開発責任者である水野さんが語るGT-Rに関しての「逸話」や「技術論」そして「凄さ」は書き切れないほどある。当然ながら一度では紹介出来ないため、機会ある毎にレポートしてみたい。今回は開発責任者の水野さんの十八番である、「300kmで走っているときに隣の人と普通に会話出来る」という点についてお話を伺った。

この記事の目次 CONTENTS
1.300kmの世界を味わうためにドイツに飛んだ!
2.250kmはジョギングレベルに近い
3.日産 GT-Rのメーター、エンジン、タイヤ
4.チャンス到来、最高速アタックを敢行!

ライター紹介

自動車評論家

国沢 光宏 氏

歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。

1.300kmの世界を味わうためにドイツに飛んだ!

これはもう試せばいいのだが、困ったことに300km出せる場所など無い。日本で一番ストレートの長い富士スピードウェイさえ300kmには届かず。
おそらく日産も「水野さんが言っている以上、試す機会を作らなくては」と考えたのだろう。
自動車雑誌対象に速度無制限のアウトバーンで試乗会を行った。私も『ベストカー』という雑誌のレポーターとして乗りに行ってきた次第。

日常的ではない300kmという速度

果たして本当に300kmで会話出来るのか?「これはぜひとも体験してみなければ!」とは全く思わない。
1秒間で80mも進む300kmという速度、さすがにスピード出し放題のアウトバーンを持ってしても日常的ではないし、無理して出したら危険でもある。

安全性を考えれば250kmが妥当

交通量が多いというだけでなく、緩いカーブも230kmあたりを境にキツく感じるようになってくる。
ベンツやBMWが紳士協定としている250km(ここで速度リミッターを稼働させる)は、日本の180kmと同じく、安全性を考えれば妥当な速度かもしれない。

2.250kmはジョギングレベルに近い

前置きが長くなった。GT-Rのハンドルを握ってアウトバーンを走っている、と思って欲しい。
国沢光宏、走り始めて5分で完全に驚いてしまった。GT-Rの200kmは、普通のクルマの100kmと同じ「単なる通過点」という感じ。
リラックスして流している状態で速度計見たら「これで205kmなの?」、というイメージ。

最高速度310kmとは思えない見た目

NSXやセルシオレベルだと相当緊張する250kmも余裕の速度。今までの日本車と全くレベル違うのだ。
ただ困ったことにアウトバーンでは顔が売れていないせいか、ベンツやBMWも避けてくれない。

さらには、アクセルを踏んで逃げようとする輩までいる。ポルシェに乗っていると面白いように道が空いていくのに……。
バックミラーでGT-Rを見ると、アメリカ車に見えないこともない(カマロなどは車幅は広く、車高は低い)。少なくとも最高速度310kmのクルマだとは思えない。

270kmを越えたあたりで接地感が薄くなる

加えて試乗日のアウトバーン、平日ということもあり交通量は多く、80kmで走っているトラックも多数。
なかなか思いきりアクセル踏むという状況に恵まれず。それでも270km程度までは何度も試せた。
さすがに270kmくらいになると「鬼のような安定性」といった雰囲気じゃなくなってくる。

サスペンションを一番ハードな『R』にしても接地感が薄くなり、ブレーキを掛けた時の左右バランスは微妙な差を感じ始める。
200kmの余裕と明らかに違う。もちろんこの速度域、ポルシェやフェラーリだって同じようにナーバス。雪道を走るときのような繊細さが要求される。それくらい300kmという速度は特殊なのだ。

3.日産 GT-Rのメーター、エンジン、タイヤ

340kmまで刻まれるスピードメーター、サーキットに限りスピードリミッターを解除できる機能も備わる。

1.7トン以上の巨体を300kmオーバーのまで引っ張る3.8リッターV6ツインターボエンジン。

タイヤは20インチ、強力なストッピングパワーを持つブレーキはブレンボの6ポットキャリパーだ。

4.チャンス到来、最高速アタックを敢行!

何度か270kmを出し、凄さに十分納得していたら、突如2kmほど先行車のいない直線が出てきた。
これはもう踏むしかないでしょう!250kmからアクセルを床まで踏み込む!想像していたよりはるかに速度が乗っていく。

280kmあたりからジワジワという伸びになるも、先行車を視認しアクセルを戻すことにした。
290kmまで一気だった。最高速度である310kmは、あと30秒アクセルを踏めていれば(距離にして3kmほど)確実に出たと思う。

結論:300kmで隣の人と会話はできる!

おっと「300kmで隣の人と会話できるか」でありました。290km出した時は隣に人が乗っていたのだ。
結論から書くと「あと10kmで会話出来なくなるような環境」ではありませんでした。
ごく普通の声量で速度読み上げ、「早いね〜!」なんて話をしてましたから。

水野さんのGT-R話、凄すぎてみ〜んなウソっぽいけれど、関係者に聞けば全部本当らしい。疑り深い私も、最近90%くらい信じてます。