2022年2月、BMW i4が発売された。EVシリーズの1つだ。SUVモデルのiX3と異なる4ドアクーペの発売によって、EV選びの選択の幅が広がるだろう。今回はi4を試乗して感じた性能について解説する。
- EVに積極的なBMW
- 4シリーズグランクーペとの大きな違いは、カーブド・ディスプレイの有無
- 回生ブレーキの強弱を自在にコントロールするアダプティブモード
- 内燃機関BMW車を上回る操縦安定性と静粛性
- i4の航続距離は604km!
- i4は一般道より高速道路で実電費が良い謎のEV?
- BMW i4価格・スペック
EVに積極的なBMW
BMWはEV(電気自動車)に対して積極的なメーカーのひとつだ。まだEVが非常に少なかった2014年に、EV専用車であるi3を日本マーケットに投入している。現在では、i3に加えてiX、i4、i7、iX3などのモデルが投入されている。
BMWのEVには、大きく分けて2つのパターンが存在する。EV専用に開発されたモデルと、既存の内燃機関車をベースとしたモデルだ。i3とiXはEV専用車、他のモデルは内燃機関車をベースにEV化したモデルになる。
今回試乗したのは、4シリーズグランクーペをベースとしてEV化されたBMW i4である。BMW i4は2グレード設定だ。eDrive40は後輪駆動で340ps&430Nmを発揮する。 M50は前後にモーターを設置しAWD化した。M50の「M」はハイパフォーマンス重視の仕様を示し、システム出力は驚愕の544ps&795Nmだ。0-100km/hの加速は、わずか3.9秒ともはやスーパーカー並みだ。
4シリーズグランクーペとの大きな違いは、カーブド・ディスプレイの有無
今回は、i4の主力グレードとなるeDrive40 M sportで約500km試乗した。
BMW i4 eDrive40 M sport(以下、i4)の外観は、ほぼ4シリーズグランクーペと同じである。異なるのはバンパーの形状と、マフラーが無いくらいだ。M sportらしく、スポーティなエアロパーツ類が装備されている。
i4はEVなので、エンジンが無い。だが4シリーズグランクーペと同じ個性的なキドニーグリルが装備されている。ラジエーターが無いので、キドニーグリルには穴が開いていないのも特徴のひとつである。
最も異なるパーツが、インパネ部分だ。i4にはカーブド・ディスプレイが装備され、とても未来感ある仕上がりになった。これはEV専用車であるiXと同じ12.3インチのインパネパネルと14.9インチのコントロールディスプレイが一体化されたものだ。ドライバーの視認性をよくするために、ディスプレイがやや湾曲している。最近では大きなディスプレイを使用するEVも多いが、湾曲しているタイプは珍しい。
上記の点以外は、「いつものBMW車」のデザインだ。
i4の全高は4シリーズグランクーペより5mm高い1,455mm、地上高は15mm低く125mmとなっている。これは、フロアに駆動用リチウムイオン電池を搭載したことによるものだ。
最低地上高125mmとやや低い。雪道や大きな段差には、少し気を付けたほうがよい。
回生ブレーキの強弱を自在にコントロールするアダプティブモード
最初の試走は、渋滞の多い市街地で行った。アクセルを軽く踏み込むと、i4は瞬時に反応しスルスルと加速していく。内燃機関車だとわずかな間があるが、EVにはそれが無く、アクセル操作に対するレスポンスの良さは抜群だ。i4の車重は2,080kgと重いが、その重さを感じさせない。
i4には、回生ブレーキをコントロールする機能がある。お勧めの設定はアダプティブだ。前方の車両を認識し、自動で回生ブレーキを調整し車間距離を一定に保ちながら減速する。先行車がいれば、アクセルオフにするだけで停止直前まで自動減速してくれる。最後は、自らブレーキを踏み停止させる必要があるものの、ドライバーの疲労軽減に大きく貢献してくれる。とくに、ストップ&ゴーが多い市街地では便利な機能だ。
シフトレバーをBレンジにすると、1ペダルドライブが可能になる。停止までアクセル操作ひとつで走ることができる。この機能もブレーキを踏む回数が大幅に激減するので、疲労軽減に効果がある。ただ、アクセル操作がラフな人だと、車体がギクシャクして不快になるため、少し慣れが必要だ。
内燃機関BMW車を上回る操縦安定性と静粛性
高速道路では、余裕のクルージングが楽しめた。340ps&430Nmもの大トルクの恩恵で、わずかなアクセル開度でも一気に速度が上昇していく。スムースでほぼ無音と静粛性が高いので、会話も弾む。
乗り心地は硬めだ。不快と感じるレベルではないが、大きな凹凸があるとそれなりに衝撃が伝わってくる。スポーツ仕様のM sportなので、納得できるレベルだ。
やや硬めのサスペンションは、山道でその真価を発揮した。驚いたのは、フロントの軽さだ。エンジンが無いので、とにかくフロントが軽い。軽快にクルマの向きが変わる。車重が2,080kgもあるモデルとは思えないほどだ。
より低重心化されているのも利点だ。大きく重いリチウムイオンバッテリーが床下に搭載されているため、車体はビタっと安定する。硬めのサスペンションも加わり、車体はほとんどロールすることなくカーブを駆け抜けていく。この操縦安定性の高さは、内燃機関を上回っている。
優れたアクセルレスポンスも魅力的である。340ps&430Nmの出力が後輪に加わり、車体を瞬時に押し出す。アクセル操作に対する反応もリニアで極めて繊細だ。アクセル操作次第で、車体の向きをいかようにもコントロールできるのは、内燃機関の後輪駆動BMW車と同じテイストだ。EVであってもBMWらしい走りは不変だった。
i4の航続距離は604km!
卓越した走行性能を誇るBMW i4。気になるのは、航続距離や電費だろう。i4には、83.9kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーが搭載されている。そのため、航続距離は、604km(WLTCモード)と長い。
「EVは航続距離が短い」と感じている人が多いが、個人的には400km走れば十分だと思っている。高速道路で一気に長い距離を走るときでも、休憩なしに400km以上を走ることはほとんどないからだ。トイレに行く、食事をする、そんな時間を使い同時に急速充電しておけば、1日に600km程度は十分に走ることができる。
i4の航続距離にはまったく不満を感じなかった。
i4は一般道より高速道路で実電費が良い謎のEV?
気になるのは、実際の電費だ。カタログ値の数値がよくても実電費が悪ければ、実航続距離も短くなる。そこで、i4の実電費もチェックした。
車両の設定は、ECO PROモードでエアコンは24°とした。まず、渋滞もある都心部を約90km走行する。都心の道路なので、最も速くて60km/h、平均速度は24km/h程度だった。この時の実電費は約5.9km/kWhだ。i4の搭載バッテリー容量は83.9kWhなので、街中だけであれば約495kmという航続距離になる。カタログ値の約82%となり、まずまずの実電費といえる。
続いて高速道路だ。関越道、上信越道を約400km走行した。制限速度上限に速度設定し約300kmをクルーズコントロールで走行する。平均速度は約90km/hだ。この時の実電費は、驚愕の約7.2km/kWhを記録。なんと、市街地での実電費を大幅に超えたのだ。
一般的にEVは速度が遅い方が、消費電力が少なく電費がよい傾向にある。以前、日産リーフe+をテストした際、高速道路での実電費は約6.5km/kWh、一般道では約7.1km/kWhの実電費だった。
走行性能だけでなく、実電費にも優れたEVがi4
なぜ、i4は高速道路での実電費がいいのか? その答えのひとつが、コースティングというニュートラルで滑走するような状態だった。
i4はアクセルを離すと、とにかくコースティングするのだ。多くのEVは、アクセルを離すと弱い回生ブレーキがかかり徐々に減速する。ガソリン車などのエンジンブレーキのようなものだ。対するi4はコースティングで電費を稼いでいた。まさに、高速移動が多い欧州のEVらしい。
試しに、高速道路の下り坂で後方に車両がいない状態を確認して、アクセルを離しコースティング状態を積極的に使い走行すると、電費はグイグイと上昇した。この特性を活かし工夫しながら走行すると、実電費はアップしていく。最近は、こうしたコースティング機能を使う内燃機関車も多くなっている。
さて、i4が記録した約7.2km/kWhという実電費で航続距離を計算すると、なんと約604kmとなった。カタログ値の航続距離604kmと同等の数値である。BMW i4は、走りの楽しさだけでなく、実電費の良さも魅力的なEVだ。
BMW i4価格・スペック
BMW i4価格
i4 eDrive40 M Sport |
7,910,000円 |
i4 M50 |
10,810,000円 |
BMW i4電費、ボディサイズなどスペック
代表車種 | i4 eDrive40 M Sport |
---|---|
ボディサイズ | 全長4,785mm×全幅1,850mm×全高1,455mm |
ホイールベース | 2,855mm |
最低地上高 | 125mm |
車両重量 | 2,080kg |
サスペンション形式 前/後 | ストラット/マルチリンク |
モーター最高出力 | 340PS(250kW)/8000rpm |
モーター最大トルク | 430N・m(43.8kgf・m)/0-5000rpm |
駆動方式 | 後輪駆動 |
タイヤ前/後 | F:245/45R18 R:255/45R18 |
一充電最大走行可能距離 | 604km(WLTCモード) |
バッテリー種類 | リチウムイオン |
総電力量 | 83.9kWh |