格安輸入車をこれまでに十数台購入し、乗り継いできた自動車ライターの外川信太郎氏のフォルクスワーゲン ゴルフ R32の試乗記、前編。

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特別な存在 VWの「Rライン」とは
威圧感を抑え、精悍な印象の強いエクステリア
ノーマルゴルフをベースにスパイスをピリっと効かせたインテリア

ライター紹介

自動車ライター&カーグッズライター

外川 信太郎 氏

大学卒業後、ラジオ局の放送作家(自動車番組)を経て、2000年にフリーの自動車ライターに。輸入車専門誌、カーグッズ誌、ウェブマガジン、自動車用品メーカーのカタログ執筆。またカーワックス、自動車メーターの知識は、業界でも特筆。現在でも、山梨県甲府市の某FM局でクルマ番組のパーソナリティも勤める。愛車は正規輸入車では日本上陸一号車のピンクの「ルノー・トゥインゴ」と「オペル・ベクトラ」。他にも50万円以下で購入できる、格安輸入車をこれまでに十数台購入。湘南藤沢市生まれ、少年時代は、英国に滞在。

特別な存在 VWの「Rライン」とは

 私と「ゴルフ」の関係は切っても切れない。その昔、「ゴルフ」でカップレースに出場したり、友人の“ボンボン”が所有するイジリ倒した「ゴルフ GTI」で箱根の山に「AE86」を追い回しに出掛けたものだった。いかなる状況でも、クルマが乗り手を優しく包み込んでくれるような安心感は、腕のない私にも、クルマを操る楽しみを勉強させてくれた貴重な一台だった。
 あれから「ゴルフ」も姿を変え、“肥大化”する度に購買意欲が下降していったが、フォルクスワーゲンが掲げる「Rライン」は、やってくれるじゃん!と常にその存在は、私にとって特別だ。
 「Rライン」のRは、もちろんレーシングの略。最初の投入はまさに“市販車離れ”した「ニュービートルRSi」でエクステリア、インテリアともにカップカーのような趣。900万円に迫るプライスを掲げ、世界限定250台というプレミアモデルであった。

さらに進化しスペシャルなクルマに

その後、先代にあたる「ゴルフ」をベースに各種エアロパーツ、専用スポーツサスペンション、そして狭角V6、3.2Lエンジンを搭載し、「ゴルフ」いやCセグメントの常識を打ち砕く241psというパワーを発揮するスペシャリティなクルマに仕上げた。ちなみに、本国モデルに存在した「DSG」は、日本には未導入。6MTのみだった。

そして、現行モデル「ゴルフ」ベースのR32。今回は、お盆休みを利用して、このクルマとじっくり付き合ってみることにした。

威圧感を抑え、精悍な印象の強いエクステリア

先代「ゴルフ」ベースのR32がマスの効いた塊感あるエクステリアデザインだったためか、現行のR32には、“物々しさ”はさほど感じない。前衛的ながらも大人の品格を備えているといった印象だ。むしろ現行型「ゴルフ・GTI」の方がスポーティで“やんちゃ”な印象を受けるのではないだろうか?

しかし、ディテールを観察すると、お金掛かってるなあ〜と一言。18インチの20本スポークのホイールに225/40R18のミシュランパイロットSXが組み合わされ、前後左右には専用の空力パーツが備わる。また、フロントの盾型グリルは、同社の「ジェッタ」や「パサート」などが、鏡面仕上げを採用しているのに対し、R32は質感の高い艶消し仕上げで差別化。後ほど触れるが、φ80はありそうなツインエキゾーストエンドは、中央から独立2本出し。やはり、コイツ、秘めた何かを漂わせている・・・。

フロント

大きく口を開けたエアーインテークは熱発生量の多い3.2Lエンジンに考慮したもの。

サイド

ローダウン&18インチホイールが単なるCセグメントハッチでないことを主張している。

リア

エアロスカートはR32専用。GTIにも未装備だ。極太のエキゾーストエンドは一際目を引く。

ラゲッジルーム

5:5の分割可倒式を採用。通常時350リットル、最大1305リットルという広大な空間を有する。センタートンネル式でスキー板などの長物の積載も可能だ。

バイキセノンライト

フィリップス製のバーナーを持つバイキセノンライトは、ハイビーム/ロービームを内蔵のシャッターで切り替える。内側のH7ハロゲンはパッシング&ハイビーム。

ノーマルゴルフをベースにスパイスをピリっと効かせたインテリア

インテリアは、先代のR32ほどスパルタンではない。その要因の一つがシート。
ドイツ・ケーニッヒ社製の本革フルバケットシートが、ドアを開けた瞬間、緊張感を醸し出していたが、現行R32では、本革ではあるものの視覚的にはごく普通。無論、サポート性は十二分だが、レカロ社と共同開発したオプションのフルバケットシート&4点式シートベルトを純正採用して欲しかった。
しかし、“別モノ”を主張するパーツを探し出すのはカンタンだ。本革巻きのD型ステアリングには「R」のエンブレムをさりげなく配し、ドアの内張りやダッシュボード、灰皿までもアルミ製トリムが奢られる。 

本革製スポーツシート

シートヒーター付き本革スポーツシートは、デザインは、GTIと酷似しているが、仕立て、ホールド性は申し分ない。ランバーサポートのみ電動だ。

リアシート

リアシートも本革が奢られる。レッグスペースも十分広く、ファミリカーとしても合格。センターにはエアコンの送風口を装備し後席も快適だ。

また、自称“日本一メーターに詳しい”と豪語する私だが、メーターはとても凝った造りになっている。数十個のLEDを使用した透過光式照明は、フォルクスワーゲンでは定番となったコバルトブルーの文字にレッドの指針をあえて採用せず、クリアホワイトの文字にイメージカラーのブルーの指針に変更。スケールを三段階に分け、視認性に優れた指針可変式を採用。DSGのレスポンスに追従するようにタコメーターの指針は、ステッピングモーターのような切れのあるアクションが見物だ。

専用設計300キロメーター

ドイツVDO社製メーターは、0-100キロを10キロ刻み、100-200キロを20キロ刻み、以下300キロまで30キロ刻みという指針可変式。

空調などのロジックは、“回す、押す”が基本。ブラインドタッチが容易で、操作性はピカイチ。外気温が40℃に迫る猛暑の中、渋滞にはまっても常に一定の冷風をキャビンに届けてくれた。

フォルクスワーゲンが掲げる「Rライン」というブランドは、メルセデスでいう「AMG」、BMWでは「M」という解釈が一番明確だろうが、世界のベンチマーク「ゴルフ」の場合、比類なき実用性は失われていない。さてこの4枚のドアを備えた「ゴルフ」のスペシャリティ。その気になる走りは、後編をお楽しみに。