達人「国沢光宏」が斬る!

スバル フォレスター評価

国沢光宏

職業:自動車評論家
歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。

新型フォレスター

4速ATでもここまで出来る!

 スバルにとって久々の売れ筋モデルになりそうな新型スバル フォレスターながら、試乗してみたら非常に興味深い点を二つ見つけた。「究極の4速AT」と「素晴らしい乗り心地を持つショーワ製ショックアブソーバー」であります。以下、達人向けにしっかり紹介したい。

新型フォレスター シフトレバー

 まずフォレスターの「究極の4速AT」から。普通、4速ATといえば、言うまでもなく「旧式のAT」である。実際、今や2リッター級以上の新型車で4速ATを採用しているモデルは皆無に近い。なぜ4速ATじゃダメなのだろう? こらもう簡単。燃費も動力性能も期待できないからだ。

 例えば100km走行時のエンジン回転をチェックすると、フォレスター級SUVの4速AT車であれば2500回転以上回ってます。5速ATやCVTなら2000〜2200回転といった感じ。つまり100km巡航時、4速ATはウルサイし回転高いため燃費も良くなかったワケ。

 ところが新型フォレスターの4速ATに乗ってびっくり。100km走行時のエンジン回転数見たら2200回転で5速AT並。しかもそこからアクセル踏み込むや、ロックアップ(トルコンの滑りを止める機能)を解除し、回転数を300回転ほど上げる制御となっている。

 ロックアップを解除すると回転数高くなるだけでなく、トルコンの「トルクを増幅させる」という機能が作用。実際のトルク感としては600回転分くらい高い回転と同等のトルクを出す。5速ATの5速から4速にキックダウンするより滑らかだし、レスポンスも早い。

 さらにアクセル踏むと、今度は3速のロックアップ状態か、3速のロックアップ解除状態に入る。これまた変速ショック少なく、5速ATと同じくらいスムーズ。加速性能や実用燃費だけで考えると、レガシィに搭載されている5速ATと同等なのだとか。

 それでいて5速ATより20kg軽く、コストは「相当安いです。だからこそライバルのエクストレイルより10万円以上安い価格設定が可能でした」。う〜ん! 無料みたいなものか? なるほど究極の4速ATだと感心しきり。

新型フォレスター
従来モデルに比べ拡大された全高や存在感あるフロントマスクの影響で大幅にSUVらしさが高まったスタイリング。
新型フォレスター
フォレスターのアイデンティティを残しながらも洗練された印象を感じるリアビュー。マフラーは全グレード左右2本出しとなる。
新型フォレスター インテリア
細部は異なるが、インテリアの造詣は基本的にインプレッサと同じもの。上級グレードのシートには撥水加工も施される。
新型フォレスター リアシート
ホイールベースの拡大により格段に広くなったリアシート。4人乗車でも十分くつろげる。
新型フォレスター リトラクタブル・リヤテーブル
リアシートには飲食時などに役立つ「リトラクタブル・リヤテーブル 」も装備される。
新型フォレスター ラゲッジスペース
小さくなったタイヤハウス等のおかげで大幅に使いやすくなったラゲッジスペース。

良質なショックアブソーバーで見違えるような乗り心地に

新型フォレスター SIシャーシ/サスペンション形式はインプレッサと同じく前ストラット、後ダブルウィッシュボーンだ

 新型フォレスターに乗って驚くもう一つの特長は乗り心地。今回からショーワ製のショックアブソーバーを採用しているおかげで、乗り心地の質感が圧倒的に高くなった。高い評価を得ている日産デュアリスの『ザックス製』ショックアブソーバーと比べても遜色ない。

 スバルの開発担当の人に聞いてみたら「細かい入力に対する追随性が圧倒的に良いです」。ただショーワ製のショックアブソーバーは大きな弱点を持っていた。大きなデコボコを通過する時の衝撃を受け止めきれず、大きなショックを伝えてしまうのだ。

 全モデルでショーワ製ショックアブソーバーを使うホンダ車に共通する弱点ともなっているほど。新型フォレスターがショーワ製を使っていると聞き「どれどれ?」とばかり大きなデコボコを通過してみたところ、拍子抜けするくらい小さな入力しか感じず。

 どうやら根本的な対応策を行ったようなのだ。大きなデコボコに耐えられるなら、ショーワ性のショックアブソーバーは良いところだらけ。なんたってBMWも一時採用を本気で検討したほど。F1用のショックアブソーバーまで作ってます。

 新しいフォレスターに試乗する機会があったら、究極の4速ATと、良質のショックアブソーバーによる快適な乗り味をぜひとも味わって欲しい。

新型フォレスター2.0XS エンジンルーム
DOHC化などの大改良を受けた2リッター水平対抗4気筒エンジン。4速ATとのマッチングも上々。
新型フォレスター2.0XT エンジンルーム
SIドライブも装備されるターボエンジンはフォレスター専用に中低速重視のセッティングとなっている。
新型フォレスター 走り
乗員全員に優しい「しなやかさ」をテーマとする乗り味は多くの人から受け入れられることだろう。