高性能マシンを体感!BMW M6 試乗記

エレガント&セクシーなボディを軽快に走らせるM6

 最近のBMWは、どうも写真写りが悪い。M6も写真で見ると美人に見えないが、実車で見るとボディラインは曲面を多用し、とにかくセクシー。とくにトランク付近の造形はポルシェ911と同様に大好きで、乗る前から期待が大きくなる。

 まずは、大きいが剛性の高さを感じるドアを開け、スポーツシートに身体を滑り込ませると、自分の身体に合わせて作ったようにシートがピッタリと合う。硬くもなく、柔らかくもなく絶妙な座り心地。スタートスイッチを押すと、少し長めのクランキングの後にエンジンは始動し、6気筒でも8気筒でもない独特の力強い排気音が車庫内に響きわたる。始動直後の冷えた状態では、タコメーターのレッドゾーン域が通常より低回転まで下がり回転数を上げないように示している。

高性能マシンを体感!BMW M6 試乗記

 SMGのセレクターをDモード(ATモード)にして、エンジン及び駆動系が暖まるまで、住宅街をゆっくりと停止と発進を繰り返す。同じ5000ccの旧M5(E39)より、ひと回り太いトルクでM6を軽々と走らせる。ハンドルも軽く、あまりにも軽快に走るために車が小さく感じる。

どんな道でもコントロール性能抜群!!

 ダンパーは3段階で任意に選べるが、ソフトを選んでも硬さを感じるが引き締まった足で不快感はない。試しに3段階の一番硬いハードを選んだら、冬で痛めつけられた道路では車が飛び跳ねてしまうほど硬かった。ハードを選ぶのは路面が滑らかなサーキットだけだろう。そんな悪い路面でもフロント255/40ZR19、リヤ285/35ZR19というファットなタイヤを履いても、軽くハンドルに手を添えているだけで車は何事も無かったように直進し、しかもタイヤの重さを感じないサスペンションと、ボディ剛性の高さはMの証だ。

静かな室内空間とは裏腹に強烈なG!

 高速道路に入り、ETCゲートを通過しマニュアルモードを選択。夜間はLEDで証明されるパドルシフトを使って7000rpmまで回す(レッドゾーンは8000rpmから)。エンジン音は高まるが、室内は極めて静か。排気音も遠くから聞こえるだけで極めて快適な空間だが強烈なGが襲ってくる。しかもパワースイッチはP400モード(400馬力)だが、思わず「怖い」と独り言を言ってしまった。そんな怖さも日本で味わえるのは、わずかな瞬間のみ。あっという間に法定速度に達してしまう。

 100km/hでの巡航スピードは、感覚的には60km/hで走っているかのように錯覚をしてしまうほど車は安定し、CDから流れる音楽をゆっくり楽しみながらクルージングをしていると気持ちはとても癒されてくる。不思議な事は、高性能車なのに、ゆっくり走っても運転の楽しさが溢れている。

贅沢の粋を尽くしたM6・・・でも後席がやや狭い

 低速では3シリーズより軽かったハンドルは80km/hから重くなって、さらに100km/hを超えるとしっかりした重さに変わり、高速での安定感が増す。サーキットでも走ってみたが、通常感じる超高速域での空気の壁はポルシェ同様に感じない。また200km/h以上でも室内は静かでV10エンジンの音さえ楽しむ事は出来なかった。シートのサイドサポートと剛性が高く、サーキットでもバケットシートの必要性を感じない。

高性能マシンを体感!BMW M6 試乗記

 すべてがお洒落で、余裕があるM6は誰でも楽しめる豪華なパーソナルクーペ。スーパーの買い物から、サーキットまで、いつでも何処でも楽しめるクルマ。唯一の欠点は後席が狭く、大人は短時間しか乗れない。大人2以上を乗せる機会が多い人はM5を選べば良い事であるが、優雅なボディと上質なシートに座って507馬力を独り占めする贅沢は何事にも代えられない。

代表グレード
M6
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
4,870mm×1,855mm×1,370mm
車両重量[kg]
1,820kg
総排気量[cc]
4,999cc
最高出力[ps(kw)/rpm]
507ps(373kw)/7,750rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
53.0kg-m(520N・m)/6,100rpm
ミッション
7速SMG Drivelogic
エンジン種類
V型10気筒DOHC
ホイールベース
2,780mm