V8 4リッターに相当するパワー
335iに搭載されるのは直列6気筒3リッター、ガソリン、直噴、ツイン・ターボ・エンジンだ。開発コード[N54]エンジンはBMWが「高精度ダイレクト・インジェクション・パラレル・ツイン・ターボ・エンジン」と呼ぶ新型である。ピエゾ素子を使ったインジェクターは一回の爆発でコントロールされた噴射を5回できるというすぐれものだ。最大トルクは400Nm。これは4リッターのV8エンジンに相当する。V8エンジンより40kgも軽くできているところがメリットだ。400Nmは1300〜5000rpmという低回転から高回転まで幅広く太いトルクを発揮できるところがターボらしい。
息の長い加速感
エンジンを掛けるとヴォンというターボらしからぬ勇ましいエキゾーストノートが響く。排気音が静かになってしまうターボエンジンだが、BMWはちゃんと音を創っているのだ。
走ってみるとアクセルペダルに対するレスポンスが良いので、昔のターボのイメージとは異なる。3気筒ずつに分けたエキゾーストマニフォールドそれぞれにレスポンスのいいタービンが付く。
ワインディングロードに出て1速か2速で走るようなヘアピンカーブで、アクセルオフから急激に踏み込んでみると多少ターボラグのようなものが感じられる。しかし実際にはアクセルペダルを踏み始めた瞬間から加速が始まっていて、そのあとから太いトルクがさらに加わるためにそれがラグのように感じるのだ。アウトバーンの走行ではこのラグ感はまったく感じない。
いずれにしても低回転から強烈なトルクを発揮するので、息の長い加速が楽しめる。このトルク感がとても気持ちのいいエンジンだ。
6ATがさらに進化
新しいZF製6速ATはシフト時間が約半分と速くなった。これによりパドルシフトの操作もより楽しくなった。ちゃんとブリッピングしてくれるから、速いだけでなく気持ちよくマニュアルモードを楽しめる。今回からDレンジのままでも臨時に(しばらくの間だけ)パドルによるマニュアル操作ができるようになった。
スポーツサスペンションを標準とするクーペだが、セダンより乗り心地がいいくらいだ。脚がしなやかに動いてくれる。これはランフラットタイヤの進化のお蔭らしい。
V8エンジンになると噂されるM3が登場するまで(1年か1年半?)、3シリーズのトップに君臨するのが335iクーペである。