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“ディーゼル万歳!”って本当?

 最近、世の中ディーゼル、ディーゼルとエンジン音のごとく少々騒がしい。環境問題は重視しなくてはならないが、日本にはディーゼルエンジンなんて、あんまり必要ないんじゃないの? と、思っているボクにとって、ディーゼルの水平対向だろうが直4だろうがV6だろうが関係ない。少なくても、メルセデスのCDIや日産エクストレイルのディーゼルにも乗った。海外のディーゼル車にも乗った。正直にいうがベンツのCDIは800万円以上もするのだから、いいのは当たり前で我々庶民にとっては現実感がない。エクストレイルのディーゼルエンジンは、多少賑やかだけど少し良くなったかなぁ、くらいで諸手を挙げて万歳! と、叫ぶほどのものでもなし・・・。ディーゼル万歳を繰り返す評論家さん達に「リアリィ?」と逆に聞きたくなるほどである。
 というわけで、水平対向ディーゼルだからって「ああ、そうですかぁ」という感じで、かなり冷めた気持ち(冷静ともいう)での試乗である。

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トルクがすごい!

 最初に乗ったのは、レガシィ・アウトバック。右ハンドルの5MTだ。で、コースイン。いきなり、アクセル全開!! ちらっとメーターを見る。「結構、スピード出ているようだけど、まだ100km/hかぁ。やっぱ、ディーゼル遅いなぁ」がファーストインプレッションだ。その直後、ホント、スバルの関係者が乗っていなくて良かったと冷や汗。かなり、おバカであった。スピードメーターは、実は100km/hではなく、100マイル(約160km/h)であった・・・。この間、約5分。ひとり車内で軽く赤面しながら、冷静さを取り戻す。
 正しくは「けっこう速い!」である。ちなみに、このEE20水平対向ディーゼルエンジンは、2リッターターボ。150馬力、350Nmをアウトプット。150馬力はガソリンのEJ20型ガソリンエンジンと同等の出力。ところが、トルクがすごい。350Nmといえば、ガソリン車にすると3.5リッター車並みである。このトルクを1800回転で発揮する。200km/hでのクルージングも可能だ。
 ディーゼルエンジン用にハイギヤード化された5速MTは、約100km/hで2000回転弱。ちょうど最大トルクを発揮するおいしい回転数だ。そのため、アクセルをチョイと踏むだけでゴゴゴォーというエンジン音とともにスルスルと加速する。ガソリン車で同じ加速を行おうとするならば、ギヤを1速落として加速しなくてはならないだろう。長い距離を高速巡航する環境化にあるならば、頻繁にシフト操作する必要がないのでディーゼルMT車は確かに楽チンである。
 まあ、こういうメリットは最近のディーゼル車なら当たり前。EE20型ディーゼルエンジンの魅力はこれだけではない。驚くべきことは、水平対向4気筒ディーゼルエンジンの振動の少なさだ。向かい合わせに配置されたピストンが対向して動くことで、互いの振動を打ち消しあうという水平対向エンジンのメリットがハッキリと分かる。とくに、急激なアクセルのオン&オフを繰り返しても気になる振動は皆無である。他社の4気筒ディーゼルエンジンでこの行為を行うと、ステアリングにハッキリと振動が伝わってくるほどだ。この振動レベルは、ベンツEクラスに積まれているV6ディーゼルエンジンに匹敵する。2リッター4気筒というベーシックなエンジンながら、ひとクラス上の高級車に積まれているエンジンのように感じた。

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想像以上の相性!水平対向×ディーゼル

 また、ディーゼルというと、ガラガラという騒音だが走行中にはほとんど気にならなかった。これも水平対向エンジンの特性といえる。ただ、停止中のアイドリング音は、やはりカリカリという高周波の音が聞こえてくる。それでも、他社の4気筒エンジンよりは遥かに静かではある。マフラーから出る音は、ディーゼルながらガソリンと同様にドコドコドコといかにも水平対向らしいサウンドがしていたのがミソ。正直なところ、ここまで水平対向というレイアウトとディーゼルエンジンの相性がいいとは想像していなかった。近くにいた技術者も「理屈では相性がいいと思っていましたが、作ってみて正直ここまで相性がいいとは思ってもいませんでした」とコメントしてくれたほどだ。
 燃費に関してもこだわったという。欧州では、満タンで1000km走れる燃費を目指した。約60リッタータンクで考えると、1000km走るのには、約16.7km/l以上走らなくてはならない計算だ。
 さらに、このEE20型ディーゼルエンジンのすごさは、軽量コンパクト性能にもある。フツー、ディーゼルエンジンはガソリンに比べ大きく重くなる傾向にあるが、このEE20型は全長が353.5ミリ、EJ20ガソリンエンジンが414.8ミリと明らかにコンパクト。アルミ合金製シリンダーブロックを使うことで、クラストップレベルの軽量化が達成できたというのだ。だからこそ、設計当初ディーゼルエンジンを搭載する予定のなかったレガシィに、あまり苦労なく搭載できるようになったのだ。

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日本発売にはまだまだ課題が…

 そんな水平対向ディーゼルエンジンだが、まだまだ課題はたくさんある。大きな課題として、今のところ欧州のEURO4規制までにしか対応していない。日本のポスト新長期規制やアメリカのTier2BIN5規制をクリアするには、まだまだ長い道のりが必要だという。また、日本や北米で販売するにはATも重要。ディーゼルエンジン用のミッション開発という課題も残されている。すでにヨーロッパ勢は尿素を使う次世代ディーゼルエンジンで、北米などの規制をクリアする目論見が立っているようだ。後発ながら、ディーゼルエンジンと抜群の相性をもつ水平対向エンジンが、ヨーロッパ勢に対してどこまで追いつけるか楽しみだ。
 販売価格にも大きな課題が残る。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンよりも多くのコストがかかっている。このレガシィも日本で発売するとなると、30万円以上は確実に高価になるだろうといわれている。30万円以上をプラスして買っても、10万キロ以上走る人でないと、ガソリン価格と軽油の価格差で高コスト分を埋めることができない。そう考えると、ディーゼル車を積極的に選ぶこともできないのだ。この高コスト分を誰がどうクリアにしていくかが今後のポイントとなる。

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イメージと理論にダマされるな!

 さて、多くの評論家の皆さんがいうディーゼルエンジンがスポーティかというと問題。ボクは違うと思っている。水平対向ディーゼルは比較的レスポンスに優れるが、それでもターボエンジンということもありガソリン車のように足の指先で感じるくらいのレスポンスと鋭い瞬発力はまだない。また、エンジンの回転とともに上昇するパワーや高揚感もない。なにをもってスポーティというかが問題かもしれないが、少なくとも今まで乗ったディーゼルエンジンにドキドキするような気持ちになったことはないのだ。だから、ボクにとってのディーゼル車は趣味のものというよりは、高速で快適に移動するための素晴しい道具のひとつと思ってしまう。
 そのイメージの押し売り傾向は多くの欧州メーカーの姿勢にある。彼らはとにかくディーゼルを売りたい。価格も高価にあることもあり、利益も上がるし環境にも優しい。だからこそ、ネガな部分を払拭したいのでスポーティという言葉を連呼する。ある意味、強引だ。
 燃費や環境問題も同じで、自分たちの論理をゴリ押しする。たとえば、日本のようにどこへ行っても渋滞があり、渋滞がなくても信号でストップ&GOを繰り返される環境において、航続燃費に優れるディーゼルエンジンではメリットが生かせないケースが大半だ。日本のような環境下では、アイドリングをストップするハイブリッド型が効果的だと思うし、欧州のように渋滞もなく高速移動ができるならディーゼルだと思う。使われる国の現状を考えずに欧州の理論そのものを持ち出すのは、ボクはナンセンスだと思う。そんなゴリ押しを続けながらも、実は彼らもその間違いに気が付いていて、各社ディーゼルハイブリッドの開発なんかもやっていたりする。我々消費者は、単純に押し付けの論理を疑わずに信じてはいけないのだ。
 スバルも欧州でいいといわれているから日本にも、という感覚ではなく、日本の事情を十分に考慮したディーゼルを導入して欲しい。そうでないと、誰も買ってくれないクルマが誕生してしまうかもしれない。

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エンジン
EE20(ボクサーディーゼル)
排気量[cc]
1998cc
最高出力[ps(kw)/rpm]
150ps(110kw)/3600rpm
最大トルク[kgf-m(N・m)rpm]
35.7kgf-m(350N・m)1800rpm
CO2排出量[g/km]
148g/km(セダン)
圧縮比
16.3
ボア×ストローク[mm]
86.0×86.0mm
燃料噴射システム
コモンレール式
エンジン全長[mm]
353.5mm
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