ザ・対決 ホンダ オデッセイ VS トヨタ マークXジオ
ロールーフミニバン編
ホンダ オデッセイ vs トヨタ マークXジオ

 数あるミニバンのなかでも、走りに振ったモデルというのは、各メーカーともラインナップしている。使い勝手も多くの立体駐車場に入る1545mmの全高など、日常的な扱いにも優れている。ただし、パッケージングとの兼ね合いもあり、モデル数は限られている。そのなかでも人気を博しているのがホンダのオデッセイで、4代目へと進化したばかり。自慢の低床&低重心でミニバンらしからぬ走りを実現。またトヨタを代表するのがマークXジオで、こちらは1/2列目に重きを置いて、サルーンテイストを演出しているのが特徴だ。3列目はラゲッジとの使い分けとして割り切っており、その分、大人4人がゆったりとドライブできる空間を作り出す。こちらも全高は低く、立体駐車場に入る。ドライバーズミニバンとひと言でいっても、オデッセイはスポーティで、マークXはサルーンテイストと、その味付けは異なるだけに、対決内容に興味津々だ。

竹沢友美
PHOTO/森山良雄 構成・文/近藤暁史
モデル/ 竹沢友美

ROUND1:ファーストインプレッション

ホンダ オデッセイ
ホンダ オデッセイ リヤ
パワーアップだけでなく、
エコ&安全性が大幅に向上

 日本のミニバンに衝撃を与えたホンダのオデッセイも、今や4代目。そのコンセプトにはブレはなく、4代目ではさらに昇華した。シャーシはもちろんホンダ自慢の低床化&低重心で、スポーティな走りを身上としたドライバーズミニバンであり、立体駐車場にも入るというオデッセイならではの個性をしっかりとキープし続けている。
 エンジンは2.4リッターのみで、標準グレードに加えてスポーティグレードの「アブソルート」も用意されているのも従来と変わらない。肝心の出力は、173馬力/206馬力と大きくアップしたとはいえないが、このクラスで200馬力オーバーというのは相変わらず立派。ミッションは標準車&FFがCVTで、アブソルート&4WDには5速ATが組み合わされ、アブソルートに関してはパドルシフトも付く。注目すべきはその乗り味で、とくにアブソルートは先代の硬めからソフトで懐の深いセッティングへと変更されており、乗り心地とともにレベルは確実に上がっている。
 パッケージングに関しては、室内長が60mm拡大になっている以外は、ほぼ変らないのだが、特殊製法による細いAピラーやシートをリヤに向かってV字に配列するなどして、さらに余裕をもたせている。またリヤドアの開口部を拡大することで、問題とされていた3列目の乗降性は向上した。
 デザインは大きく変わったところはなく、グリルまわりにメッキパーツをさらに盛り込み、ホンダ顔を強調している程度。内容で勝負の正常進化なのだが、新鮮さという点では物足りない。

[エコ&燃費]
 大幅なパワーアップよりもエコ性能を重視したというだけに、全グレードで4つ星を獲得し、13.2km/Lを達成。アブソルートでも11.4km/Lというのは立派だ。またCVTにはエアコンまでを協調制御するECOモードが付き、違和感なく実用燃費で3〜10%アップする実用装備である。

[安全性能]
 一部のグレードを除き、2列目中央席の3点式シートベルトやヘッドレストが装備されていないなど、マークXジオに比べ基本的な安全装備に大きく遅れをとっている。MVCS(マルチビュー・カメラ・システム)は大きな目玉だ。魚眼カメラを前後左右に計4つ設置して、その映像をナビ画面に表示。車両周辺の情報を多角的に把握&分析することで、駐車支援に加えて死角を最大限に排除する。

[取材時実測燃費]
11.2km/L

[ホンダ オデッセイ価格帯]
259.0〜361.0万円

トヨタ マークXジオ
トヨタ マークXジオ リヤ
マークXブランドならではの
高級車感をうまくプラスする

 東京モーターショーのコンセプトカー「FSC」をマークXブランドで仕立てたのがマークXジオ。塊感のあるスタイルと、マークX同様のプレミアムイメージをうまく表現し、高級車然とした佇まいも見せる。オデッセイ同様、ドライバーズミニバンを標榜するだけに、車高は1550mmと、こちらもタワーパーキングに入るサイズで、日常的な使い勝手も上々だ。パッケージングに関してもユニークで、「4+Free」というコンセプトはマークXファミリーならでは。これは1/2列目を中心にして大人4人がゆったりと座れるように、余裕をもって作り、3列目に関してはラゲッジとの使い分けを前提としてあくまでも非常用と割り切っている点に注目だ。それだけに、1/2列目の造りは特筆すべき点が多く、シート自体の座り心地やサイズはゆったりとしているのはもちろんのこと、各スペースも余裕十分。たとえば前後シート間のクリアランスはクラウンをも上回るスペックを実現している。とくに2列目がキャプテンシートとなるG(他グレードはベンチシート)では、まさにサルーン的な乗り味を楽しむことができるだろう。エンジンについては2.4リッター直4と3.5リッターV6が設定され、ミッションに関してはV6が6速ATで、直4に関しては、経済性も重視したCVTが組み合わされる。そしてサスペンションもマークX同様にリヤにダブルウイッシュボーンを採用するなど、しなやかな乗り味を実現しているのだが、V6に関しては、専用チューニングを施してスポーティさをプラスしている。

[エコ&燃費]
 全グレードで4つ星を獲得。燃費に関しては、デュアルVVT-iや6速ATなどを採用することで、燃費基準も2.4リッターのFFで+20%を獲得する。そのほか、生産から廃棄までトータルで環境に配慮するEco-VASも導入している。

[安全性能]
 安全装備の標準装備化はトップレベル。どのグレードを選択しても高いレベルの安全性能を享受できる。全グレードで、横滑りやスリップを防止するS-VSCが標準装備されているのはとくに注目だろう。またレーダークルーズやミリ波レーダーなどが選択可能だ。また全席分の3点式シートベルトも標準で用意される。


[取材時実測燃費]
10.9km/L

[トヨタ マークXジオ価格帯]
256.0〜333.0万円

ホンダ オデッセイ L(FF)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4800×1800×1545mm
車両重量
1620kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC
総排気量
2354cc
最高出力
173ps(127kw)/6000rpm
最大トルク
22.6kg-m(222N・m)/4300rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
13.2km/l
サスペンション(前/後)
ダブルウィッシュボーン/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
291.0万円
トヨタ マークXジオ 240G(FF/6人乗り)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4695×1785×1550mm
車両重量
1570kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC
総排気量
2362cc
最高出力
163ps(120kw)/6000rpm
最大トルク
22.6kg-m(222N・m)/4000rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
12.8km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
286.0万円
ホンダ オデッセイ 2.4リッターエンジン

ホンダ オデッセイに搭載されるエンジンは2.4リッター直4のみ。アブソルートは通常モデル(写真)とセッティングが異なり、206馬力を発生。

ホンダ オデッセイ 16インチホイール

標準車(写真)は16インチのタイヤ&ホイールを装着するが、アブソルートは18インチ仕様となる。どちらも快適な乗り心地を実現した。

トヨタ マークXジオ 2.4リッターエンジン

トヨタ マークXジオは写真の2.4リッター直4の他、3.5リッターV6搭載モデルも用意している。通常の使用状況であれば2.4リッターでも十分だ。

トヨタ  マークXジオ 18インチホイール

上級モデルの240G(写真)と3.5リッターモデルは18インチ、その他は16インチのタイヤを履く。ミニバンらしい快適さは確保されている。

ホンダ オデッセイ インパネ

エクステリア同様、インテリアのデザインも先代の雰囲気を残している。スポーティなだけでなく、広々感と高級さも感じさせてくれるもの。

ホンダ オデッセイ シフトレバー

標準車のFFはCVT、4WDとアブソルートは5速ATを採用する。アブソルートにはマニュアルモードが装備され、スポーティな走りが楽しめる。

トヨタ マークXジオ インパネ

さすがマークXブランドを名乗るだけあり、クオリティの高さは文句なし。エアコンのダイヤルはアナログメーター風の変わったデザインだ。

トヨタ マークXジオ シフトレバー

2.4リッターモデルはCVT、3.5リッターは6速ATを採用している。どちらもマニュアルモードを備えており、CVTは7速仕様となっている。

ホンダ オデッセイ フロントシート

フロントシートまわりはゆったりしており、視界も広く運転はしやすい。小物類の収納スペースも確保されているので使い勝手も良好だ。

ホンダ オデッセイ セカンドシート

セカンドシートは座り心地もよく、ゆったりとくつろげる。ただ、中央席にはヘッドレストも3点式シートベルトも備えられていないのは残念だ。

トヨタ マークXジオ フロントシート

シートは座り心地もよく、ゆったりと快適なドライブが楽しめる。小物入れを兼ねたアームレストを装備するなど、収納スペースは充実している。

トヨタ マークジオ セカンドシート

6人乗り仕様はこのような左右セパレートのキャプテンシートを装備する。7人乗りも選択でき、そちらはオデッセイのようなベンチシートとなる。

ホンダ オデッセイ サードシート

サードシートのスペースが拡大され成人男性でも十分な広さを確保している。視界も確保されているので、狭い印象はまったくなく快適だ。

ホンダ オデッセイ フルフラットシート

1列目と2列目を倒せばフラットなスペースが現われる。凹凸も少なく、ドライブ中の休憩などでもゆったりとくつろぐことができる。

トヨタ マークXジオ サードシート

4人乗り+自由に使えるサードシートがコンセプトなだけに、サードシートのスペースはミニマム。長距離の移動はかなり厳しいといえるだろう。

トヨタ マークXジオ フルフラットシート

マークXジオもオデッセイと同じく、1&2列目を倒してフルフラットにできる。こちらも段差は少ないので、快適に過ごすことができるのだ。

ホンダ オデッセイ ラゲッジ

サードシートが床下に収納されるようになっているので、この状態ではかなり深さがある。そのため比較的大きな荷物でも積み込むことが可能だ。

ホンダ オデッセイ ラゲッジ

セカンドシートまで倒せば、かなり広い空間が現われる。ただラゲッジのフロアと比べて高くなっているので、大きな段差ができてしまう。

トヨタ マークXジオ ラゲッジ

このクラスのミニバンとしては十分実用的なラゲッジスペースといえるだろう。開口部も広めで大きな荷物や重いものでも積み下ろしやすい。

トヨタ マークXジオ ラゲッジ

6人乗り仕様ではセカンドシートが収納できないので、これが最大ラゲッジだ。荷物を積む機会が多いならば、7人乗り仕様がオススメだ。

ホンダ オデッセイ vs トヨタ マークXジオ

ホンダオデッセイは、低床低重心プラットホームを採用することもあり、ミニバンらしからぬスポーティな走りと、居住性の高さをハイレベルで両立させている。またさらにスポーティな走りを望むならアブソルートという選択肢もある。対するトヨタ マークXジオは、大人4人がゆったり座れる独立したシートが基本の「4+Free(フォー プラス フリー)」という思想で開発されている。それだけにサードシートはおまけといった感は否定できない。だが快適な乗り心地や質感は満足できるもので、3.5リッター車は専用セッティングの足まわりを持っている。