車のエアコンが効かない!対処法や修理費用の目安について整備士が解説

車のエアコンが効かない!対処法や修理費用の目安について整備士が解説

車のエアコンが効かないトラブルは、運転するうえで死活問題です。
特に真夏や真冬に、冷暖房が効かないなんてことになると、車に乗ってられない…!ともなりかねません。
この記事では現役の整備士が、車のエアコンが効かないときにどうするべきか、またどのような修理にどれくらいの費用が掛かるのかについて解説します。

車のエアコンが効かないときの応急処置

車のエアコンが効かなくなったとき、特に夏場は緊急性が高いです。
とりあえず少しでもマシになるように、もしくは一時凌ぎのできる応急処置の方法を紹介します。
まずは、冷房であれば【A/CボタンがON】であるかを確認します。
冷暖房いずれの場合も、温度設定が適切かも要確認です。

内気循環に切り替え、風量を最大に設定する

車のエアコン、内気循環のボタン

冷房が効かないときは、以下のことを試してみてください。

  • 内気循環&最低温度にして風量最大
  • 窓を開ける
  • 車用の扇風機やハンディ扇風機を使う

外気導入は車外の空気を車内に取り入れます。
真夏の冷房使用時には、車内の空気を循環させる「内気循環」にしておくほうが、車内温度の上昇を抑えられます。
ただし、周囲の環境や車種によっては例外もあるので、内外気の切り替えを試してみましょう。
カー用品には電源ソケット(シガーソケット)から電源を取って使用する扇風機が販売されています。
もしくは、ハンディ扇風機を使ってみるのも良いでしょうが、とにかく風を利用して空気の流れを作ることが対策として大切です。

ガス量によってはガソリンスタンドでエアコンガスを補充をする

ガソリンスタンドでも、簡単なエアコンの診断や処置が行えるところがあります。
診断の結果、ガス量が減っていることが冷房の効き不良の原因であれば、エアコンガスを規定量に補充することで、一旦は快適な環境に戻せる可能性もあります。
整備工場が飛び込みの診断や対応が難しい場合には、近場のガソリンスタンド等を頼るのもひとつの手段です。

なお、エアコンの不調はエアコンガスの減り以外にも原因が様々あります。「エアコンが効かない=エアコンガスの補充」と勝手に判断しないように注意しましょう。

<関連記事>車のエアコンガスの補充!費用の目安、やり方について整備士が解説

車のエアコンが効かない原因と修理費用の目安

車のエアコンが効かなくなる原因は、非常に多岐に渡ります。
下記の表はエアコンが効かないときの原因の一部と、その際に必要な交換部品と修理費用の目安をまとめています。

原因 交換部分 修理費用
(部品代+工賃)
エアコンフィルターの詰まり エアコンフィルター 3,000円〜15,000円
エアコンガス漏れ エアコンコンプレッサー 70,000円〜
コンデンサー 40,000円〜
エバポレーター 60,000円〜
エキスパンションバルブ 15,000円〜
配管・ホース 10,000円〜
Oリング(ガスケット) 7,000円〜
サーモスタットの閉じ不良 サーモスタット 15,000円〜
ラジエーターの冷却水漏れ ラジエーター 50,000円〜
ブロワファンモーターの故障 ブロワファンモーター 20,000円〜
クーリングファンが回らない クーリングファン 20,000円〜
リレー不良でコンプレッサーがONにならない コンプレッサーリレー 2,000円〜
ガス内にエア噛み・水分混入 エアコンガスの入れ替え 5,000円〜
温度の切り替えができない エアミックスアクチュエーター 10,000円〜
コントロールユニット 40,000円〜
ヒーターコアの詰まり ヒーターコア 50,000円〜
クーリングファンが
回りっぱなし
クーリングファン 20,000円〜

※交換部品に対して原因が重複する場合は、原因の記載は省略しています。
金額はあくまで目安です。くわしくは、整備工場で概算見積もりをしてもらいましょう。

この中で、主な原因と修理費用についてすこし掘り下げて解説します。

エアコンフィルターの詰まり

走行距離が増え、年数も経過した車でメンテナンスが良好でない車の場合、エアコンフィルターの詰まりが原因で、十分な風が吹き出し口から出ずにエアコンが効き不良になっている可能性があります。
この場合、エアコン使用時の風の音が大きくて違和感を覚えることもあります。
エアコンフィルターは1年または1万km程度が交換目安時期なので、定期的に交換しましょう。
車種によっては交換のハードルも高くなくて、素人でもできることもあります。
その場合は部品代1,000円〜2,000円で済むこともあります。
整備工場に依頼する場合は工賃と部品代込みで3,000円〜15,000円程度です。

エアコンガスの不足や漏れ

エアコンガスが漏れて不足していると、冷房の風がぬるくなり、最終的にはまったく効かなくなります。
エアコンのシステムは多くの部品から構成されているので、ガス漏れが発生する可能性のある場所は非常に様々です。
よって、1万円までで修理が完了することもあれば、10万円以上の高額修理になることもあります。

コンプレッサーの故障

エアコンコンプレッサーの故障には以下のようなパターンがあります。

  • エアコンガス漏れ
  • マグネットクラッチ不良
  • 圧縮不良
  • 異音発生

コンプレッサーは、低温低圧のエアコンガスを圧縮して、高温高圧の液体にして送り出す働きをしており、ここが正常に機能しないと冷房が効かなくなります。
基本的にはコンプレッサー本体の交換対応となり、修理が高額になりがちです。
部品代と工賃込みで7万円〜15万円の修理費用が見込まれます。

エバポレーターのトラブル

エバポレーターの画像

エバポレーターは、車内にあるエアコンの関連部品です。
エバポレーターの手前についているエキスパンションバルブによって、液体から気化されたエアコンガスが内部を通っています。
このときの気化熱を利用し、エバポレーターに風を当てて冷風を出しています。
エバポレーターのトラブルには以下のようなパターンがあります。

  • ガス漏れ
  • 内部の詰まり

いずれの場合にもエバポレーターの交換が必要で、ほとんどの場合でダッシュボード等の脱着が伴う重整備です。
修理に数日を要することもあり、工賃が高額になりがちです。
トータルで10万円以上の修理費用になることもあります。

サーモスタットの故障

サーモスタットは、エンジンやモーター等を冷やす冷却水を効率よく温めたり冷やしたりするために、冷却水経路を切り替えるバルブのような役割を担っている部品です。
機械式と電子式があります。
車の暖房は、温められた冷却水を利用して温風を作り出しています。
サーモスタットの故障によって、正常に冷却水が流れなくなると、オーバーヒートに繋がることもあれば、逆に冷えすぎることで暖房が効かなくなる(効きにくい)こともあります。
サーモスタットは、車種やエンジンによって取り付け場所が異なるため、交換工賃には幅があります。
部品代と工賃込みで1.5万円〜3万円程度の修理費用が必要です。

ラジエーターのトラブル

ラジエーターのトラブルには以下のようなパターンがあります。

  • 冷却水漏れ
  • コアの詰まり

ラジエーターから冷却水漏れが発生すると、暖房に使用する冷却水が無くなってしまうので、暖房が効かなくなります。
コアの詰まりはオーバーヒートに繋がる恐れはありますが、エアコンの効きそのものに大きく影響はありません。
修理費用は部品代と工賃込みで5〜12万円程度です。

<関連記事>ラジエーター交換費用の目安や時期?故障への対策も解説

ブロワファンモーターの故障

ブロワファンモーターとは、エアコンの風量に応じて風を送っているファンのことです。ブロワファンモーターの故障には以下のようなパターンがあります。

  • 異音
  • ファンが回らない

ファンが回らないと風が出ないので、冷暖房問わずエアコンが効かなくなります。
ブロワファンモーターの交換は20〜30分あればできるものから、ダッシュボードの脱着を伴い、作業に数日を要するものもあります。よって、修理費用は工賃によって大きく差が生じます。おおむね2〜10万円が修理費用の目安です。

その他の原因

ここまで解説してきた以外にも、エアコンが効かなくなる原因はまだまだあります。
冷房と暖房に分けて、原因のみ簡単にご紹介します。

【冷房が効かない原因】

  • クーリグファンが回らない
  • コンプレッサーリレーがONにならない
  • エキスパンションバルブの詰まり
  • エアコンシステム内の冷媒にエアや水分が噛んでいる
  • コンデンサーの詰まり
  • エアミックスアクチュエーターの故障
  • コントロールユニットの故障(オートエアコン機能付き車)
  • A/Cボタンを押していない

【暖房が効かない原因】

  • ヒーターコアの詰まり
  • エアミックスアクチュエーターの故障
  • コントロールユニットの故障(オートエアコン機能付き車)
  • LLC漏れ
  • クーリングファンが回りっぱなし

このようにエアコンの不具合や不調の原因は多岐に渡ります。
素人が診断、判別することはとても難しいので、速やかに整備工場にて原因を突き止めてもらうようにしましょう。

車のエアコンの修理代が高くなる場合

エアコンの修理代が高くなる理由はいくつかあります。

  • 部品代そのものが高額
  • エアコンガスの抜き入れがあると、高額になりがち
  • 1つの不具合箇所に対して、予防整備も含めて複数箇所の修理が推奨されることがある
  • 修理に時間の掛かるパターンが多く、工賃が高額になる

これらの中で、費用を抑えることができるポイントは部品代です。
当然、もっとも確実で安心できる部品は純正、または純正相当品の新品部品ですが、リビルト品と呼ばれる「再生部品」を使用することで、費用を抑えることができるかもしれません。
リビルト品とは、中古パーツを修理したりオーバーホールすることで、問題なく使用することができるようにした部品のことです。
基本的には新品部品よりも価格設定が抑えられています。おおむね新品と比較して2〜4割ほど安いです。

ただし、リビルト品の品質はメーカーによって大きく異なるので注意が必要です。(特に相場より安いものはNG)
自分で調達するよりは、整備工場に相談をしたうえで、信頼のできるリビルト品メーカーの部品を使うことをおすすめします。
また、車種や部品によってはリビルト品が無いこともあるので注意しましょう。

整備士のまとめ

エアコンが効かなくなる故障には、突発的なものもあれば、悪くなる前に整備工場から部品の交換提案などがあって、未然に故障を防ぐことができるパターンもあります。
急にエアコンが効かなくなって困らないためにも、日々の車のメンテナンスが大切です。
一方でエアコンシステム(冷房)の故障は、修理が高額になる傾向にあり、年式の古い車だとひとつ直しても、次にまた別の箇所が故障するリスクも高まります。
場合によっては、車の買い替えを考えるキッカケにしても良いかもしれませんね。

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Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。