クラウンはフルモデルチェンジを経て、セダンからクロスオーバーへと大きく変わった。高級セダンとして有名なクラウンがどう変わったのか、試乗を通して2種類のハイブリッドシステムについて乗り心地や走行性能を比較した。クラウンの購入を検討している人は是非参考にして欲しい。
- まったく別のクルマに生まれ変わった16代目新型クラウン
- ツライチにこだわった攻めのデザイン
- 超低燃費だが無味無臭で好みが分かれる2.5Lハイブリッド
- 燃費は物足りないがパワフルな2.4Lターボデュアルブーストハイブリッド
- DRSで、爽快な走りと使い勝手を向上
- トヨタブランド、最良のソフトで快適な乗り心地
- 新型クラウンクロスオーバーのお勧めグレードは?
- 新型クラウンクロスオーバーのリセールバリューは?
- トヨタ クラウンクロスオーバー価格
- トヨタ クラウンクロスオーバー燃費、ボディサイズなどスペック
まったく別のクルマに生まれ変わった16代目新型クラウン
トヨタ クラウンは歴史のあるモデルだ。今回のフルモデルチェンジで16代目となった。15代目クラウンがマイナーチェンジのタイミングで、フルモデルチェンジしている。
しかも従来のクラウンはオーソドックスなセダンだったが、SUVとのクロスオーバー車となってデビューした。これには、誰もが驚き話題となった。
では、クラウンは何が変わったのだろうか?
今までのクラウンは、FR(後輪駆動)の正統派セダンだ。今回のフルモデルチェンジで、FF(前輪駆動)ベースのSUVになった。まったくの別物といってもいい。
今後、セダンやワゴンも登場する予定だ。
クラウンがクロスオーバーとなった背景
なぜ16代目新型クラウンはここまで劇的な変化を遂げたのだろう。
端的に言えば「儲からない」からだ。
従来のクラウンはほぼ国内専用車として、日本人向け高級セダンの価値を追い求めてきた。こうしたこだわりが高く評価され、クラウンは国産高級セダンとして売れて続けていた。
しかし時代が変わり、セダンの人気が急速に下落した。国産セダンは、もはや終焉を迎えている状態とも言える。
それでも先代クラウンは、国産セダンの販売台数トップを維持し続けた。だが、トヨタは自ら終止符を打ったのだ。トヨタディーラーが全車種扱いになり、営業力で守ってきたクラウンユーザーが、ハリアーやアルファードなど他のトヨタ車に乗替え始めたのだ。ただでさえ販売台数が大幅に減っていた矢先、さらに販売台数が減るのならば、今後の存続は厳しいと決断するのも当然のことだろう。
こうした背景があり、16代目新型クラウンはグローバルモデルの道を選択した。新生クラウンはコストが下がるFF(前輪駆動)ベースとし、価格も少し下げている。
ツライチにこだわった攻めのデザイン
16代目新型クラウンのデザインは、従来のクラウンイメージが一切無い。
SUVといっても、全高はそれほど高くなくスタイリッシュだ。セダン寄りのSUVと言える。シートがやや高い位置にあるので、乗り降りも楽だ。高齢ユーザーに優しいクルマに仕上がっている。
16代目新型クラウンのデザインは、新しいプロダクトアウト型でかなり斬新である。
14代目、15代目クラウンは、トヨタが得意とするマーケットインなデザインだった。大きなグリルと押し出し感で、迫力ある仕上がりだ。
このデザインはマーケットでは高く評価されていた。特に14代目クラウンは少々やり過ぎ感があったものの、比較的若い年齢層の顧客がクラウンを選んだという。
本来ならば16代目新型クラウンも、マーケットインなデザインになるはずだ。しかし車名こそクラウンだがSUVになったこともあり、斬新なプロダクトアウト的デザインとなった。
なんと言っても、フロントフェイスが素晴らしい。欧州車含め、グリルの大きさを競うようなデザイントレンドの中、グリルの大きさを無視して純粋にカッコよさにこだわった。
完全にプロダクトアウト的にも見えるデザインだが、一文字のリヤコンビネーションランプなど、所々に最新のデザイントレンドを持ち込み溶け込ませているのは、いかにもトヨタらしい部分でもある。
全体のシルエットでこだわったのは「ツライチと大径ホイール」だという。クルマをカッコよく見せるための基本的なデザインのことだ。
ツライチとは、タイヤもしくはホイール面とフェンダーのラインが面一(ツライチ)になっている状態を指す。なるべくフェンダーとタイヤの隙間が無い方がカッコいい。デザイナーのデザインスケッチを忠実に再現している。
そのため16代目新型クラウンは、クロスオーバーモデルなのに、トヨタ車の中でもフェンダーとタイヤの隙間が小さい。21インチホイールを履くことを前提とし、よりツライチにしやすいフェンダー形状に変更するために、フェンダーのフランジを無くし、タイヤとフェンダーの接触リスクを低減した。
21インチホイールは大きくスタイリッシュだが、タイヤが太くなり過ぎると燃費や操縦安定性にも影響が出る。そこで、16代目新型クラウンでは、21インチホイールなのに225/45の細身のタイヤで、走行性能と見映えのバランスを上手く最適化した。
超低燃費だが無味無臭で好みが分かれる2.5Lハイブリッド
新型クラウンはグレードによって2種類のハイブリッドシステムが搭載されている。今回最初に試乗したのは、2.5Lハイブリッドを搭載した新型クラウンクロスオーバーG アドバンストだ。新型クラウンクロスオーバーは、リヤにモーターを設置した4WDのE-Fourのみの設定である。
2.5Lハイブリッドのシステムの燃費は22.4km/Lだ。全長4,930mm、車重1,770kgもの大柄で重いボディのクルマとは思えないほどの超低燃費性能を誇る。駆動用バッテリーは、高性能なバイポーラ型ニッケル水素を使用した。
この2.5Lハイブリッドシステムは、スルスル滑らかに走り出す。静粛性も高く振動もほとんど感じない。集中していないと、エンジンが始動したのも分からないほどだ。
システム出力は234psと十分だ。車重が1,770kgと重いので、速い!というレベルではないものの、高速道路などではストレスなく速度を上げていく。
パワーユニットとしては、非常に高い完成度といえる。だが、良くも悪くも無味無臭で、ドラマチックな部分は無い。
こうしたパワーユニットは、評価が難しい。存在感が無いので、クルマにドラマチックな感性を求めているユーザーにとっては物足りなく感じる。しかし、クルマは単なる移動のための道具としてとらえている人にとっては、出しゃばる感じがないので、よいパワーユニットと高く評価されるからだ。
燃費は物足りないがパワフルな2.4Lターボデュアルブーストハイブリッド
無味無臭だった2.5Lハイブリッドに対して、新開発の2.4Lターボデュアルブーストハイブリッドは、かなり濃いこってり系に仕上がっていた。
このパワーユニットは、レクサスNXに搭載されているT24A-FTS型直4 2.4Lターボエンジンに、82.9ps&292Nmのモーターを直結している。動力分割式ハイブリッドシステムを使うトヨタとしては、異例ともいえる1モーター式だ。加えて、リヤに大出力の水冷モーターを組み合わせた。システム出力は349psと非常にパワフルだ。
このパワーユニットは、走る楽しさを存分に味わえる。モーターは、アクセルを踏んだ瞬間から最大トルクを出す特性がある。この特性を活かし、ターボエンジンの悪癖であるターボラグを解消した。非常にアクセルレスポンスのよいパワーユニットに仕上がっている。さらに、高回転までスムースに回りパンチもある。振動も少なく上質感もあるのだ。
さらにトヨタは、後輪に80.2ps&169Nmという大出力の水冷式モーターを設置し、4WD化した。「E-Four Advanced」という4WDシステムは、前後輪トルク配分を100:0〜20:80の間で緻密に制御する。
この「E-Four Advanced」がとてもよい仕事をしている。カーブでステアリングを切り始め、旋回中はほとんど50:50の駆動力配分と安定性を重視していた。カーブの出口でアクセルをグッと踏み込むと、リヤ寄りの駆動力配分(50:50〜20:80)になった。トラクション性能を向上させ、まるでFR(後輪駆動)車のような走りだ。優れたアクセルレスポンスも相まって、ととても気持ちよく山道を駆け抜けることができた。
ただし、直結式のハイブリッドシステムなので、燃費は物足りない。燃費は2.5Lハイブリッドの燃費22.4km/Lなのに対して、2.4Lハイブリッドは15.7km/Lとなる。
DRSで、爽快な走りと使い勝手を向上
新型クラウンクロスオーバーには、DRS(ダイナミック・リヤ・ステアリング)が装備された。この機能は、リヤタイヤが走行状況に応じて逆位相もしくは同位相に動く。車両をよりスムースに曲げたり、安定させたりすることが大きな目的だ。この機能により、新型クラウンクロスオーバーは、大きなボディながら軽快感と安定感を手に入れ、走る楽しさを向上させている。
「リヤタイヤが操舵する」というと、走行中に違和感が気になるところ。しかし、なかなか自然なフィーリングで、リヤタイヤが操舵している感覚はほとんど無く自然な印象だった。
大きい車体の割に小回りが利く新型クラウン
走行性能だけでなく、最小回転半径を小さくすることができるのもDRSのメリットだ。新型クラウンクロスオーバーは、FF(前輪駆動)ベースのGA-Kプラットフォーム(車台)がベースで、ホイールベースは2,850mmと長い。同じGA-Kを使うハリアーハイブリッドの最小回転半径は、5.7mとLクラスミニバン並みだ。しかし、新型クラウンクロスオーバーの最小回転半径は、5.4mと大幅に小さくなっている。
これだけ大きな車体だと、小回りは苦手なはず。しかし、DRSによりリヤタイヤが逆位相に動くことにより、最小回転半径は5.4mとCセグメントのコンパクトカーに近い数値になっている。この数値は、FR(後輪駆動)の先代クラウンの5.3mに匹敵するレベルだ。
新型クラウンクロスオーバーは、大きな車体なのに、意外と小回りが得意なのだ。狭い駐車場が多い日本では使いやすいクルマといえる。
トヨタブランド、最良のソフトで快適な乗り心地
2.4L、2.5Lハイブリッドの乗り心地は、トヨタブランドの中で最も快適といえるレベルだ。特新開発されたリヤサスペンションの動きのしなやかさには目を見張る。後席の乗り心地も抜群によい。高級SUVであるレクサスNXやハリアーを超えた快適さだ。
全般的にソフトなサスペンションセッティングで、乗り心地は少しフワフワしていた。2.4Lハイブリッドは少し車重が重いため、より重厚な乗り心地になっている。
ただ、ソフトな乗り心地のため、カーブでは大きく車体が傾く。軽く流しているレベルであればそれほど気にならない。だが、少し攻めた走りをすると、車体の傾きが気になり始める。攻めた走りが楽しいクルマではないのだ。
2.5Lハイブリッド車は万人向けなので、このサスペンションセッティングが良い。だがパワフルな2.4Lでは、物足りなさを感じた。
こうした感想を開発エンジニアに伝えたところ「走りの物足りなさを感じる人は、今後登場するクラウンスポーツを選んでください」とのことだった。
新型クラウンクロスオーバーのお勧めグレードは?
新型クラウンクロスオーバーは、まず2.4Lか2.5Lのどちらのハイブリッドモデルを選択するかが、大きなポイントになる。
よりパワフルで走る楽しさを味わえる2.4Lがお勧めだが、100万円程度高価になる。予算に余裕があり、走りにこだわる人向けのパワーユニットだ。
グレードでは、RSアドバンストがお勧めだ。35万円アップとなるものの、以下の豪華装備がプラスされる。
- カラーヘッドアップディプレイ
- ハンズフリーパワートランクリッド
- イージークローザー
- デジタルキー
- おくだけ充電
一般的な使い方で、走りはそこそこ、価格も安価な方が良いのであれば、2.5Lハイブリッド車がお勧めだ。
デザイン上のポイントが21インチホイールなので、GアドバンストレザーパッケージかGレザーパッケージのどちらかをお勧めしたい。装備差は以下の通りだ。
- おくだけ充電
- パノラミックビューモニター
- デジタルキー
- パワートランクリッド
- イージークローザー
- ドライブレコーダー
約30万円の価格差で、これだけの装備がプラスされるのであれば、Gアドバンストレザーパッケージ車がお得と言える。
新型クラウンクロスオーバーのリセールバリューは?
新型クラウンクロスオーバーのリセールバリューは、かなり高めとなると予想できる。
元々、トヨタ車は総じてリセールバリューが高い。さらに、新型クラウンクロスオーバーは、発売から約1ヵ月で2.5万台を受注という人気ぶりだ。SUV人気の後押しもあり、リセールバリューが低くなる材料が見当たらない。
新型クラウンクロスオーバー納期も超長期化している。コロナ禍による半導体・部品不足が続いているからだ。すでに転売目的と思われる新型クラウンクロスオーバーの未使用車が中古車店に出回っており、新車価格より100万円以上の高値で売られている異常事態だ。
こうした状況下なので、生産が通常状態に戻るまでは、リセールバリューが大きく下がることはないだろう。
トヨタ クラウンクロスオーバー価格
2.4Lターボ、デュアルブーストハイブリッド(E-Four Advanced)
CROSSOVER RS | 6,050,000円 |
---|---|
CROSSOVER RS“Advanced” | 6,400,000円 |
2.5Lハイブリッド(E-Four)
通常 | Leather Package | |
---|---|---|
CROSSOVER G | 4,750,000円 | 5,400,000円 |
CROSSOVER G Advanced | 5,100,000円 | 5,700,000円 |
CROSSOVER X | 4,350,000円 | - |
トヨタ クラウンクロスオーバー燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード | CROSSOVER Gアドバンスト レザーパッケージ |
---|---|
ボディサイズ | 全長4,930mm×全幅1,840mm×全高1,540mm |
ホイールベース、最小回転半径 | 2,850mm、5.4m |
車両重量 | 1,790kg |
総排気量 | 2,487cc |
エンジン種類 | A25A-FXS型 直4 DOHC |
エンジン最高出力 | 137kW(186ps)/6,000rpm |
エンジン最大トルク | 221N・m(22.5kg-m)/3,600-5,200rpm |
フロントモーター最高出力、最大トルク | 88kw(119.6ps)、202N・m(20.6kg-m) |
リヤモーター最高出力、最大トルク | 40kw(54.4ps)、121N・m(12.3kg-m) |
ミッション | 電気式無段変速機 |
WLTCモード燃費 | 22.4km/l |
バッテリー 種類 | ニッケル水素 |
サスペンション前/後 | ストラット/マルチリンク |
タイヤサイズ | 225/45R21 |
クラウンのカタログ情報
- 現行モデル
- 令和5年11月(2023年11月)〜現在
- 新車時価格
- 730.0万円〜830.0万円
クラウンの在庫が現在49件あります
以下車両の保証内容詳細は画像をクリックした遷移先をご確認ください。