スバルモータースポーツプレスミーティング2005
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スバルモータースポーツプレスミーティング2005

晴海に集結した六連星のすごいヤツ・・・その2

 FIA(国際自動車連盟)が認定する自動車競技の世界選手権はF1とWRCの2種類しかない。F1とは皆さんご存じの通りオンロードレースの最高峰。オープンホイールのフォーミュラーマシンで競い合う競技である。少し前ならアイルトン・セナや中島悟、今ならミハェル・シューマッハや佐藤琢磨などでおなじみのレース。WRCとは世界ラリー選手権の略称。街中を普通に走っているクルマをベースに、これまた普通の一般道をメインのコースとして速さを競いあう競技だ。

 F1もWRCも、どちらも世界中で開催されている。日本ではF1がおなじみの鈴鹿サーキットで毎年秋に開催され、WRCも初めて昨年、北海道で開催された。

 初開催となったWRC第11戦ラリージャパン2004は、日本を母国とするスバルが史上最速のノルウェー人ペター・ソルベルグのドライブするインプレッサWRCで優勝を勝ち取った。今年も9月30日から10月2日にかけて北海道でWRC第13戦ラリージャパンが開催される。

 これに先立ち7月1日、スバルは東京晴海で【SUBARU MOTORSPORT PRESS MEETING】を開催した。

一堂に会した歴代の勇者たち

スバルモータースポーツプレスミーティング2005

 このイベントの目玉の1つとしてスバルが誇るラリーカーの展示が行われたのである。最近ビッグマイナーチェンジを受け06年モデルに進化したインプレッサWRX STIスペックCをベースにしたモデルは当然のこと、歴代の勇者たちが一堂に会したのである。

 まずは初代レガシィRSをベースとしたラリーマシン。93年にWRCに投入されたモデルでコリン・マクレーがドライブし、スバルに初の優勝をもたらしたマシンなのである。いわば初代チャンピオン。濃紺のボディカラーにイエローで555のカラーリングが入った最初のモデルであったりもするのである。

 もちろん、スバルが誇るリーサルウェポン、インプレッサのラリーマシンも展示されていた。当然、そこには最後のグループAマシンで総合優勝を96年に飾ったインプレッサWRXも含まれている。名実共にスバルのエースとなったコリン・マクレー黄金時代の代名詞となった初代インプレッサが、土砂降りの雨に負けないオーラを放っていた。

 前代未聞史上初の5年連続WRCマニュファクチャーチャンピオンをねらっていた98年、最後の最後で優勝を逃してしまった悲劇の名車スバルインプレッサ555はそのときのことを悔しむかのように雨に濡れていた。最小限の改造しか認められていない、ある意味WRCより過酷ともいえるPCWRCに参戦している新井選手のインプレッサも展示されていた。03年、04年と総合2位につけ、05年はぶっちぎりで総合1位を邁進中の新井選手がドライブする05年シーズン用のマシン(当然ホンモノ)がその姿をみんなに見せつけていたのだ。

 いやはや・・・なんと豪華な。現役バリバリどころか、これから始まるラリージャパンにそのままの姿で出場する新井選手のマシンである。それが、間近で見れたのであるから、ありがたい。

 そして、はやく北海道の大地を走り抜ける濃紺のインプレッサを見たいモノだ。今年のラリージャパンはWRCとPCWRCの同時開催。新井選手の本気の走りも、スバルワールドラリーチームの爆走も一緒に見ることができるのである。

 そうなのである。今年のスバルは本気なのである。昨年はシトロエンを駆るセバスチャン・ローブがドライバーズチャンピオンに輝いた。今年はエースであるペター・ソルベルグを、もう一度、頂点に立たせようとチーム一丸となっているのである。無論、スバルはマニュファクチャーチャンピオンもねらっているのであるペターの脇を固めるドライバーは元F1ドライバーという超異色の経歴を持つステファン・サラザンと帝王トミ・マキネンの秘蔵っ子クリス・アトキンソンなのであるから。

サーキットの上もインプレッサの主戦場だ!

スバルモータースポーツプレスミーティング2005

 さすがにラリーのスバルである。ヘヴィーウェットの路面にはラリーカーがよく似合うのだ。

 しかし、【SUBARU MOTORSPORT PRESS MEETING】に介したレーシングマシンはグラベルやターマックで戦うラリーマシンだけではなかったのである。サーキットを主戦場とするスーパー耐久のマシンや、GTマシンまでもが集まったのだ。なんとそれも、先日発表になったばかり、ビッグマイナーをおこない06年モデルに進化したインプレッサをベースとして。

 イエローのボディカラーが鮮やかなインプレッサはスーパー耐久に参戦するFUJITSUBOインプレッサ。ドライブするのは吉田寿博選手と清水和夫選手。スーパー耐久、略してS耐は市販車に近いマシンで最長24時間の長丁場を走り抜く、ラリーとは違った意味で超過酷なレースなのだ。当然、クルマ本来の出来が何よりも重要視されるのであるが、そこはシンメトリカルAWDを採用するインプレッサ。世界屈指の重量バランスとWRCで鍛えに鍛え抜かれた基本性能を有しているので問題なし。今年もフェアレディZやBMW、ポルシェといった強敵を向こうに回して善戦を繰り広げているのである。

 そしてスーパーGTに参戦しているのがブラックボディのクスコスバルADVANインプレッサ(ドライバーは小林且雄選手/谷川達也選手)。全日本GT選手権からスーパーGTに進化したこのカテゴリーは、現在日本でもっとも観客動員が多いレースカテゴリーなのである。何しろ、ほとんどアルティメッド、総合格闘技状態。フェアレディZや、NSXといった国産スポーツカーはもちろん、ポルシェに、フェラーリ、ランボルギーニまでがイッセイノセでレースを始めてしまうのだから迫力満点。さらに、改造範囲が思いっきり広いのがおもしろい。なんたって、ターボのNSXや、V8を積んだスープラ、FRのGT-Rなんて絶対に市販車ではあり得ないマシンがバトルを繰り広げていたのだから。そんなワケで、このカテゴリーは世界中でも大人気。マレーシア(セパン)やアメリカ(カリフォルニアスピードウェイ)までがレースカレンダーに組み込まれたため、全日本から世界レベルへと格上げとなりスーパーGTとなったのである。

 これに参戦するインプレッサは、なんとFR! インプレッサのアイデンティティともいえるシンメトリカルAWDを捨てて、ターボエンジンのNSXやV8エンジンのスープラに向かっていっているのである。AWDをやめるなんてと聞くと「無茶な・・・」と感じてしまうのだが、そうではない。超低重心を実現するスバル自慢の水平対向エンジンをフロントに搭載しているのだ。これでFR。ビックリするほどのコーナリングマシンとしてそのパワーを発揮しているのである。

オンでもオフでも、レースフィールドでも街乗りでも、最高なのがインプレッサだ

 まさに、恐るべしなインプレッサ。徹底的にレースフィールドで技術を磨き上げ、それを市販車へかならずフィードバックするスバル。過去にはエンジンサプライヤーとしてF1にも参戦したことのあるメーカーである。ヴィヴィオという軽自動車でサファリラリーに参戦し、クラス優勝をしてしまったことのある自動車会社である。

 その実力派侮れない。

 だって、ランエボやスカイラインGT-R、シビックタイプRなどはベースとなるクルマ(ランサーセダンや、スカイラインハードトップ、普通のシビック)があって、そのスポーツモデルとして進化し、誕生したクルマである。インプレッサは真逆なのだ。WRCで勝てる要素を洗い出し、そこからボディ剛性や足回りを作り出す。それが市販車として開発されインプレッサWRX STIとなり、そこにATや快適装備が追加されインプレッサWRXになり、ターボやスポーティーな足回りのセッティングが解除され素のインプレッサになるという。

 WRC直系スポーツワゴンという宣伝の謳い文句にうそはない。そういうことなのである。

(写真&リポート 221616.com編集部 神田卓哉)