ビアンテは運転席のシート位置が低めに設定されているため、ほかのトール系ミニバンに比べて乗降性に優れている。ほかの車種ではAピラーに設けられたアシストグリップを使ってよじのぼる感じになる車種もあるが、ビアンテはごく自然な姿勢で乗降できる。これは女性ユーザーなどには特にうれしいポイントだろう。
搭載エンジンは直列4気筒で2.0Lと2.3Lの2機種。2.0Lエンジンは直噴仕様のDOHCで、2.3Lは標準のDOHCとなる。基本的に電子制御5速ATと組み合わされるが、2.0L車に設定される4WD車は4速ATとの組み合わせとなる。
2.0Lエンジンの動力性能は151ps/19.4kg-m(111kW/190N・m)の実力。まあ必要十分な動力性能といえるのだが、ビアンテの車両重量は1600kg台でけっこう重い。ボディが大きい分だけ車両重量も重くなっている。それだけにもう少し力強さが欲しいという印象があった。
2.0Lエンジンは最大トルクを発生する回転数が4500回転と高めの設定であるため、発進時や走行中に速度を落とした状態から立ち上がるときなど、低中速域でのトルク感に特に物足りなさを感じた。
2.3Lエンジンは165ps/21.4kg-m(121kW/210N・m)のパワー&トルクで、最大トルクも4000回転で発生するので多少は良くなるが、それでも余裕ある動力性能という感じではない。走りのバランスが良いのは2.3Lのほうだが、価格が高くなるほか、排気量が大きくなる分だけ自動車税が高くなったり燃費が悪くなったりすることを考えたら、2.3Lエンジンに飛びつくわけにもいかないのが難しいところ。
足回りは後輪にマルチリンク式を採用したことによる安定性の高さが特筆されるところ。乗り心地にも配慮されているのでそれなりにロールは出るが、安定した姿勢でコーナーを抜けていくことができる。このあたりはいかにもマツダ車らしいスポーティな味付けだ。
ただ、走り志向のミニバン、それもトール系ミニバンというのは、ちょっと矛盾したものともいえるが、そこがマツダ車らしいところなのだ。でも、だとしたら横滑り防止装置のVDCなども標準で装備すべきで、より安全なクルマに仕上げて欲しい。今どき売り出されるクルマの中で、オプションでもVDCの設定がないようなクルマを作っているのはマツダくらいのものだ。猛省を促したい。
●お勧めグレード
走りの良さというか、少しでも余裕ある走りを得たいなら2.3L車になるが、一般的には2.0L車のほうが売れ筋になるのは当然。総合的に判断したらお勧めグレードは2.0L車で、20Sがお勧めとなる。オプションは両側電動スライドドアを始め、SRSサイド&カーテンエアバッグカーナビ、コンフォートパッケージとクリーンエアパッケージを選びたい。これらのオプションを合計すると60万円を超えるが、長く乗ることを考えたら満足できる仕様にして買うのが良い。