく、クルマにはテストドライバーが搭乗し、万が一何らかのトラブルが発生した場合にはドライバーが運転操作を行うといったものです。
2015年7月にはテキサス州でも、SUVタイプの試作車「レクサス・RX450h」で試験走行を開始しました。

また、9月にはテキサス州オースチンでプロトタイプの走行実験を開始。
自社開発のプロトタイプを使用した公道走行をマウンテンビュー市以外で行うのはこれが初めてのことで、マウンテンビュー市とは違った運転環境や交通状況の情報を集めながら走行実験すること、そして地域住民が自動運転車に対してどのような反応を示すのかを検証することが目的なのだそうです。

米社会の自動運転車への期待が膨らむ中で、とっさの時にちゃんとブレーキがかかって止まるのか、急に走り出したりしないのか、といった不安の声もあり、ドライバーのいないクルマへの懸念を払拭し、米社会に受け入れられるのかが今後の課題となっています。

ただ、今のところ2020年の実用化に向けてGoogleの自動運転車プロジェクトは大きなトラブルもなく順調に進行しており、これからもっと試験運転の走行距離を伸ばし、多くのデータを収集していくようです。


Googleの次なる狙いは「無人タクシー」!?

Googleは自動運転技術を活用した「無人タクシー」を計画しているのではないかと噂されています。

自動運転タクシーが登場することの最大のメリットは、利用料金が大幅に安くなるということ。
タクシー料金は70%以上を人件費が占めていると言われており、ドライバーがいらなくなることでリーズナブルな価格設定が期待できるのです。

また、お年寄りや体にハンデキャップを抱えた方など、日ごろ移動手段が限られている方にとって、移動の自由を得られるというメリットもあります。
さらに、ドライバーによって差が出てしまうことのある「サービスの質」といった点も改善され、ITタクシーのクオリティの高いサービスを確実に受けられるようになります。


Androidの車載版「Android Auto」

自動運転車が普及すれば人は運転から解放され、その分「自由に使える時間」が増えます。

移動をしながら様々なコンテンツを利用したり仕事をする時間に充てられるわけですが、車内でいかに快適な時間を過ごすことができるのかという「ユーザー体験を作り出す」ことこそがIT企業が最も得意とし、大いに力を発揮できる部分なのです。

つまりITとクルマの融合です。そしてそのシステムの基盤となるのが車載OSです。
Appleは、iPhoneとクルマを接続し、Phoneに搭載されている音楽や動画再生、メッセージ、地図アプリなどのiPhoneの機能をクルマのディスプレイやスピーカーを使って表示・再生する車載OS「CarPlay」を開発。

これに対抗するかのようにGoogleが開発したのが、車載版Androidの「Android Auto」です。
こちらもスマートフォンとクルマを接続することによって、Google Mapのカーナビ機能など、様々なスマートフォンの機能を車内で使用できるシステムです。

各自動車メーカーはAppleやGoogleと連携し、CarPlayかAndroid Autoのどちらか、もしくはその両方を相次いで車載OSとして採用しているのですが、一方で、ドイツのメルセデスベンツやBMWといった高級自動車メーカーなどは、自動運転技術の開発競争でGoogleに後れを取らないようにIT技術者の雇用を拡大し、人員を増やしているといいます。

車載OSをめぐる勢力争いも激しさを増しているようですが、独自のスマートフォンOSを持っていない企業は、自社コンテンツや広告配信といった新たなビジネスモデルを構築しない限り、大手IT企業に太刀打ちするのは難しいといったところが現状ではないでしょうか。


自動運転車の安全性

自動運転車と聞くと、多くの人が懸念を抱くのは「安全性」の問題ですが、Googleの自動運転車はすでに人間以上の能力を持っていると言われています。

Googleの自動運転車「プロトタイプ」は、レーザー光センサーや位置センサー、レーダー、カメラなどによって、常にクルマの周囲360度をモニタリングしています。
周辺にある物体を捉えて高速度で解析し、形や色を的確に把握したり、前方のクルマとの車間距離を認識して適度な距離を保つといったことが可能です。
それらの高性能な運転システムはすでに実用段階に達していると言われています。

Googleは、自動車事故全体の93%が人間のミスによるものとしており、自動運転車を普及させることにより、交通事故がゼロになる安全な交通社会の実現を目指しているのです。


近い未来に自動運転社会は実現する!?

自動運転の技術は自動車業界のみならず社会全体に非常に大きな影響を与える可能性があります。

流通形態や交通の状態を変化させ、それにともない無くなってしまう職業も出てくるでしょう。
法律の改正をはじめ事故の責任所在の問題など乗り越えなければならない課題も多く、自動運転車を誰もが日常的に使用するようになるにはもう少し時間がかかりそうです。

自動運転車によって事故は減り交通渋滞も少なくなり、なおかつ今よりも遥かに便利な世の中になるということを、各自動車メーカーや自動車業界に参入するIT企業は社会全体に納得させなければいけません。
しかしそれも遠くない未来の話だと思います。

自動運転車がより便利な社会の到来を招く次世代のツールであるという認識が世界的にも広がりつつあり、国際的にも法律改正の方向に動いているようです。
私たちが思っている以上に早く、自動運転車が当たり前に使われる未来はやってくるのかもしれません。