ラジエーターからの水漏れを放置していると最悪の場合、オーバーヒートからのエンジンの損傷につながるおそれがあるので、早急な修理が必要なトラブルのひとつです。
なぜラジエーターからの水漏れが起きてしまうのか?トラブルに見舞われた場合には、どうすれば良いのかを現役の整備士が解説します。
ラジエーターの水漏れとは
ラジエーターの水漏れは、ラジエーターからエンジン(EV車の場合はモーター)の冷却水が漏れている状態を指します。
エンジンの冷却水漏れのトラブルは、さまざまな場所からの漏れが考えられますが、そのなかでもラジエーターは主要な原因箇所のひとつです。
漏れの度合いが大きいことが多く、漏れはじめたときには、早急な修理が必要になることが多いです。
ラジエーターの水漏れの原因
ラジエーターからの水漏れの原因は、経年劣化が主な原因ですが、カシメ不良などはまれに初期不良も考えられます。以下が主な水漏れが発生する箇所です。
- ラジエータータンクの割れ、ひび
- タンクとコアの境目部分のカシメ不良、劣化
- ウォーターホースの挿さるパイプ部分の割れ、ひび
- ラジエーターコアに穴が開く
また、ラジエターのコア(金属部分)は冷却水を冷やすために走行風が当たる場所です。そのため、走行中の飛び石が原因で損傷して穴が開くことがありますし、経年劣化(錆害)で腐食して穴が開くこともあります。
コアを左右、または上下で挟み込む形でついているタンクには樹脂が使われていることが多く、経年劣化は避けられません。
すべての樹脂部品が該当するわけではありませんが、新品時に黒っぽい色をしているものは、経年劣化が進むと茶褐色に変化していきます。
これを目安に水漏れトラブルが発生する前に、ラジエーターを交換するのも良いでしょう。
ラジエーターからの水漏れを確認する方法
ラジエーターからの水漏れを最初に疑うことになるのは、以下の3つのパターンのいずれかでしょう。
- 冷却水の臭いに気付く
- 道路上の冷却水の漏れ跡を見つける
- 走行中にオーバーヒートを起こす
車の周りで嗅ぎ慣れない甘い臭いがしたり、車の下の道路上にピンク(赤)や緑、青のような着色された水漏れ跡がある場合には、ラジエーターからの水漏れの可能性があります。甘い臭いはエンジン冷却水特有のものです。
走行中に酷い水漏れが起きていればオーバーヒートする可能性があります。
メーター内の水温計が高温を示すか、水温計がない車は高水温の警告灯が点灯したり、ボンネット内部から煙が出ることがあります。
また、エアコンを外気導入していると漏れたエンジン冷却水の甘い臭いが室内に入ってくることもあります。
安全な場所でボンネットを開けることができる場合には、エンジンルーム内を目視のみで確認します。ラジエーターは車両前方、フロントバンパーのすぐ裏にあります。
ラジエーターからの水漏れを確認するときの注意点
エンジンルーム内を確認するとき、危険なのでラジエターキャップは絶対に開けないようにしてください。圧力差で冷却水が噴き出して、大ヤケドする可能性があります。
また、ラジエーター用のクーリングファン付近に手を近づけたり、たとえば首に巻いたマフラーが垂れ下がるといったことは避けてください。
エンジンを止めていてもクーリングファンは回転することがあるので、巻き込まれると大変危険です。
基本的に目視確認のみにとどめて、不容易にてエンジンルーム内の部品に手を触れないようにしてください。
ラジエーターの水漏れが生じた際の対処法
ラジエーターの水漏れが発覚したとき慌てないためにも、どのように対応するべきかを解説します。
応急処置として漏れ防止剤
カー用品店や、一部のホームセンターなどでエンジン冷却水漏れ防止剤が販売されています。
しかし、水漏れを修理をして今後もまだまだ車に乗り続けたい場合は、漏れ防止剤を使うことはあまりおすすめしません。
防止剤の成分が、思いもよらないところで固まってしまい、ラジエーター含めた冷却水通路内で詰まりを発生させてしまう可能性があるからです。
しかも、一度詰まってしまうと除去が困難な場合もあります。(漏れ防止剤の使用後、修理時に冷却水を抜くときに一緒に排出されるので、その後の修理が速やかにできることを謳った商品もあるようです)
一方で、修理はせずにこれを機に車を乗り換えたいが、次の車が見つかるまでの間とりあえず動けばそれでいいような状況であれば、試してみる価値はあります。
ロードサービスへの連絡
ラジエーターからの水漏れを発見したときの最善な対処法は、ロードサービスに連絡することです。
JAFや任意の自動車保険に付帯しているロードサービスを利用して、初期段階の簡単な診断の実施と、必要に応じてレッカーサービスで整備工場に車を運んでもらいます。
サービス内容や契約内容によっては無料で実施してもらえます。
ラジエーターから水漏れが発生したまま走行することは、エンジンを損傷させてしまうリスクを伴うのはもちろんのこと、道路を汚損させることも考えられるので無理に自走することは避けましょう。
ロードサービス利用時の注意点
ロードサービスのなかには高額請求を行う悪質なロードサービスもあり、大きな社会問題にもなっています。
トラブルを避けるためにも、インターネット検索で上位表示されるところに安易に連絡するのではなく、JAFか自動車保険付帯のロードサービスに優先的に連絡をするようにしてください。
連絡方法がわからない場合には、任意保険に加入した代理店(多くは車屋さんのはずです)や、普段からメンテナンスで利用している整備工場に相談するようにしてください。
【補足】ラジエーター漏れ防止剤を使用する際の注意点
もしラジエーターの漏れ防止剤を使用する場合には以下のことに気を付けてください。
- かならず冷却水温度が下がってから作業を実施する(火傷やケガの予防)
- 漏れ防止剤は、ラジエーターキャップを開けて直接投入する
- 誤って、漏れ防止剤をラジエーターサブタンクに入れないこと。十分に効果を発揮できません
- 漏れ防止剤投入後は、すくにエンジン冷却水を十分に補充して、ラジエーターキャップを閉め、水温が完全に温まるまでアイドリングでエンジンを掛け、水を十分に循環させる
- 効果がない可能性も考慮する
- 冷却水経路の他の部位に悪影響を及ぼす可能性も考慮する
ラジエーター水漏れの修理費用の目安
ラジエーターからの水漏れを修理する場合、症状や状況に応じて以下の2通りの方法があります。
- ラジエーター本体を新しいものに交換
- 漏れてるラジエーターを脱着して、現物を修理して再利用
いずれの場合も、費用の目安は国産乗用車で3〜10万円程度です。
ラジエーターの脱着は、車種によってはフロントバンパーの脱着が必要であったり、コンデンサの脱着に伴うエアコンガスの入れ替えが必要なことがあります。
よって、ラジエーターの部品代は数万円と安くはありませんが、工賃も高額となる場合があります。
また、車の状態によってラジエーター交換と同時に以下のような部品の交換も同時に実施することがあります。
- ラジエーターホース類
- サーモスタット
- エンジン冷却水(LLC)
こうした理由から、ラジエーターからの水漏れがあったときの修理費用の目安は、同一車種であっても金額に差が出てくることがあります。
また、作業にかかる時間は交換部品が揃って作業に掛かれる状態になってから最低でも「半日〜1日」、ラジエーター本体を修理して再利用する場合には、取り外し後に修理に出す必要があるので最低でも「一泊二日」は見ておくとよいでしょう。
整備士のまとめ
長く車に乗っているとラジエーターからの水漏れは決して珍しくないトラブルのひとつです。放置したまま走行することは、エンジンへのダメージなども考えられることからNGです。状態の確認はできても、ユーザー自身で走れるようにできる対処法は基本的にありません。
安全安心のためにもロードサービスを利用して、なるべく自走は避けて整備工場に入庫して修理するようにしましょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。