(株)ガリバーインターナショナル ネット通販チームのリーダー、松下 誠さん

電話だけでクルマが買えるのだろうか?

Gulliver(ガリバーインターナショナル)ホームページ「221616.com」 ネット割 ページ

 自動車メーカー、ホンダの創業者である本田 宗一郎氏が、その昔、マーケティングについて問われたことがあったという。要約すると「需要があるから造るというのはメーカーではない。メーカーはあくまで需要を生み出す製品を作るものだ。だから、未知なものに挑んでいる。そんな未知な製品をお客様に聞いたって答えなんて出るわけがない」という。もちろん、マーケティングを否定するわけではなく、メーカーとしての気概を示したのだろう。
 さて、今回取材した(株)ガリバーインターナショナルが行っている「ネット割」というインターネット通販サービスの取材を終えたあとに、冒頭の本田 宗一郎氏の想いがオーバーラップした。ご存知通り、ガリバーは中古車の販売&買取りを行うサービス業であり、メーカーではない。しかし、サービス業においてサービスは商品なのだ。
 ガリバーの「ネット割」という通販サービスは、インターネットで中古車の画像を見て電話で買う。登録書類のやり取りやクルマの整備や支払いが終わると、ようやく近隣のガリバー店舗で納車されるというものだ。クルマは高額商品だ。それも中古車という同じクルマでもコンディションが違うモノを画像だけで、さらに電話商談で買えるものなのだろう? 考えれば考えるほど、ネガティブな要素がいっぱいなサービスとも思えるのだが・・・。

インターネットの通販はもう当たり前・・・ならばクルマでも。

(株)ガリバーインターナショナル ネット通販チームのリーダー、松下 誠さん

 ところが、そんな「ネット割」でクルマが売れているのだ。それも、月間数百台ペースで売れに売れている。このネット割というサービスは、本田宗一郎氏が絶賛するかもしれないほど、新たな需要を生み出した。中古車は現車を見て買うものというのが、世の中の主流だった。しかし、「インターネット画像と電話で中古車を売る」そんな非常識に思えたことは、常識へと変化した。
「去年からスマートカーライフ創造企業というビジョンで活動しています。お客様のニーズに合わせて、クルマの新しい買い方や売り方というサービスを提案しています」と、語るのはネット通販チームのリーダー、松下 誠さんだ。ネット画像と電話でクルマを買うということに、お客様は不安を抱いていないのだろうか?
「不安は多少あると思いますよ。クルマは高価ですからね。ただ、もうインターネット通販なんていうのは世の中では当たり前です。金額が大きい小さいはあるでしょうが、ハードルは確実に低くなってきています。金額が大きい商品を買うことへの不安を解消するのが我々の仕事ですし、ガリバーの持っているブランド力も安心感につながっています」

全国の店舗ネットワークを最大限活用

「ネット割」の商談を行うガリバーのSP(スマートカーライフプランナー)たち

 ネット通販へのハードルが下がったとはいえ、中古車はそれぞれコンディションが違うもの。そんな顧客の不安さえも無くしてしまう特別なトークはあるのだろうか?
「特別なものなんてありません。車両状態の詳細を記載したPDFを用意して細かく説明するなど、お客様の期待に応えられるように誠実に対応していくだけです。ただ、店舗で対面営業をしているときよりも、お客様の言葉の端々やニュアンス、トーンなどに敏感になりましたね。お客様の顔が見えない分、そんな言葉の節々にも気を配りながら、我々に何を望んでいるのか? 不安に思っていることは何なのか? などを真剣に考えながらお客様と電話しています」
 クルマの購入は、顧客自らディーラーに出向き、クルマを確認して営業マンと商談。未だにクルマは、そんな対面販売だけで売るもの。多くの自動車メーカーの幹部は、口を揃えてそう語る。しかし、現実の販売現場では、クルマの購入はネットと電話で十分と思っているマーケットが確実に成長しているのだ。
「クルマのネット通販というマーケットは、今後ドンドンと伸びていくと思います。すでに、ネット通販でご購入いただいたお客様から信頼を得て、新規のお客様をご紹介いただくなど広がりをみせています。もう、クルマの購入は現車を確認して・・・、なんていう時代じゃないのかもしれませんね。もちろん、リアル店舗を多数もつガリバーだから安心、ということもあります」

クルマの買い方は、確実に進化を遂げている

(株)ガリバーインターナショナル ネット通販チームのリーダー、松下 誠さん

 さて、ネット通販を選ぶ顧客はどんなタイプが多いのだろうか?
「色々なメディアを見て、最後に弊社にお越しいただくお客様が多いので、価格に対してはシビアです。価格にシビアなのですが、売れるクルマは高価格帯のクルマが多いんですよ。最初はビックリしましたが、1千万円以上のレクサスLSやポルシェなどの高級車も売れます。逆に軽自動車や価格帯が低いクルマは、逆に売れないという傾向にありますね」
 現在、顧客の年齢層は、30〜40歳代と比較的若い世代が中心だという。若い顧客にとって大切なのは、自分にとってのベネフィットがあれば業界の非常識など関係ないのだろう。それは、今までクルマ業界の常識と捉えていた現車を見せて売るという概念のアンチテーゼといえるネット通販でクルマが売れていることからも分かる。非常識を常識にする未知への挑戦が新しいサービスを創り出した。
 クルマの売り方や買い方は、今、確実に変わりはじめている。

written by 大岡 智彦

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