クルマ通なら新型トヨタ ノア/ヴォクシーに搭載されている『バルブマチック』エンジンが激しく気になると思う。このエンジン、BMWで高い評価を得ている『バルブトロニック』のトヨタバージョンだと理解して頂ければよかろう。

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和製バルブトロニックが初登場。そのメリットとは?
乗り味には大満足。でも、肝心な燃費のほうは・・・・・・
ノア スポーツグレードのインテリア&エクステリア
ヴォクシー 標準グレードのインテリア&エクステリア

ライター紹介

自動車評論家

国沢 光宏 氏

歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。

和製バルブトロニックが初登場。そのメリットとは?

バルブトロニックは燃費とパワーを高い次元で両立出来ると言われており、次世代環境エンジンの主役と目されている。ちなみに日産もバルブトロニックの日産バージョンである『VVEL』(ブイベル)を今秋発売のスカイラインクーペに搭載してくる予定。
スペックを見ると普通タイプのエンジンと比べ最高出力が15馬力高く、それでいて10・15モード燃費で0.8km/L勝っている。なぜ燃費とパワーを両立出来るかと言えば、ポンピングロスと呼ばれるガソリンエンジンの弱点を大幅に減らせているからだ。
もう少し具体的に紹介しよう。ガソリンエンジンの場合、アクセルを戻すとエンジンブレーキが掛かる。大雑把に言うと、この時に発生する減速感こそポンピングロスそのものだと考えればいい。巡航時のガソリンエンジンは、常時エンジンブレーキ分のマイナスパワーを背負っているワケ。

ディーゼルエンジンのハードルは猛烈に高い

ディーゼルエンジンはポンピングロスが無いので、エンジンブレーキがほとんど利かない(だからこそ排気ブレーキを使う)。だったらポンピングロスの無いガソリンエンジンを作ればいいだろう、ということになるのだけれど、技術的なハードルは猛烈に高い。
相当複雑な可変システムをバルブ系に装着しなければならないからだ。とは言えガソリンエンジンで燃費を追求しようとするなら、絶対に克服しなければならない技術。そんなこんなで、日本のメーカーもやっとバルブマチックを実用化させてきたという寸法。

乗り味には大満足。でも、肝心な燃費のほうは・・・・・・

大いに期待しながら新型ノアのバルブマチック搭載車に試乗してみた。すると確かにパワフル!標準エンジンなら4千回転くらいを境にトルクは落ち始めるのに対し、バルブマチックは一段とトルクが出てくる。エンジン音も元気一杯。10%もパワーで上回るのだから当然か?

燃費の良さはどこに行ってしまったのか

気になる燃費は?車載の燃費計を使い、同じ区間でバルブマチックと、標準エンジン(車重が40kg軽いXグレード)の燃費を比べてみたら、意外にも変わらず。う〜ん。燃費の良さはどこに行ってしまったのだろうか? 期待していただけに空振りというイメージ。
試乗会場に居たトヨタのエンジニアに聞いてみた。すると「アップダウンの多いコースではバルブマチックのメリットを引き出し難いです。加えてバルブマチック搭載車と標準エンジンのXを比べると40kg重く、タイヤも太い。同じエンジンなら5%くらい悪くなります」。

燃費重視で選ぶなら『V』がおすすめ!

何のことはない。せっかくの環境エンジンを、エアロキットなどが付くスポーツグレードに搭載してしまっているのだ。ハイブリッドは燃費を極限まで追求したプリウスと組み合わせたから高く評価されたのであり、もしハリアーのような重いSUVだったら失敗したと思う。
もし燃費がいいという理由でバルブマチックを考えているなら、誰でも高速巡航燃費を稼げるクルーズコントロール標準装備の『V』を選ぶことをすすめておく。次はぜひとも軽くて燃費の良いモデルにバルブマチックを搭載して欲しい。

ノア スポーツグレードのインテリア&エクステリア

スポーツグレードのインテリアは黒を基調としたもの。Siにはパドルシフトも装備される。

先代のイメージを踏襲したエクステリア。デザインテーマは「親しみやすさ」だ。

スポーツグレードはボディ幅の関係で3ナンバーとなる。ホイールは16インチである。

ヴォクシー 標準グレードのインテリア&エクステリア

ヴォクシーのデザインテーマは「クール」。好みが分かれる部分もあるかもしれない。

標準グレードのタイヤは15インチ。パワースライドドアも幅広く設定される。

ノア/ヴォクシーのリア周りにおける違いはテールランプの形状、ガーニッシュの有無くらいだ。

標準グレードのインテリアカラーはアイボリーも選択可能。センターメーターは先代から継承された。

子供の乗せ降ろしに便利な「チャイルドケアモード」はオプション設定となる。

車内の移動に便利なウォークスルーモードは8人乗り仕様全車に標準装備。

バルブマチックのない標準エンジンでも動力性能は十分以上。

不安なロールもなく、ほぼ乗用車感覚での運転が可能。

視界も良好なので、女性が運転する場合でも苦にならないだろう。