SIM-Drive(シムドライブ)清水社長

あなたが電気自動車会社を作ったら、世界中の自動車メーカーが敵になる!!

エリーカに乗る清水社長と御堀氏

 SIM-Driveの清水浩社長に面談した。
 清水社長は、慶応大学の教授でもある。
 そして、シムドライブ(SIM-Drive)は、産学協同参画によるベンチャー企業だ。
 清水社長は、慶応大学で開発したエリーカ(Eliica)の開発者として知られるが、電気自動車との関わりは30年に及び、この間8台の電気自動車を製作してきた。
 その第一号は、自分の乗っていたガソリンエンジン車を自ら改造し、今日のインホイールモーター構想につながるダイレクトドライブ方式を実験したものだった。
 これまでの経験を踏まえ、「最初は自分がメーカーになることを考え、資金調達など奔走した」と、清水社長は語る。
 そこに、シムドライブの会長となるベネッセコーポレーション会長兼CEOの福武總一郎氏との出会いが生まれた。
「エリーカに乗せて欲しいとの連絡があり、試乗をしてすぐ、『これはうまくいく、手伝ってあげよう』ということになったのです」
 シムドライブは、電気自動車メーカーではない。
「電気自動車(EV)を、一日も早く普及させるための会社」だと、清水社長は話す。そのためには『物づくりをしてはいけない』というのが、福武会長の助言だった。
「私に電気自動車開発の経験はあっても、商品を作ったことがないからです。また、福武会長は『あなたが自動車会社を作ったら、世界の他のあらゆる自動車メーカーの敵になる。しかしこの会社の形態なら、世界のあらゆる自動車メーカーが味方になる可能性があるのだから、電気自動車(EV)の普及を考えるならこの方がいい』と、言われたのです」

エリーカ画像
8輪で走るエリーカ。最高速度は370km/hに達する。
エリーカ画像
モーターは1輪当り100馬力。8輪なので合計800馬力!!
エリーカ画像
インテリアは高級車のような高いクオリティを持つ。低くフラットなフロアが特徴。

*写真は慶應義塾大学 電気自動車研究室サイトより

先行車開発が事業の第一歩!

 事業の第一歩は、「先行車開発にある」と清水社長は言う。そのための会員を集める。会員とは、電気自動車(EV)に関心のある自動車メーカーはもちろん、部品メーカー、材料メーカー、販売会社、商社など、どのような企業・団体でもかまわない。実際、すでに自治体から地域興しの一環として参加要望が来ているとのことだ。
 会員相互の意見交換により、どのような電気自動車(EV)がよいか、車両概要の構想から、設計〜試作〜評価を行う。
 その段階を経て、量産化へ移る。量産メーカーは、SIM-Driveで検証されたあらゆる経験と情報を自由に活用することができる。そして量産車が市販されたあかつきに、SIM-Driveはそこからロイヤルティを手に入れる。また、量産化の過程での支援も行い、その経費を受け取る。
 このようなビジネスモデルとすることにより、自らはメーカーにはならず、蓄積された経験や情報を開示することでEVの普及を促進することが、SIM-Driveの主旨である。
「古い技術が新しい技術に変わると、ビジネスサイズが大きくなります。たとえばレコードがCDになることで、市場は3倍に拡大しました。カメラが、デジタルになることで市場は3倍になっています。技術が使いやすくなり、安くなると、市場が拡大するのです。クルマも電気に変わることで、市場の拡大につながる。日本がこの分野でリードすれば、必ずそのリターンが日本にもたらされます」

流通視点は、お客様目線。ガリバーが電気自動車業界に参入した存在意義は大きい!

 清水社長は、シムドライブ(SIM-Drive)を構成する役員の顔ぶれが意味を持つとも話す。
「福武さんとほぼ同じ時期に、ガリバーインターナショナル会長の羽鳥さんがEliicaの試乗に来られ『将来のクルマはこうなる』とおっしゃった。またナノオプトロニクス・エナジー社長の藤原さんも試乗して『将来はこうなっていくだろう』とおっしゃり、お二人とも即断で、シムドライブ(SIM-Drive)の趣旨に賛同してくださった。福武さん、羽鳥さん、藤原さんのいずれもメーカーの人でないことから、私の経験してきた物作りと、ビジネスの両面から、EV普及を考えるフォーメーションになったのが面白い。このお三方に感謝しています」
 �ガリバーインターナショナルは、このwebサイト「コリズム」の運営会社だ。ガリバーインターナショナルは、羽鳥兼市会長が中古車ビジネスとして創業したのを最初に、その後、展示場を持たずに買い取ったクルマをオークションで売却する現行のビジネスモデルを生み出し、さらにインターネット普及前から通信衛星を活用した画像クルマ販売システムを運営、さらにはコリズムというwebサイトを立ち上げるなど、常に新しい事業の開拓を進めてきている。メーカーではなく、流通の立場からクルマと関わりを深めてきたガリバーが、次に注目したのが電気自動車ということになる。シムドライブ(SIM-Drive)が、メーカーを目指すのではなく電気自動車の普及を目指す会社であるところに、流通の視点を活かしたガリバーの存在意義も高まるのではないか。
 政権交代により民主党政権が動き出した。民主党がマニフェストで掲げたCO2排出量削減について、清水社長は「排出権取引ではなく、電気自動車(EV)の普及という方向であれば、お金を使うだけでなくリターンがあり、世界に貢献できます。こうした方法が採り上げてもらえるようになればいいと思います」と話す。
そして最後に、「みんなが電気自動車(EV)で食えるようにならなければいけないし、そうしたいなと思います」と、清水社長は言葉を結んだ。

( インタビュー:御堀 直嗣[みほりなおつぐ:モータージャーナリスト] )

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