搭載されるのは2リッターの直噴DOHC+インタークーラー付きターボのTSIエンジン。基本的にはゴルフGTIなどに搭載されるのと同じエンジンだが、SUVの性格に合わせた特性を得るためチューニングが大きく異なっていて、パワー&トルクの数値も170ps(125kW)/28.6kg-m(280N・m)に抑えられている。それでもパワーは2.4リッターエンジン級、トルクは2.8リッターエンジン級の実力だから、1600kg台に達するボディに対しても十分な実力といえる。
実際に走らせた印象も低速域のトルクが際立つ印象で、重いクルマを走らせているとは思えないような軽快さがある。組み合わされる6速ATの変速フィールは滑らかなものだし、積極的にレバーを操作してマニュアル車感覚の運転をするときのレスポンスにも不満はない。パワートレーンから受ける全体的な印象はちょっとスポーティな乗用車を走らせているような感覚だ。
乗り心地はけっこう硬めの印象で、しっかりした感じがあると同時に、路面が荒れたオンロードではゴツゴツ感を感じるシーンもあった。運転席ではあまり感じなかったが、後席ではクルマの上下動による揺れが大きく感じられるとのことだった。バネ下のチューニングにはもうひと工夫欲しい。
ティグアンには最新世代のハルデックスカップリングを使った4WDシステムの4MOTIONが採用されている。オンロードを走るときには特に意識することなく4WDの操縦安定性が得られる。駆動力配分の伝達速度が高くなったのが今回の4MOTIONの特徴だという。
オフロードの走りはモビリティパークで試したが、オフロードでもけっこう良く走る。インパネに設けられたオフロードスイッチを押すと、ヒルデセントの機能が働くほか、電子制御ディファレンシャルやABSのモードがオフロード用に変わり、アクセルペダルの特性なども変更される。これによってモーグルでのタイヤが浮くようなシーンでもしっかり走れるだけの走破性を持つ。
オフロードスイッチは時速20kmを超えると自動的に解除されるが、速度が20km以下に落ちると再び復帰する。完全に解除するにはもう一度スイッチを押せば良い。
ティグアンはオフロード走行用の仕様がほかの車種と異なる部分があって、最新のSUVらしい仕様が用意されている。たとえば、下り坂で速度を制御するヒルデセントアシストは、単に速度を時速5kmくらいに落として走るだけでなく、ドライバーのアクセル操作によって時速10kmくらいで下っていくことも可能だ。
あるいはオフロードスイッチとは別に設けられているホールドアシストのスイッチを押すと、急な坂の途中でもブレーキ力を保持して停止することが可能だが、この機能がブレーキペダルを奥まで踏み込まなくてもアクセルペダルから完全に足を離すだけで効きだすほか、ほかの車種では2秒間程度に限られるブレーキ力の保持が、アクセルペダルを踏み込むまでずっと続くのも特徴。より容易に安定した状態を確保できる。
充実した装備と戦略的な価格でライバルを迎え撃つ!
ティグアンには360万円の価格が設定されている。国産のコンパクトSUVに比べたらざっと100万円は高い計算だが、エンジンの性能や4MOTIONの機能、安全装備の充実度などを含めて考えると実質的な価格差はもっと小さい。また輸入車のコンパクトSUVとしてはBMWのX3やランドローバー フリーランダー2があるが、これらの車種と比べたら格段に割安な価格となる。
最近の日本では、SUVの市場が改めて盛り上がりつつあるので、そこに投入されるティグアンはかなり注目を集めるのではないか。このクラスには今後、メルセデス ベンツのGLKやアウディのQ5なども投入される予定だ。