ゴルフとアストラ

伝統と質感を考えればゴルフだ!

 ドイツ本国でゴルフとアストラはライバル車として激しい販売合戦を繰り広げている。日本では歴史的な経緯や販売網の違いなどもあってゴルフがアストラに大差を付けている状況だが、クルマそのものの性能はアストラもかなり頑張っていい仕上がりになった。

 現行アストラは、存在感のあるデザインを始め、しっかりと作り込まれたボディ、さらには電子制御サスペンションも含めた高いシャシー性能など、さまざまな面で大きく進化したモデルとして注目される。従来のアストラに比べたら、格段に良くなっているのは間違いないだろう。

 200psのターボ仕様のエンジンを搭載したアストラ2.0ターボスポーツは、硬めにチューンされた足回りや17インチタイヤなどによって安定性の高い走りを示す。6速MTだけの割り切った設定だが、豪快な走りを楽しむにはMTが適している。

 これに対してゴルフは相変わらずの堅実な仕上がりを見せる。今回試乗したモデルはターボ仕様のパワフルなエンジンと豪華装備を組み合わせたGTXで、運転席に乗り込むとゴルフとは思えないくらいにラグジュアリーな雰囲気が広がっている。ウッドと本革を組み合わせたステアリングなど、自然素材を使ったクォリティの高さはゴルフならでは。この点では追い上げたアストラもまたゴルフに先に行かれた感じかも知れない。

 2.0リッターターボのエンジンは、パワーは両車とも同じ200psだが、トルクではゴルフのほうがやや上回るほか、2ペダルで運転できるマニュアル車であるDSGを採用することで、ドライバビリティの面でもゴルフが優位に立つ。しっかりしたボディに支えられたスムーズで軽快かつ快適な走りの良さがゴルフGTXの魅力である。

 価格は豪華装備を備えるゴルフGTXのほうが30万円ほど高いので、どちらを選ぶかとなると判断が難しいが、単純にクルマだけの魅力を重視するならゴルフGTXのほうが優位に立つ。逆に電子制御サスペンションなどの最新技術が盛り込まれていることや価格の安さも含めて総合的に判断するとアストラも有力な選択肢として浮上する。そんな関係だと思う。

達人プロフィール: 松下 宏
職業:自動車評論家
中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても、その信念は変わらない。そのため、大本命といわれている車種さえ外して...