ザ・対決 ダイハツ タント VS スズキ パレット
超ハイト軽ワゴン編
ダイハツ タント vs スズキ パレット

 日本独自規格の軽自動車。今や実用一辺倒だけでなく、さまざまなタイプのモデルが登場してきている。とくにミニミニバン的に使えるハイト系の人気は高い。しかし、全長と全幅はギリギリいっぱいで、もう限界。そこで登場してきたのが、まだ余裕がある全高を伸ばした超ハイト軽ワゴンだ。子供なら立つことのできる広大なスペースが自慢で、実用性を大いにアピール。タントは、お得意のカスタム系をラインナップしているのもダイハツらしいところ。このジャンル、タントが口火を切り、その後はしばらく独壇場が続いたものの、2代目へのスイッチに合わせてスズキから真っ向ライバルのパレットが登場。こちらも縦方向にスペースを思いきっり取って、広さをアピールしているのだが、ドア形状が異なるなど、タントとはまた違ったテイストで仕上げられている。この差は小さいように見えて、じつはかなり大きかったりするのだ!

PHOTO/高木博史 構成・文/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

ダイハツ タント
ダイハツ タント
2代目になっても広さは健在
ミラクルオープンドアにも注目

 2003年に初代が登場して以来、一貫して広さを売りにして好調な販売を続けてきたタント。当初は子育てをするお母さんをターゲットにしていたものの、途中でダイハツお得意のカスタムを登場させるなど、精悍さもプラスして幅広いユーザーから支持を得てきた。
 2007年12月に登場した2代目に関しても、そのコンセプトは同様で、当初からタントとタント・カスタムの2本立てで登場。広さについては初代の「驚きの広々空間」から「驚きの広さを超えた感動の空間」と銘打つように、さらなる進化を遂げている。軽自動車最大の室内長(2160mm)と室内幅(1350mm)をベースに、室内高は1350mmを実現。前後シートに座った際のカップルディスタンスも1135mmとこちらも軽自動車トップで、鉄壁といってもいいほどの広さを誇っている。まさに広さのタント、健在である。
 とはいえ、一番のトピックスとなるのが、トヨタのアイシスのようなピラーレスの大型スライドドアである「ミラクルオープンドア」だ。助手席側だけだが、前後のドアを開けると、ピラーがないだけに、広大な開口部が出現。乗り降りのしやすさだけでなく、荷物の積み下ろし、さらにはドライブ先での基地的な使い方もできるなど、使い勝手は大きく向上している。
 安全性については、助手席側の衝突安全性確保にとくに力を入れ、超高張力パイプ材を使用した補強剤をドア内に入れるなどし、運転席側と同等のレベルを確保。その結果、全方位的に国内及び欧州の衝突安全基準を余裕でクリアしている。ただし、最廉価グレードのlはABSをオプション設定するなど、安全思想を疑問視せざるを得ないお粗末なグレードもあるので注意が必要だ。

[エコ&燃費]
 エンジンはタントが58馬力のNAで可変バルブタイミング機能のDVVT採用。さらに上級グレードはCVTと組み合わせて、20.5km/Lという低燃費を実現する。ターボはカスタムのみだが、こちらもCVTと組み合わせることで19.2km/Lを達成している。またダイハツ独自のスーパーインテリジェント触媒を全車に採用し、省資源にも配慮。

[取材時実測燃費]
10.8km/l

[ダイハツ タント価格帯]
108.15〜173.775万円

スズキ パレット
スズキ パレット
タント最大のライバルは
幅広いライフスタイルに対応

 軽自動車の新ジャンルを切り開いたワゴンRと、機能と装備を充実させたMRワゴン。それに続く、第3の柱としてスズキが位置づけて登場させてきたのが、パレットだ。幅広いライフスタイルに対応して新しい価値観を生み出すといっているものの、タントのライバルであることは確かだ。ただし、グレード体系については、タントのカスタムに当たるものはなく、単純にグレード毎の装備としてエアロを強調したものになる程度となる。
 まず気になるのはその室内空間だが、タントとは少々異なる手法が採られている。まず2400mmというロングホイールベースを持つプラットフォームを新開発しつつ、フロアを低床化。これにより、軽自動車トップの1365mmという室内高を実現しており、この点はライバルのタントに対するアドバンテージとなる。もちろん低床化はラゲッジの積載性向上にも威力を発揮し、両車を並べてみると明らかにパレットのほうが低いことがわかるほどだ。
 ドアに関しては、タントがミラクルオープンドアで登場してきたのに対して、パレットは乗用軽自動車では初めてとなる両側スライドドアを装備する。一見すると大胆な開き方をするタントのほうが有利に思えるが、じっくりと使うという点では両側スライドドアも侮れない。一部グレードではリモコンでも操作できるパワースライドドアとしているだけになおさら。
 安全性については、最低グレードを除いて、フロントにサイドエアバッグを標準装備しているだけでなく、上級グレードには後席もカバーするカーテンエアバッグを標準装備している点に注目だ。安全装備は、スズキの軽自動車の中で今まで以上の水準に達している。

[エコ&燃費]
 NAエンジンは可変バルブタイミング機能VVT付き。FF車では4つ星に加えて燃費基準+10%達成でグリーン税制に対応している。ターボについては、マイルドターボながら、適応はされていない。エンジンは従来からのタイプで、ミッションは4速ATのみ。実際の数値はNAで20.0km/Lで、Mターボは18.6km/Lとなっている。

[取材時実測燃費]
10.2km/l

[スズキ パレット価格帯]
111.3〜169.365万円

カスタム Xリミテッド
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
3395×1475×1750mm
車両重量
940kg
エンジンタイプ
直列3気筒DOHC
総排気量
658cc
最高出力
58ps(43kw)/7200rpm
最大トルク
6.6kg-m(65N・m)/4000rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
20.5km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)
ディスク/ドラム
税込価格
147.0万円
XS
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
3395×1475×1735mm
車両重量
910kg
エンジンタイプ
直列3気筒DOHC
総排気量
658cc
最高出力
54ps(40kw)/6500rpm
最大トルク
6.4kg-m(63N・m)/3500rpm
ミッション
4速AT
10・15モード燃費
20.0km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/アイソレーテッドトレーリングリンク式
ブレーキ(前/後)
ディスク/ドラム
税込価格
136.5万円
ダイハツ タント NAエンジン

エッセやムーヴにも搭載される新世代ユニットは低燃費で静粛性も高く、軽自動車でもトップレベルの実力をもつ。NAでも力強い走りを披露する。

ダイハツ タント フロントマスク

従来同様、ノーマル系のほかに写真のカスタム系をラインアップする。こちらは男性ユーザーを意識した、いかついフロントマスクが特徴だ。

スズキ パレット NAエンジン

タント同様NAでも実用十分なトルクが確保されている。だが基本設計はやや古く、ノイズはやや大きめ。ターボエンジンは自然なフィールが魅力だ。

スズキ パレット フロントマスク

上級グレードにはエアロパーツが装着され、スポーティなデザインが与えられている。だが、タントほどの大きな差はないのが少し残念なところ。

ダイハツ タント インパネ

軽自動車最大の広さを誇るだけあり、広々感は抜群だ。インパネの素材の質感も非常に高く、コンパクトカーにも引けをとらないほどだ。

ダイハツ タント シフトレバー

ミッションは4速ATとCVTを用意。4速ATでも滑らかな走りが味わえるがCVTは燃費もよく、軽快な走りは軽自動車トップレベルの実力。

スズキ パレット インパネ

タントを徹底的に研究しただけあって、室内の広さはこちらも軽自動車とは思えないほど。小物の収納スペースなども豊富に用意されている。

スズキ パレット シフトレバー

ミッションは4速ATのみの設定で、設計もやや古さを感じさせる。タント同様、インパネシフトなので左右のウォークスルーもしやすい。

ダイハツ タント フロントシート

シートはサイズもまずまずで、座り心地はよい。ボディサイズの限られる軽自動車ということもあり、左右の余裕は少ないが広々感は抜群。

ダイハツ タント リヤシート

シートのスライド量も多く、足元スペースにも十分なゆとりがある。パノラマオープンドアのおかげで、乗降性はとても優れている。

スズキ パレット フロントシート

タントと同じくベンチシート風だが、サイドのサポート部分の張り出しはやや大きめ。クッションの厚みもまずまずで、疲労感も少ない。

スズキ パレット リヤシート

タントよりもホイールベースは短いが、パッケージングを追求したおかげでスペースは十分。背もたれの高さはやや低めな印象だ。

ダイハツ タント メーター

カスタム系はタコメーターが装着され、スポーティな雰囲気。センターメーター方式ということもあり、視認性はとてもよい。

ダイハツ タント ラゲッジ

フル乗車時でも最低限のラゲッジスペースを確保。フロアも低く設定されているので、重い荷物の積み込みもそれほど苦にならない。

スズキ パレット メーター

上級モデルはタコメーターを装備している。こちらはセンターメータ方式ではないが、視認性に不満は感じられない。

スズキ パレット ラゲッジ

こちらもフロアは低いので荷物の積み込みは楽。奥行きはやや短めな印象だが、実用上問題になるほどではなく使い勝手はよい。

ダイハツ タント ラゲッジ

後席の収納は簡単で、荷物の量やサイズに合わせてフレキシブルに対応しやすい。

ダイハツ タント ラゲッジ

フロアもフラットで高さも十分確保されている。かなり大きな荷物も搭載可能だ。

スズキ パレット ラゲッジ

パレットもラゲッジの使いやすさはかなりのものでタイヤハウスの出っ張りも最小限。

スズキ パレット ラゲッジ

フロアはやや段差ができてしまうが、わずかなので気にはならないレベル。

ダイハツ タント vs スズキ パレット

タント、パレットとも軽自動車トップレベルの広々した室内空間を持つので、快適に移動できる。タントはCVT搭載モデルもあり低燃費で滑らかな走りが特徴。一方のパレットもハンドリングと乗り心地のバランスがとれた乗り味だ。