搭載エンジンのパワー&トルクは308ps/43kg-mの実力。ランサー エボリューションXが従来と同じ280psに抑えたのに対し、WRX STIは300psの壁を超えた308psのパワーを実現してきた。今では300ps超えは珍しくなくないが、ランエボと異なる設定になったのは注目されるところだ。
300psを超えたからということではなしに、動力性能的には十分すぎる実力を持つ。型式こそEJ20型の水平対向2.0LのDOHC+インタークーラー付きターボだが、細部にわたって改良されたエンジンはアクセルワークに応じて8000回転から始まるレッドゾーンに向けて一気に吹き上がっていく。その手前の7000回転を超えたあたりでシフトアップを促すランプが点灯するが、レッドゾーンまでいっぱいに回すだけの値打ちのあるエンジンだ。
このエンジンには前述のSIドライブが設定されていて、コンソール上のスイッチを操作することでS、S#、Iの3種類のモードを使い分けることができる。ひとつのエンジンが3種類の特性を持つわけで、その日の気分や走行シーンに応じて自由に切り変えることができる。
今回のWRX STIで大きく変わったのはシャシーだ。後輪にダブルウィッシュボーン式のサスペンションを採用したことで、格段に接地性能が高まった。インプレッサ WRX STIにはテストコース、富士スピードウェイ、一般道とさまざまなシーンで試乗したが、テストコースのタイトなワインディングでも、富士スピードウェイのヘアピンでも、後輪がしっかり路面をとらえてくれる。簡単に挙動を乱すようなことがないので結果としてスムーズに速く走れる。
標準のインプレッサではダブルウィッシュボーン式サスペンションのキャパシティの高さが、乗り心地の良さにおいて良く発揮されていたが、インプレッサ WRX STIではそれが操縦安定性の高さの面で発揮されている。このことがパワフルなエンジンを搭載したインプレッサ WRX STIを非常に扱いやすいものにしている。過激なまでの実力を持つクルマでありながら、とても運転のしやすいクルマに仕上がっているのは大いに歓迎できる。
●お勧めグレード
お勧めグレードは特にない。基本的には単一グレードのモデルで、WRX STIを選ぶだけである。強いて言えば、17インチタイヤ仕様が用意されているが、これはモータースポーツ参戦のベース車として使うためのもの。一般のユーザー向けに用意されたクルマではない。
用意されているオプション装備は、BBS製の鍛造アルミホイール、オーディオ一体型のHDDカーナビ、レカロ製のシートなど。これらをフルに装着すると400万円台中盤の価格になるが、発売直後の段階でインプレッサ WRX STIを買うなら、フルオプションにして選びたい。