フォルクスワーゲンパサートフォルクスワーゲンは、ミドルサイズのパサート /パサートヴァリアントをフルモデルチェンジし発売を開始。新型パサートは、このモデルで8代目となる。

20.4㎞/Lというクラストップレベルの低燃費だが、クリーンディーゼルやPHVが2016年以降と遅すぎる投入タイミングが難点


新型パサートは、メルセデス・ベンツCクラス やBMW3シリーズ 、アウディA4 などと同じクラスに属するモデル。国内の輸入車マーケットでも、非常に厳しい戦いが繰り広げられているクラスだ。パサートはFF車ということもあり、コストパフォーマンスや燃費に優れたモデル。しかし、いくらコストパフォーマンスに優れていても、そう簡単に売れないのが輸入車のむずかしいところで、パサートは販売面で大苦戦している。

売れない理由はデザイン?!


売れない理由は、デザインと言われている。完成度の高いデザインながら、個性的なデザインが多いライバルに比べ、パサートは控えめで地味に見える。高級輸入車を買う顧客にとって、ある程度目立つというデザインであることは重要だ。

そんな先代パサートから、新型に切り替わりデザインは精悍さが増した。水平基調のグリルからヘッドライトへつながるフォルクスワーゲンらしいデザインを踏襲。ヘッドライトの高さを抑え薄くし、やや睨みのきいた精悍なフェイスとなり、よりワイド&ローを強調したシルエットになっている。迫力系のフェイスが多いライバルにも負けない存在感が出てきた。

フォルクスワーゲンパサート新型パサートに搭載されたエンジンは、1.4LのTSIのみ。150ps&250Nmを発揮し、先代パサートの1.4L TSIに比べ28ps&50Nmと大幅にパワーアップされている。燃費は、20.4㎞/Lで先代より2.8㎞/L向上。さすがフォルクスワーゲンというべきなのは、パワーアップと同時に、約16%もの燃費向上が図られている点だ。このエンジンスペックは、かなりの実力。1.6Lエンジンを搭載したメルセデス・ベンツC180が156ps&250Nmなので、200㏄小さい新型パサートのエンジンはほぼ同等の出力を誇っている。さらに、燃費はCクラスが17.3㎞/Lなのに対して新型パサートは20.4㎞/Lなので3.1㎞/L優れていることになる。

ただし、これだけ優れたパワーユニットながら、ガソリンエンジンだけでこのカテゴリーで戦うには無理がある。3シリーズはガソリン車に、クリーンディーゼル車、ハイブリッド車を用意していた。Cクラスは、2015年秋からクリーンディーゼルやPHVの投入が予定されている。他社は、多くの選択肢を顧客に与えているのだ。

パサートも2016年にはクリーンディーゼルとPHVを導入するというが、後出しで他社のラインアップに負けているのでは非常に厳しい戦いを強いられる可能性が高い。すでに、ボルボやジャガーもクリーンディーゼル車を導入。販売台数の多いフォルクスワーゲンのみが、こうしたクリーンディーゼル車の導入が遅れているのだ。

フォルクスワーゲンは、メインのゴルフにも未だクリーンディーゼル車の投入ができていない。ゴルフもパサートも、すでに、ドイツ本国では発売されているだけに、フォルクスワーゲン本国は、色々な事情があるにせよ日本マーケットを軽視している感がある。

新型パサートのボディサイズは、全長4,785×全幅1,830×全高1,465㎜。全幅が1,830mmなので、都市部に多い立体駐車場の制限1,800㎜をオーバーしている。そのため、こうした駐車場を使う顧客は物理的にパサートを購入することはできない。BMW3シリーズは、わざわざ日本専用部品を用意し、全幅を1,800㎜にしているくらいだ。

積載量ではライバルに圧勝!


フォルクスワーゲンパサートそんな新型パサートだが、荷物などの積載性と言う実用面では、ライバルを圧倒する。セダンのトランク容量は586L。ヴァリアントは650Lだ。Cクラスステーションワゴンが470L、3シリーズツーリングが495Lとなっている。もはや、パサートセダンの方が、Cクラスステーションワゴンや3シリーズツーリングよりも荷室が広いという状況だ。この実用性の高さは、ひとクラス上のメルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴンと同等。Eクラスワゴンの荷室は655Lなので、パサートヴァリアントの荷室容量とほぼ同等だ。この差は歴然で、荷物を多く積むことが多い人は新型パサートが便利ということになる。

新型パサートの安全装備


新型パサートの安全装備の設定は、高く評価できる。9つのエアバッグを装備し、衝突事故時に、すぐに自動ブレーキをかけ衝撃の反動に伴う2次衝突の危険を低減するポストコリジョンブレーキシステム、歩行者認識機能も備えたプリクラッシュブレーキシステム“Front Assist”なども装備されている。こうした機能が、すべてのグレードに標準装備されているところがポイントで、どのグレードを買っても同じ高い安全性能としたのは、日本のフォルクスワーゲンの高い安全思想によるものだ。

こうした安全装備の他に、利便性を高める機能で、再発進の機能まで備えた最新世代のアダプティブクルーズコントロール“ACC”も装備した。

新型パサートの選び方


新型パサートのグレード選び。グレード体系は、トレンドライン、コンフォートライン、ハイライン、Rラインの4タイプ。グレードの差は、主に快適装備・便利装備によるもの。シンプルに乗るならトレンドライン(329万円)でも十分な装備といった印象。高級車ということで、贅沢な装備を求めるのならコンフォートラインかハイラインと言う選択になる。ただし、最上級グレードのハイライン(414万円)でも、LEDヘッドライトはオプション。パサートの精悍な顔立ちとなる重要な雰囲気を醸し出すアイテムなので、LEDヘッドライトはぜひとも選択したいオプションだ。

おすすめのグレードはRライン

おすすめグレードは、スポーティな設定のRライン(4,609,800円)だ。このクラスのライバル達の売れ筋グレードもこうしたエアロパーツなどを装着したAMGパッケージやMスポーツ。日本マーケットは、スポーティグレードが好きなのだ。Rラインには、エアロパーツや18インチタイヤなどを標準装備。価格は少々高価だが、Rラインは装備やスタイルとも十分満足いくものとなっているので人気グレードになる可能性が高い。

心配なのは、新型パサートのリセールバリュー。従来のパサートは、良いクルマなのだが、人気モデルとはいえず中古車マーケットでも人気が無いため、リセールバリューが悪かった。そのため、新車での購入では短期の乗り換えには向かないクルマだった。新型のリセールバリューがどうなるかは不明だが、リスクを回避するのなら乗り潰すつもりで購入するといいだろう。

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新型パサート 価格


パサートの価格は以下の通り。

パサート

・TSI Trendline 3,290,000円
・TSI Comfortline 3,590,000円
・TSI Highline 4,140,000円
・TSI R-Line 4,609,800円

パサートヴァリアント

・TSI Trendline 3,489,900円
・TSI Comfortline 3,789,900円
・TSI Highline 4,339,900円
・TSI R-Line 4,809,700円

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴル

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