過労運転とは?定義や基準、罰則、居眠り運転との違い

過労運転とは?定義や基準、罰則、居眠り運転との違い

過労運転とは

道路交通法では「過労運転」について、以下のように記しています。

道路交通法第66条(過労運転等の禁止)

何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。

出典:道路交通法

ここでのポイントは「正常な運転ができないおそれがある状態」という部分。

つまり過労運転とは「疲労など、何らかの理由で正常運転ができない可能性がある」状態で運転することを指します。

過労運転の原因

「何らかの理由で正常運転ができない」原因としては、以下のようなものがあります。

  • 過労
  • 病気
  • 薬物
  • 精神的要因など

道路交通法に「この病気なら過労運転の対象」といった基準はありません。

しかし明確な基準がないということは、睡眠の質や眠気、集中力に関わる事柄ならば、どんな事でも過労運転の原因になり得るということです。長時間労働、睡眠時無呼吸症候群などの病気、眠気を引き起こす抗ヒスタミン剤の服用などには充分気をつけましょう。

過労運転の違反点数と罰則

過労運転の違反点数、行政処分と刑事処分は以下の通りです。

違反点数 25点
行政処分 免許取り消し(欠格期間2年)
刑事処分 3年以下の懲役または50万円以下の罰金

※出典:警視庁「交通違反の違反点数一覧表」警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」道路交通法

過労運転とみなされた場合は、たとえ事故を起こしていなくても免許取り消しになります。軽度の酒気帯び運転の違反点数が13点なので、過労運転は軽度の飲酒運転以上に罰則が厳しいのです。

業務上の過労運転は管理者にも責任がある

トラックドライバーなど「運転」を仕事としている人の場合、過労運転は本人だけでなく、上司や経営者など管理者も責任を問われます。例えばトラックなどの自動車運送事業者に対しては、以下の例のような基準が定められています。(※国土交通省HP

  • トラック運転手の拘束時間は1か月あたり293時間を超えない
  • 休息時間は1日継続8時間以上など

また道路交通法でも「自動車の使用者(自動車の運行を直接管理する地位にある者を含む)は過労運転下命や容認をしてはいけない」という内容が明記されています。これに違反した場合、管理者は3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。(※道路交通法

居眠り運転との違い

道路交通法に「居眠り運転」という違反はありません。いわゆる「居眠り運転」は多くの場合、道路交通法第70条「安全運転義務」違反として扱われます。

道路交通法第70条(安全運転の義務)

車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

出典:道路交通法

ただし「居眠り運転」もケースによって過労運転と見なされることがあります。2つを比べると、以下のような違いがあります。

  安全運転義務違反 過労運転
違反点数 2点 25点
行政処分

反則金9,000円

(※普通自動車の場合)

免許取り消し(欠格期間2年)

罰則

3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金

(※反則金を払わなかった場合)

3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

※出典:警視庁「交通違反の違反点数一覧表」警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」道路交通法

安全運転義務違反と過労運転の分かれ目は「正常な運転ができないおそれ」があったと見なされるかどうかです。同じ居眠りであっても、長時間労働による睡眠不足など「正常に運転できないおそれ」があったと見なされた場合は過労運転として判断される可能性があります。

既にご紹介した通り「正常に運転できないおそれ」の基準は明確に決まっていません。しかし例えば事業者の場合、連続4時間以上の運転は控えるように指導されています。そのため個人でも、長時間の連続運転は避けるようにしましょう。(※国土交通省HP

以下のページでは居眠り運転について詳しく解説しているので、気になる人はこちらもチェックしてみてください。

事故予防のためにできること

過労運転は、人命を奪う可能性もある危険な運転です。「ハッとした時」には時すでに遅しとならないためにも、事故を防ぎ被害を軽減するための対策を紹介します。

運転にあたり注意すべきポイント

  • 夜間に6~7時間の継続した睡眠をとる
  • 寝酒や深酒をしない
  • 長時間の運転後は充分な休みをとる
  • 薬を飲んだらできるだけ運転しない
  • 体調が悪い時や気持ちが不安定な時は運転しない

運転時には「疲労がない状態」を心がけましょう。睡眠不足が危険なのはいうまでもないですが、連続運転も疲労が溜まりやすいです。一般的に、2時間に1回程度は休憩すると良いといわれています。

また薬の服用後や心身不安定な時も危険です。花粉症の薬に多い抗ヒスタミン剤など、眠気を催す薬を飲んだ後は特に注意しましょう。

先進安全装備を搭載したクルマも有効

調子が良くない時には運転をしないのが一番ですが、自分ではちょっとした不調に気付けないことも多いです。だからこそ万が一の時に備えて、先進安全装備を搭載したクルマを選ぶことも一つの選択肢です。例えば以下のような装備があれば心強いです。

  内容
衝突被害軽減ブレーキ

いわゆる自動ブレーキシステム。
衝突の危険が高まると警告音を発する。回避行動がとられない場合は自動ブレーキが発動する。

車間距離制御装置 システムがアクセル操作とブレーキ操作を行う
車線逸脱警報装置 車線をはみ出しそうになると警告音を発する

最近は先進安全装備を搭載したクルマが増えており、新車だけでなく中古車でも安全性能の高いクルマが選べるようになりました。

ガリバーではメーカー横断でクルマを評価し、安全なクルマをランキング形式で紹介していますので、クルマ選びの参考にしてください。

万が一に備えて!事故や罰則に関連する記事

noricoでは交通ルールや事故に関する記事も多く掲載しています。「もしもの時」に少しでも落ち着いて対処できるよう、ぜひ以下の記事も併せてお読みください。

Supervised by norico編集長 村田創

norico編集長_村田創

中古車のガリバーに勤務して20年以上のベテランが車の知識をわかりやすく解説します。車のことは、多くのメーカーを横断して取り扱うガリバーにぜひ聞いてください。「車ってたのしい!」を感じてほしいと思っています!