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スムーズさと静粛性ならエリシオンが一歩以上リードだ!by片岡英明
エスティマとアルファードならゆとりに優れるアルファードだ!

ライター紹介

モータージャーナリスト

片岡 英明 氏

学校の先生から自動車雑誌編集者経て、モータージャーナリストになったという異色の経歴を持つ。元教師ということもあり、分かりやすい評論に定評がある。さらに、クルマの細部まで見逃さない観察力はハンパではなく、徹底的に調べ上げてしまうほど。最新のクルマから、ヒストリックカーまで幅広い知識をもつ。

スムーズさと静粛性ならエリシオンが一歩以上リードだ!by片岡英明

 プレステージミニバンのブームを築いた立役者が日産のエルグランドである。V型6気筒エンジンだけでシリーズを構成し、4気筒は用意していない。12月に加わった2.5リッターモデルもV6エンジンだ。これに対しライバルはV6と4気筒のデュアル戦略をとる。ホンダのエリシオンはオデッセイから譲り受けた2.4リッターの4気筒エンジンを積むモデルを設定した。

 エルグランドは排気量が100cc大きいからパワー、トルクともにエリシオンを上回っている。だが、実際にはエリシオンを引き離すほどの実力差はない。その理由は、エルグランドのほうが重量ボディだからだ。両車とも多人数乗車、荷物満載、登坂路といった条件でなければストレスのたまらない走りを楽しむことができる。5速ATもいい仕上がりだ。

 差がつくのはスムースさと静粛性である。上級の3.5リッターモデルと同じようにV6エンジンならではの上質なパワーフィーリングを身につけ、同乗者も気持ちよくロングドライブを楽しむことが可能だ。エリシオンの4気筒i−VTECエンジンも滑らかに回るが、V6エンジンには及ばない。ただし、エルグランドより燃費はいいし、高回転の伸びもシャープだ。

 エリシオンが優位に立つのはフットワークである。エルグランドより背は10cm以上低いし、トレッドも広いから、地に足が着いたコーナリングを身につけた。4気筒エンジンで鼻先が軽いから身のこなしは軽やかだし、操舵フィールもいい。ワインディングロードでも一体感のあるコーナリングを見せ、乗り心地も上質だ。死角も少なく、ビギナーにも扱いやすい。剛性を高めたエルグランドも足がしなやかに動くようになった。コントロール領域が今までより広がっているが、得意とするステージは高速道路のクルージングだ。

 キャビンはエルグランドがちょっと広い。サードシートでも満足できる広さを確保している。ただし、セカンドシートに3人掛けすると、中央席は座り心地が悪い。スライドドアのガラスが昇降しないのも弱点だ。シートアレンジのしやすさでもエリシオンに一歩譲った。

エスティマとアルファードならゆとりに優れるアルファードだ!

エスティマとアルファードはプラットフォームやエンジンなど、メカニズムの多くを共用する兄弟ミニバンである。どちらも両側にスライドドアを採用し、乗車定員は7人と8人だ。ただし、性格は違う。エスティマはドライバーと同乗者の両方を意識したLクラスの乗用型ミニバン、アルファードは同乗者を最優先した容積追求型のミニバンだ。ファミリーカーの新しい形を提案したのがエスティマ、1BOXを進化させた正統派がアルファードといえるだろう。ボディサイズは、それほど差がない。だが、アルファードのほうがひと回り大きく見える。

 アルファードはどの席に座っても余裕があり、開放的だ。セカンドシートは足元、頭上空間ともに飛び抜けて広いし、サードシートも余裕で3人がけができる。セカンドシートを前にセットすると、足を投げ出して座ることが可能だ。エスティマも不満のない広さを確保しているが、アルファードと比べると劣勢は否めない。これはラゲッジルームの広さと使い勝手にも言えることだ。

 走りはエスティマのほうがスポーティで、運転するのが楽しい。03年5月のマイナーチェンジでサスペンションの見直しを図り、シャキッとした走りを実現した。だが、基本設計の新しいアルファードと比べると、低速域での乗り心地に粗さを感じる。ボディのしっかり感や2列目、3列目での座り心地など、多くの項目でアルファードが一歩リードだ。

 また、エスティマは登場から6年目に突入した。長く、気分よく乗りたいならアルファードがいい。優れたパッケージング、トータル性能の高い走り、押しの強さ、どれをとってもアルファードは魅力的だ。リセールバリューも高い。今ならおすすめは特別仕様車のAXトレゾア・アルカンターラバージョンである。300万円を切る価格で、オーディオや高級人工皮革のシート、アルミホイールなど、充実した装備内容だ。