この記事の目次 CONTENTS
レクサスISの歴史
セダン離れで、フルモデルチェンジ見送り?
国内レクサスに、まだ純ガソリン車は必要か?
FRスポーツセダンとして「クルマを操る楽しさ」を深化
よりスポーティなワイド&ローフォルムへ
高級車に相応しい高性能化した予防安全装備。しかし、物足りない部分も・・・
レクサスの意気込みを感じる特別仕様車F SPORT Mode Black
レクサスISのグレード選びは、300h一択?
レクサスIS価格、ボディサイズ、燃費性能などスペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

レクサスISの歴史

レクサスは、小型スポーティFRセダンの「IS」をマイナーチェンジ、同時に特別仕様車“F SPORT Mode Black”を設定、発売した。

グローバルでの初代レクサスISは、1999年のデビューだ。
ただ、この時期、国内ではレクサスブランドは導入されていなかった。
そのため、初代ISは国内ではアルテッツァという車名で販売された。

レクサスブランドが日本に導入されたのは、2005年。
このタイミングで投入されたのが、2代目ISとなる。
2代目はガソリン車のみの設定で、まだハイブリッド車は用意されていなかった。
ただ、この2代目ISには個性的な仕様が設定されていた。
IS Cと呼ばれる2ドアのカブリオレモデルや、V8 5.0Lエンジンを搭載したスポーツモデルであるIS Fだ。

そして、現行の3代目は、2013年にデビュー。
レクサスのデザインアイコンであるスピンドルグリルが装備されるなど、迫力あるスタイリングとなっている。
このモデルから、待望の2.5Lハイブリッドシステムを搭載。
優れた走行性能と低燃費を両立したモデルとなり、高い人気を誇っている。

なお、1回目のマイナーチェンジが行われたのは2016年。
物足りなかった自動ブレーキなどの予防安全装備が向上した。
また、予防安全パッケージ「レクサスセーフティシステム+」も標準装備化。
より走りが楽しめるように、サスペンション関係も変更された。

セダン離れで、フルモデルチェンジ見送り?

3代目ISは、デビューから7年以上が経過している。
本来はフルモデルチェンジのタイミングだ。
しかし、今回は大幅なマイナーチェンジにとどまった。
マイナーチェンジでこれだけの大改良が行われたということは、あと3年程度は販売する可能性が高い。
そうなると、3代目はデビューから10年以上販売されることになる。

レクサスには、LSやLCに採用されたFR用プラットフォーム(車台)、最新のGA-Lが存在する。
本来ならば、クラウンと同じようにISも、このプラットフォームを使ってフルモデルチェンジすると予想されていた。
しかし、今回、GA-Lプラットフォームの採用が見送られ、大幅マイナーチェンジにとどまっている。

フルモデルチェンジしなかった原因は、やはり世界的なセダン離れだろう。
なお、レクサスはすでにISよりひとクラス上のセダンであるGSが、マーケットから撤退している。

国内レクサスに、まだ純ガソリン車は必要か?

今回のマイナーチェンジでは、ISのコンパクトFRセダンとしての価値を向上させている。

ポイントは、「クルマを操る楽しさ」を深化させたこと。
今回のマイナーチェンジでは、上質な乗り心地と優れた操縦安定性を実現した。
長く乗れば乗るほど、操る楽しさなどの新しい発見がある、作り手の想いを感じるクルマを目指したのだ。

走行試験の結果に基づき、ドライバーの入力に対する俊敏な応答性やばね上の無用な動きの抑制など、路面状況や走行シーンに応じて徹底的にチューニングを行った。
さらに、数値では測れない人の感性にもこだわった。
運転操作のつながりやリズムなど、ドライバーの意図に忠実でリニアな操縦性を追求したのだ。

2.5Lハイブリッド車では、アクセル開度に対するエンジンとモーターの駆動力制御を変更。
ラバーバンドフィールと言われたハイブリッド車特有の乗り味を、さらにダイレクトなものへ向上させた。
なお、システム出力は、220psと変更はない。

また、2.0Lターボモデルでは、ドライバーのアクセル開度などから走行環境を判定し、シーンに応じて適切なギヤ段を設定するアダプティブ制御を採用した。
この2.0Lターボも235ps&350Nmと、出力に変更はない。
3.5L V6エンジンも同様で、318ps&380Nmと出力に変更はない。

世界的にクルマの電動化が進められ、純ガソリン車が販売できなくなる未来がみえてきている。
しかも、レクサスには世界トップレベルの低燃費性能を誇るハイブリッドシステムがある。
しかしながら、純ガソリン車である2.0LターボとV6 3.5Lがまだラインアップに必要なのかは、少々疑問が残る部分ではある。

FRスポーツセダンとして「クルマを操る楽しさ」を深化

ボディ関連では、サイドラジエーターサポートの補強、フロントサイドメンバーのスポット打点追加、Cピラーからルーフサイドにかけての構造最適化などによりボディ剛性をアップした。

このボディ剛性のアップにより、ハンドル操作に対するレスポンスなど運動性能を向上、ノイズや振動を排除して乗り心地を向上させている。

サスペンション関連では、ショックアブソーバーのオイル流路に非着座式のバルブを設け、微小な動きに対しても流路抵抗による減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」を採用。
アブソーバーのストローク速度が極めて低い場合でも、減衰力を発揮することで、応答性が良く上質な乗り心地が実現できるようになった。
ボディ剛性をアップさせたことで、こうしたサスペンションの変更もより効果的となっている。

よりスポーティなワイド&ローフォルムへ

今回のマイナーチェンジでは、ボディサイズが大きく異なるほどのデザイン変更が行われた。
デザインのコンセプトは、“Agile(俊敏) & Provocative(挑発的)”。
ワイド&ローなフォルムと、シャープなキャラクターラインによるアグレッシブなデザインを目指した。

このデザインにより、ボディサイズは全長 4,710(+30)mm、全幅 1,840(+30)mm、全高 1,435*(+5)mmと、大幅に変更されている。
ただ、狭い道が多い日本においては、全幅の拡大は扱いにくくなる可能性がある。

フロントフェイスの特徴は、新開発の小型軽量ランプユニットを搭載した薄型のヘッドランプだ。
低く構えたグリル周りとそれに合わせて下げたサイドのキャラクターライン、ラゲージ後端部の造形で重心の低さを表現しながら、睨みの効いた迫力あるフェイスとなった。

このフロントフェイスに組み合わされたスピンドルグリルは、新デザイン。
グリルの先端を起点に立体的な多面体構造とし、押し出し感を強調している。

高級車に相応しい高性能化した予防安全装備。しかし、物足りない部分も・・・

従来のISは、高級車としてはやや物足りない予防安全装備だった。
しかし、最新の仕様となり、高級車に相応しいものとなっている。

まず、Lexus Safety System +に採用している「単眼カメラ+ミリ波レーダー」だ。
構成には変化はないが単眼カメラとミリ波レーダーの性能向上により、自動ブレーキは昼間の自転車運転者や夜間の歩行者も検知可能となった。
また、交差点右折時に前方から来る対向直進車や、右左折時に前方から来る横断歩行者も検知可能となった。
実際に多い事故シーンに対応したことにより、より安全なクルマとなっている。

さらに、ドライバーの回避操舵をきっかけに自車線内での操舵をアシストし、車両安定性確保と車線逸脱抑制に寄与する緊急時操舵支援機能を追加。
低速時の衝突回避または被害軽減をサポートする低速時加速抑制などの機能も追加した。

また、異常時対応システムも搭載された。
これはレーントレーシングアシスト制御中に、ドライバーが意識を失うなどの異常が起きて無操作状態が継続した場合、音と表示と緩減速による警告でドライバーに操作を促すもの。
さらに、ハザードとホーンで車外に異常を報知しながら自車線内で減速停車し、自損加害事故の回避・事故被害低減を支援する。
停車後は、ドア解錠やヘルプネット自動接続による救命要請も行い、早期のドライバー救命・救護に寄与するのだ。

レクサスでは「交通事故死傷者ゼロ」を掲げ、安全技術開発を進めているという。
今回のマイナーチェンジでは、予防安全装備が大幅に向上し、標準装備化さた。
これにより、どのグレードであっても、高い安全性能であると言えるようになった。
しかし、ISは500万円を超える高級車であり、ブランドとして「交通事故死傷者ゼロ」を公言していることを考えると、まだまだ物足りない部分もある。

例えば、カメラの映像を合成して車両を上から見たような映像にしたパノラミックビューモニターがオプション設定だ。
この装備は車両の周辺をひと目で確認でき、うっかり衝突してしまったり、小さな子供と衝突してしまうことを回避する効果がある。
しかも、これはもはや軽自動車にもオプション設定されているほどのローテク装備だ。
高級車なのに、軽自動車と同じくオプション設定というのも、高級車らしくない。

また同様に、後席サイドのエアバッグが一部グレードではオプション設定となっている。
ブランドとして掲げている「交通事故死傷者ゼロ」には、反する仕様だ。
安全装備は、グレードごとに差を付けるべきではないだろう。

レクサスの意気込みを感じる特別仕様車F SPORT Mode Black

マイナーチェンジと同時に、ISには特別仕様車となる“F SPORT Mode Black”が投入された。

特別仕様車は、通常、販売台数が落ちてきたときなどに投入するケースが多い。
そのため、これほどの大幅マイナーチェンジが行われて商品力が増したときに投入するのは、かなり稀なことだ。
それほど、レクサスはISの販売面で危機感があるのだろう。

特別仕様車“F SPORT Mode Black”は、IS350/IS300“F SPORT”をベースに、専用のアルミホイールやブラックを基調としたカラーコーディネートとなっている。
ISの特長である、走りとデザインに磨きをかけたモデルだ。

ホイールは、BBSと共同開発。
マットブラック塗装の鍛造アルミホイールを採用することで軽量化した。
また、アルミホイール表面の滑らかさにこだわり、職人が30年以上かけて培ってきた技術で、1本ずつ手作業で丁寧に仕上げている。

インテリアでは、アッシュ材を銀墨色に仕上げた専用デザインのステアリングやオーナメントパネルを採用。
アッシュ材の流麗な木目に高輝度塗装を施すことで、光を受けると銀墨の独特の輝きに移ろい、太陽光を受けると鮮やかな銀色が出現するなど、自然素材が持つ本物の質感を際立たせた。

さらに、“F SPORT”専用本革スポーツシートや専用メーターオープニングなどを採用し、スポーツドライビングの高揚感を高めている。

S350/IS300 特別仕様車“F SPORT Mode Black” 特別装備

  • 特別仕様車専用鍛造アルミホイール(BBS製マットブラック塗装)
  • “F SPORT”専用本革スポーツシート(運転席ポジションメモリー/運転席・助手席ベンチレーション機能付)
  • トルセンLSD(リヤディファレンシャルギヤ)
  • 特別仕様車専用アッシュ(オープンフィニッシュ/銀墨)+“F SPORT”専用ディンプル本革ステアリング(パドルシフト付)
  • オーナメントパネル(パワーウインドゥスイッチベース部)特別仕様車専用アッシュ[オープンフィニッシュ/銀墨]
  • “F SPORT”専用8インチTFT液晶式メーター(特別仕様車専用オープニング)
  • 三眼フルLEDヘッドランプ(ロー・ハイビーム)&LEDフロントターンシグナルランプ
  • 後席SRSサイドエアバッグ
  • オート電動格納式ドアミラー(広角・運転席自動防眩・鏡面リバース連動ラストメモリー付チルトダウン・メモリー・ヒーター付/特別仕様車専用ブラック塗装)
  • パワーイージーアクセスシステム(運転席オートスライドアウェイ&リターンメモリー機能付)

レクサスISのグレード選びは、300h一択?

ISの選び方は、2.5Lハイブリッドの300h一択と言ってもいいだろう。
全世界的にクルマの電動化が推し進められていて、近い将来、純ガソリン車の販売はできなくなる。
さらに、世界トップレベルのハイブリッドシステムをもつレクサス車であるならば、当然、ハイブリッド車を選ぶべきだろう。

むしろ国内レクサスはブランド価値を上げたいのであれば、ガソリン車の国内販売を止めてすべてハイブリッド車にして、環境を重視するブランドであることをアピールしてもよいくらいだ。

300h系は、基準車と“version L”、“F SPORT”の3グレード構成となっている。
予算重視というのであれば、基準車で十分。
ただ、より安全性能を高めるため、オプションでパノラミックビューモニターと後席サイドエアバッグは選択したい。

ラグジュアリーセダン的で贅沢な仕様が好みであれば、“version L”という選択になる。
上質なセミアニリン本革シート(運転席ポジションメモリー/運転席・助手席ベンチレーション機能付)が装備されているからだ。
このグレードも、やはりパノラミックビューモニターのオプション選択は必須。
ただ、ラグジュアリーセダンが良いのであれば、ISではなくESという選択肢も出てくる。

走りにこだわるのであれば、“F SPORT”が良い。
FRスポーツセダンとしてのISの価値を、最も体現しているグレードが“F SPORT”だ。
走りにこだわった装備が魅力で、ISの走りを十分に堪能できる。
また、日本マーケットでは、F SPORTのように専用エアロパーツなどを装着したスポーティなグレードの人気が非常に高い。
こうしたグレードは、リセールバリューも高いので短期の乗り換えでは大きなメリットとなる。
おすすめオプションは、F SPORT専用オレンジブレーキキャリパーだ。

レクサスIS価格、ボディサイズ、燃費性能などスペック

レクサスIS価格

  • IS350 “F SPORT” FR:6,500,000円
  • IS300h FR  5,260,000円/AWD:5,680,000円
  • IS300h“version L”  FR:6,000,000円/AWD:6,420,000円
  • IS300h“F SPORT”  FR:5,800,000/AWD :6,220,000円
  • IS300 FR:4,800,000円
  • IS300“version L” FR:5,550,000円
  • IS300“F SPORT”  FR:5,350,000円
  • IS350 特別仕様車“F SPORT Mode Black”  FR:7,000,000円
  • IS300 特別仕様車“F SPORT Mode Black”  FR:5,850,000円
代表グレード IS300h“F SPORT”
レクサスIS全長×全幅×全高 4,710×1,840×1,435mm
ホイールベース 2800mm
最小回転半径 5.2m
車両重量 1690kg
燃料消費率(国土交通省審査値)WLTCモード 18km/L
エンジン型式 2AR-FSE
エンジン種類 直列4気筒
総排気量 L 2.493
最高出力[NET] kW[PS]/r.p.m 131(178)/6,000
最大トルク[NET] N・m[kgf・m]/r.p.m. 221(22.5)/4,200~4,800
モーター 型式 1KM
モーター最高出力 kW(PS) 105(143)
モーター最大トルク N・m(kgf・m) 300(30.6)
トランスミッション 電気式無段変速機