スズキワゴンR
<デビューから1年未満で、さらに進化した理由とは?>
スズキワゴンRスズキは、主力軽自動車であるスズキ ワゴンRを一部改良した。2012年9月にフルモデルチェンジしたばかりの新型車なのに、デビューから1年未満での大改良は異例だ。この異例の事態になっているのが、過熱する燃費&安全装備戦争だ。2012年9月にワゴンRがフルモデルチェンジし、28.8㎞/Lという燃費を達成しクラスナンバー1燃費となった。しかし、2012年12月にダイハツ ムーヴが29.0㎞/L、2013年6月に三菱eKワゴンと日産デイズが29.2㎞/Lと0.2㎞/L毎に、急速に低燃費化が激化。
さらに、ムーヴは他の軽自動車をイッキに引き離す高い安全技術であるスマートアシストをわずか5万円というオプション設定。スマートアシストは、低速域での追突軽減自動ブレーキや、アクセルとブレーキの踏み間違え防止する誤発進抑制機能、クルマのスピンや横転を抑制する横滑り防止装置など、一部の高級車並の安全装備が選べるようになった。
スズキは、元々安全装備に関しては腰が引けていたが、ライバルであるムーヴ、そして2013年度中には発売されるホンダの新型軽自動車に遅れをとることは許されない状況まで追い込まれていた。このままではジリ貧であることは明確になった以上、急ピッチに開発を進め、追突軽減自動ブレーキの採用や低燃費化を短期間にイッキに進めたのだ。
その結果、今回の大幅改良により、燃費は30.0㎞/Lとライバルをイッキに0.8㎞/L上回り、追突軽減自動ブレーキであるレーダーブレーキサポートをダイハツのオプション価格を8千円下回る42,000円という低価格で装着できるようになったのだ。
<低燃費化技術は、スペーシアの技術を流用>
低燃費化の技術は、基本的にすでに発売されているスペーシアのものを使っている。従来のR06A型エンジンのタイミングチェーンを細幅化。軽量化と同時に、フリクション(摩擦抵抗)を低減。さらに、従来のラジエーターより約30%薄型にした(16.0mm→11.5mm)。ワイドなギヤレシをもつ副変速機付きCVTは、よりエンジン効率の良い回転域での走行を可能とし、ディファレンシャルケースを軽量化した。また、CVTのボールベアリング化によりフリクションの低減も図られた。
ボディ関連では、エンジンアンダーカバーを追加し、空気抵抗を軽減。最低地上高は、5mmほど下がり150mmとなっている。
スペーシアは、スーパーハイト系ということもあり、ワゴンRよりボディが重いため29.0㎞/Lとなっている。そのため、スペーシアのデビュー当初から、このエンジン関係の技術がワゴンRに搭載されることは予想できたが、まさか、スペーシアのデビューから5ヶ月弱でワゴンRに搭載するというスピードは、まさにスズキの意地なのだろう。

ただし、この30.0㎞/Lというクラスナンバー1低燃費も、恐らく今年限りになると言われている。秋から冬に登場すると言われているホンダNシリーズの第4弾モデルが登場するからだ。ホンダの関係者によると、最後発モデルなのに燃費で負けるモデルを出すなんて、ホンダとして許される訳がない。と、クラスナンバー1低燃費奪取は当然と答えているからだ。
<レーダーブレーキサポートで安全装備がイッキに進化しイチオシの軽自動車に>

スズキワゴンR レーザーレーダー装置

ライバルであるムーヴが、暗に「燃費だけじゃない」とワゴンRを示したキャッチフレーズをCMで使っていたが、ワゴンRは同等以上の安全装備をよりリーズナブルに提供できるようになった。新開発のレーダーブレーキサポート(RBS 追突被害軽減ブレーキ)が装備され、約5~30㎞/hの低速走行中に、フロントガラス中央上部に設置されたレーザーレダーが前方の車両を検知。衝突回避ができないと判断した場合、自動ブレーキが作動し追突を回避、または軽減する。

ワゴンRとムーヴの違いは、レーザーレダーの設置場所。ムーヴは、フロントグリル内に設置されているため、雨滴などが付きレーザーレダーに影響を与える可能性がある場合、機能が停止するが、ワゴンRのレーザーレダーは室内にあるため、そういった影響を受けないのが特徴。ただし、雨などの影響が無ければ、水平に近い角度でレーザーが向けれれているムーヴの方がより遠くまで監視している。

こういった自動ブレーキに欠かせないのが、基本機能であるESP(横滑り防止装置)。スズキは、安全装備より価格優先の姿勢を貫いてきたが、ムーヴのスマートアシストの売れ行きが好調のため、重い腰がようやく上がった。ESPは新型車が2014年10月から、法律で装備を義務付けられた機能。滑りやすい路面や、緊急回避などのときに4輪のブレーキを個別に制御し、エンジンの出力もコントロール。車両がスピンしたり、横転しないようにしてくれる機能。

さらに、レーザーレダーの機能を生かした誤発進抑制制御も装備。停車中、約10㎞/h以下での走行時、前方4m以内の障害物をレーザーレダーが感知した場合、急発進を自動で抑制する機能だ。ベダルの踏み間違えや、シフトミスによる事故防止に効果的な機能。軽自動車の場合、免許取りたてや高齢者といったミスをしやすいドライバーが多く乗ることもあり、事故防止に役立つ。

ワゴンRは、非常にパフォーマンスの高い軽自動車なのだが、安全装備の基本となるESPがオプションでも選べないなどといった状況のため、あまりオススメはできないモデルであった。しかし、ここまで進化すると、こういった安全装備をオプションで選択することが前提なら、今イッキにイチオシの軽自動車になる。

また、軽自動車は価格重視という自らの呪縛もあり、レーダーブレーキサポートなどのセットオプション価格が、なんと42,000円! 。ダイハツのスマートアシストよりも、8,000円安い設定となっているのは、まさに価格にこだわるスズキの真骨頂。顧客に対して、大きなメリットが提示できている。

<今、軽自動車を買うなら、ホンダの新型を待ってから?>
ワゴンRの購入は、ワゴンR FXリミテッドの1,249,500円がベストの選択で、レザーブレーキサポートを装着するとスズキワゴンR1,291,500円となる。売れ筋グレードのFXリミテッドで130万円は切りたいというスズキの想いが伝わってくる。それは、ダイハツのムーヴX SAが125万円という価格設定になっていて、なんとか同じ120万円台でいる必要性があるからだ。
実質的には、ムーヴと5万円の価格差があるが、クルマのパフォーマンスを考えると無いに等しい。それは、よりワイドな変速比を可能としている副変速機付きCVTや、エネチャージやエコクールなどの技術が、実燃費にかなり影響するからだ。ただし、ムーヴの静粛性や乗り心地もワゴンR以上のものがあるので、実際に購入する際は試乗してみることと、細かい装備を比べることが重要になってくる。
急いで購入する必要がない人は、2013年度中には登場すると言われているホンダの新型Nシリーズが出るのを待って比べるといい。商談の際も、スズキVSダイハツより、ホンダを加えたほうが値引き金額も大きくなるのは確実だろう。
■ワゴンR価格
FX 2WD 5MT 1,099,350円
4WD 5MT 1,216,950円
2WD CVT 1,109,850円
4WD CVT 1,227,450円
FXリミテッド 2WD CVT 1,249,500円
4WD CVT 1,367,100円
特別仕様車20周年記念車 2WD CVT 1,344,000円
4WD CVT 1,458,450円

■ワゴンRスティングレー

X 2WD CVT 1,344,000円
4WD CVT 1,461,600円
T 2WD CVT 1,496,250円
4WD CVT 1,613,850円