<右側スライドドアを得て、ライバルを圧倒する使い勝手を実現>
ダイハツタント タント

ダイハツのタントがフルモデルチェンジし3代目となった。タントはスーパーハイト系と呼ばれ、上方へのスペースを多くとった背の高い軽自動車だ。

フルモデルチェンジしたタントの最大の特徴は、右後方ドアがスライドドアとなったことだ。2代目タントは、通常のヒンジドアだったため、当時ライバルであり両側スライドドアをもつスズキ パレットや、ホンダN BOXなどと比べると、使い勝手の面では今ひとつだった。

それでもタントが当時善戦したのは、左側ドアがミラクルオープンドアだったからだ。通常あるはずのセンターピラーが無く、助手席側のドアは90度近くまで開き、後席側はスライドドアとなる。そのため、ドアの開口部分はとにかく広大。チャイルドシートの子供を乗り降りさせるときなど、非常に便利だったり、シルバー層の乗り降りにも便利ということもあり、絶大な人気を誇るユニークな存在だった。

ダイハツタント ミラクルオープンドア

弱点だった右側ドアがスライドドアになったことや、伝統のミラクルオープンドアを継承したことで、使い勝手の面ではライバルを凌駕したことになる。さらに、よりスペースと使い勝手にはこだわった。助手席のスライド幅を従来比10㎝拡張し、38㎝のロングスライド化を実現。後席下部の出っ張り部分をなくし、広大なフラットスペースを確保した。これにより、A型ベビーカーをたたまず、収納でき、大型ダンボール箱やビールケースなども積載可能。大きな荷物もミラクルオープンドアと助手席ロングスライドによる広大な間口からラクな姿勢で積載が可能になった。
また、軽自動車初「助手席シートバックレバー」を採用し、楽に助手席の操作ができるようになった。高齢者や子供にもうれしい機能。高齢者が体をかがめる必要なく、乗り降りすることをアシストする助手席乗降グリップを設置。強い日差しを遮り、後席乗員のまぶしさを軽減する格納式リヤドアサンシェードも採用された。
<燃費はスペーシアに劣るが、カスタムでは勝るという微妙な展開に>
軽自動車は現在、凄まじい燃費戦争に突入中だ。現在このクラスでトップの燃費は、スズキ スペーシアの29.0㎞/L。タントの燃費は28.0㎞/Lとなり、残念ながらスペーシアを上回ることはできなかった。燃費戦争に勝てなかったひとつの理由が、使い勝手をアップするミラクルオープンドアだ。ピラーが無いため、補強する箇所が増え車重が重くなるのが主な理由だ。
しかし、ダイハツはそのデメリットを克服するために、ボンネット、フェンダー、バックドアなどを樹脂製に変更し、約10㎏の軽量化を実現。さらに、骨格部分を見直し補強部品の削減や高張力鋼板の適正配置などにより、約60㎏の軽量化を施した。今回ダイハツは、軽量化できた分を燃費にまわすのではなく、走りの質向上に充てた。車重アップの要因となる防音・吸音材の追加し、静粛性を大幅に向上させている。これは、コンパクトカーなど登録車からタントへダウンサイジングしている顧客が多いため、コンパクトカークラスの静粛性を得るためだ。

ダイハツタント タント カスタム

この燃費戦争は、一見スズキに軍配が上がったように見えるがそうでもない。タントは、従来通り、よりアグレッシブでスポーティな外観のカスタムを用意している。このカスタム同士の燃費となると、タントカスタムが28.0㎞/Lに対して、スペーシアカスタムが27.8㎞/Lと、タント カスタムが勝つという結果になっている。ターボ車に関しては、両車とも26.0㎞/Lだ。スペーシアカスタムは、若干、車重が重くなったことで燃費が悪くなっている。こうなると、どちらのクルマの燃費もさほど変わらないということなのだろう。

最近のダイハツは、ムーヴ以来走行性能の向上についても積極的だ。タントは背が高いため、重心が高くなり操縦安定性は物理的に良いとはいえない。そのため、ふらつきを軽減させるフロントスタビライザーのグレード拡大など、安定した車両姿勢の維持を実現。乗り心地の向上やフロント13インチベンチレーテッドディスクブレーキなど走りの質もアップしている。

テレビCMでお馴染みの追突被害軽減自動ブレーキなどの装備であるスマートアシストも当然用意されている。「低速域衝突回避支援ブレーキ機能」「誤発進抑制制御機能」「先行車発信お知らせ機能」車両の横滑りなどを防止する「VSC&TRC」の4つの機能を備えた「スマートアシスト」を全グレードに設定している。総じて背の高いスーパーハイト系は、重心が高く横転の可能性は高い。そのため、横滑り防止装置(VSC)は標準化にすべきである。スマートアシストは、その機能を兼ねるので、安価なこともあるから絶対に装着したほうがよい。また、ダイハツはスズキとの差別化のためにも、スマートアシストの標準装備化を進めるべきだろう。また、スズキやホンダに合わせ、急ブレーキを後続車に知らせるエマージェンシーストップシグナルも新たに設定されている。

ナビ・オーディオ関連では、スマートフォン連携ナビが採用され、スマートフォン感覚の操作に対応し、使いやすさを向上したというがタッチパネルは使いやすくはない。タッチパネルが流行しているが、車内でのタッチパネルは安全性や操作性でもおすすめできない。走行中揺れている車内では、タッチパネルでは確実に触りたい場所が触れない。さらに、姿勢変化や視点変化が大きく安全性が高いとも言えないからだ。エアコン関連のスイッチは、そういったことを考慮してダイヤル式としているのだから、ナビ関連も、もうひと工夫欲しいポイントでもある。

新型ダイハツ タントは、決して安い価格帯のクルマではない。そのため、ファーストカーとして使う顧客も多い。その上、メインは子育て層。そんなこともあり、そういった顧客向けに、なんと10.2型天井吊り下げ式後席モニターまで用意した。このサイズは、もはやちょっとした高級ミニバン的な装備といえる。

ダイハツタント タント カスタム インパネ

タントのデザインは、従来通り通常モデルとカスタムの2通り用意されている。通常のタントは、親しみやすいデザインを継承。バックドアレリーフとLEDリヤコンビランプをリンクしワイド感を表現している。サイドビューは、メリハリのある凹凸で丸みのあるドア断面で柔らかな雰囲気にまとめられている。インテリアの上面は、フラットになり広がり感を強調。数々の収納スペースが用意されている。ベージュのインテリアカラーは、暖かみもあり明るく広々感も強調され好感度は高い。

カスタムは、押し出し感の強いアクのあるフェイスをもつ。LEDヘッドランプ&クリアランスランプで、ギラギラ感を強調。エアロパーツ類でスポーティ&ワイルドな雰囲気でまとめられている。ライバルのスペーシアカスタムが、通常モデルとの差を意外と控えめに抑えたのに対して、タントカスタムは大きな差をつけ差別化している。どちらが正解かは分からないが、スズキとダイハツの考えの差が出ている箇所でもある。

インテリアはブラックを基調に、シルバーの加飾をいれハイコントラストでクールな空間を演出。大型の3連メーターもタントとは大きく違うポイントのひとつだ。

<値下げしたタントはの志は高い!>
フルモデルチェンジの毎に、高価になっていく傾向があるスーパーハイト系軽自動車。ダイハツはなんと、大幅なコスト削減にチャレンジし、儲けるだけでなく価格にも反映させ値下げを敢行した。顧客目線では、高く評価できる。もちろん、エントリーグレードの価格引き下げは、営業的にライバル車より安く見せる広告が打てることから、来店誘導につながるという戦略もある。ただ、新型タントの場合、エントリーグレードでシンプル装備ながらスマートアシストを装備でき、十分に乗れるグレードなのでダイハツのチャレンジには賛同できる。新型タントでは、エントリーグレードのLグレードで5万円引き下げ117万円。新型タントカスタムのXグレードで8万円引き下げの147万円となっている。

ダイハツタント タント シート

通常モデルのタントの選び方だが、タントはXグレード以上がおすすめ。スマートアシストは必須装備なので、X SAがベスト。その上のGグレードとの大きな違いは、右側パワースライドドアやアルミホイール、ドアミラーターンランプくらい。右側パワースライドドアが欲しければ、42,000円のオプションで選べばよい。

カスタムは、基本2グレードしかないので、エンジンをターボにするのか自然吸気にするのかという選択のみだ。X SAが152万円に対してRS SAが163万円なので、価格差は11万円となる。ファーストカーとして使ったり、長距離移動・高速道路をよく使うなどで、予算に余裕があるならターボのRS SAがおすすめだ。パワーは圧倒的に違うので余裕のある走りが楽しめる。さらに、燃費も26.0㎞/Lと自然吸気エンジンの28.0㎞/Lと大きく違わない。ただ、この価格になってくると、ホンダ フィットなどのコンパクトカーが十分に買える価格帯になる。どうしても軽自動車ということでないのなら、コンパクトカーも検討に入れるといいだろう。

スペーシアとN BOXのスーパーハイト系に、新たにタントが加わり比較的新しいモデルの三つ巴の戦いが始まる。実際に購入する人は、シッカリとこの3台を競合させて値引き額をアップさせたい。もし、時間に余裕があれば、慌てて買わずに年明け早々デビュー予定の日産デイズ ルークスや三菱eKスペースが投入されるのを待つのもいい。ライバルが多ければ多いほど競合させれば大幅値引きも可能になるはずだ。

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■ダイハツ タント価格
・L 2WD 1,170,000円 4WD 1,291,000円
・L“SA”2WD 1,220,000円 4WD 1,341,000円
・X 2WD 1,300,000円 4WD 1,421,000円
・X“SA”2WD 1,350,000円 4WD 1,471,000円
・G 2WD 1,410,000円 4WD 1,531,000円
・G“SA” 2WD 1,460,000 4WD 1,581,000円

■ダイハツ タントカスタム価格
・Xカスタム 2WD 1,470,000 4WD 1,591,000円
・カスタム X“SA”2WD 1,520,000円 4WD 1,641,000円
・カスタム RS 2WD 1,580,000円 4WD 1,701,000円
・カスタム RS“SA”2WD 1,630,000円 4WD 1,751,000円

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