達人「松下 宏」が斬る!
職業:自動車評論家
中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても、その信念は変わらない。そのため、大本命といわれている車種さえ外して...
ゴルフ史上最良の燃費と力強い走りを両立させた!
ゴルフに新しいモデルが登場した。1.6Lの直噴エンジンを搭載した従来のゴルフEに代わって設定されたゴルフTSIトレンドラインがそれ。このモデルには新しいTSIエンジンが搭載されている。
1.4Lの直噴エンジンに過給器を組み合わせるということではすでに登場しているGT TSIやTSIコンフォートラインと共通だが、トレンドラインに搭載されるTSIエンジンは1.4Lの直噴エンジンにターボチャージャーだけを組み合わせている。従来からの1.4LのTSIエンジンにはターボチャージャーとスーパーチャージャーというふたつの過給器を組み合わせていたのとは異なる仕様だ。
パワー&トルクの数値を見ると、TSIトレンドライン用は122ps(90kW)/20.4kg-m(200N・m)で、TSIコンフォートライン用が140ps(103kW)/22.4kg-m)220N・m、GT TSI用は170ps(125kW)/24.5kg-m(240N・m)である。トルクの数値がちょうど20N・m(約2kg-m)ずつ異なっていて、うまく3段階の設定がなされている。トレンドライン用のTSIエンジンの実力は自然吸気の2.0Lエンジン並みである。
低速から効くスーパーチャージャーではなくターボだけを装着するため、ターボそのもののサイズを小さなものとして、アクセルワークに対する立ち上がりを良くしている。実際、軽く踏み込んだだけですぐに滑らかにターボが効きだすので、市街地などではアクセルを深く踏み込む必要がない。
これがゴルフの歴史上で最良の10・15モード燃費となる15.4km/Lにつながっている。この数値は単にゴルフ最良というだけでなく、日本で販売されたVW車として最良の数値だという。国産車と比べたら際立って良い燃費ではないが、VWのTSIエンジンは実用燃費とカタログ燃費の差が小さいのも長所だ。
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滑らかで快適な走りと充実した安全装備が魅力だ
低速トルクを重視して小さいターボを装着したことは、高速での伸びが鈍くなることにもつながるのだが、日本での使い方を考えるとこれも特に問題ではない。高速道路の合流車線で加速するときに十分な実力を示すからだ。超高速域での走りを考えたらもっと加速の伸びが欲しいと思うかも知れないが、実用的にはこれで十分である。
TSIトレンドラインのもうひとつの特徴は7速のDSGが初採用されたこと。ツインクラッチのDSGは2ペダルでの素早くスムーズな変速で定評を得ているが、従来の6速から今回は7速化されている。トルクがやや小さくなるターボチャージャーだけのTSIエンジンには、こうした多段化されたDSGが適している。ベーシックグレードとなるトレンドラインに最初に7速DSGを採用するのはVWの真っ当なクルマ作りを示すものだ。
実際の変速フィールはとてもスムーズで、通常のATモードで使っているときには何速のギアで走っているのかを忘れてしまうほど。それくらいにスムーズな走りが可能である。また7速になったことで、1速がよりローギアード化され、ハイギアードな7速が設定されるため、発進からの力強い加速と高速クルージングでの燃費の良さが両立されたのもポイントとなる。
TSIトレンドラインは、従来のゴルフEに比べて大幅に仕様が向上した割に、価格アップはわずか3万円に抑えられている。充実した安全装備や必要な快適装備を備えたゴルフが、250万円を切るリーズナブルな価格で手に入るのも魅力だ。
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代表グレード
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フォルクスワーゲン ゴルフ TSIトレンドライン
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ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
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4205×1760×1520mm
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車両重量[kg]
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1310kg
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総排気量[cc]
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1389cc
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最高出力[ps(kw)/rpm]
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122ps(90kw)/5000rpm
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最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
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20.4kg-m(200N・m)/4000rpm
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ミッション
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7速DSG
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10・15モード燃焼[km/l]
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15.4km/l
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定員[人]
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5人
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税込価格[万円]
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248.0万円
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発売日
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2008/6/17
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レポート
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松下宏
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写真
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佐藤靖彦
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