Bセグメントのコンパクトカーは、とても良く売れている。
一方で徐々に人気を得ているのが、BセグメントコンパクトカーがベースのコンパクトSUVだ。
ボディサイズがやや大きくて全高が高いため立派に見え、着座位置は高くて運転しやすいことが特徴といえる。
そんなコンパクトSUVの中から、今回はヤリスクロスとヴェゼルをピックアップ。
燃費性能、価格、デザイン、車内空間、安全装備、走行性能などさまざまな角度から比較評価した。
- この記事の目次 CONTENTS
- トヨタ ヤリスクロスの特徴
- ホンダ ヴェゼルの特徴
- 1.燃費比較
- 2.価格比較
- 3.購入時の値引き術
- 4.デザイン比較
- 5.室内空間と使い勝手
- 6.安全装備の比較
- 7.走行性能の比較
- 8.リセールバリュー比較
- 9.まとめ・総合評価
トヨタ ヤリスクロスの特徴
ヤリスクロスは車名からも分かる通り、Bセグメントのコンパクトカーであるヤリスをベースとして開発され、2020年8月にデビューした。
パワーユニットやプラットフォーム(車台)など、多くの部分がヤリスと共通化されているのが特徴だ。
ヤリスには優れた1.5Lハイブリッドシステムが使われているが、ヤリスクロスもこの優れたハイブリッドシステムを継承している。
その結果、ヤリスクロスハイブリッドの燃費値は30.8㎞/L(FF、WLTCモード)と、クラス世界トップレベルの実力を誇る。
ホンダ ヴェゼルの特徴
ヴェゼルのデビューはやや古く、2013年12月だ。
ベースとなっているのは、先代となる3代目フィット。
すでにモデル末期ということもあり、徐々に販売台数が下降傾向だ。
しかしそれでも、コンパクトSUV人気の追い風を受け、2020年4~9月の登録車新車販売台数ランキングでは22位となっている。
1.燃費比較
ヤリスクロスの評価は5.0点
ヴェゼルの評価は4.0点
圧倒的な燃費性能差となったヤリスクロス
ヤリスクロスハイブリッドの燃費値は、27.8~30.8㎞/L(FF、WLTCモード)。
このクラスでは世界トップレベルだ。
一方、ヴェゼルハイブリッドの燃費は、19.6~21.0㎞/L(FF、WLTCモード)となっている。
ヴェゼルハイブリッドのハイブリッドシステムは旧世代のものであるとはいえ、圧倒的な大差がついている。
ヤリスクロスハイブリッドの燃費値が、いかに凄いかがよく分かる。
また、ヤリスクロス1.5Lガソリン車の燃費は、18.8~20.2㎞/L(FF、WLTCモード)。
ヴェゼルの1.5Lガソリン車は17.8~18.6㎞/L、1.5Lターボは16.4㎞/Lとなっている。
ガソリン車でも、ヤリスクロスが上回る数値になった。
ヴェゼルは、そろそろフルモデルチェンジ時期ということもあり、不利な状態。
しかし、次期新型ヴェゼルのベース車となる最新のフィットも、ヤリスに対して燃費では大差をつけられている。
もはや、トヨタのハイブリッド車に燃費で勝負を挑めるメーカーがない状態だ。
2.価格比較
ヤリスクロスの評価は4.0点
ヴェゼルの評価は3.0点
かなり安価な設定となったヤリスクロス
ヤリスクロスハイブリッドの最上級グレードZの価格は、2,584,000円。
ヴェゼルハイブリッドの最上級グレードであるハイブリッドZの価格は、2,760,186円となっている。
若干の装備差はあるものの、ヤリスクロスの方がかなりリーズナブルな印象だ。
これは、ヴェゼルハイブリッドの価格が高いということではない。
ヴェゼルハイブリッドは、ライバル車の日産キックスやマツダCX-3のディーゼル車とほぼ同等レベルの価格。
つまり、ヤリスクロスはかなり攻めた価格設定になっているのだ。
これだけ価格差があると、ヴェゼルハイブリッドが多少値引きしたくらいでは、勝負にならない。
ヴェゼルハイブリッドは、大幅値引きで対応するしかない状態だ。
こうした傾向は、ガソリン車も同様。
1.5Lターボを搭載したヴェゼル ツーリングの価格は、ハイブリッド車を超える2,956,800円というかなりかなり高価な設定となっている。
3.購入時の値引き術
ヤリスクロスの評価は2.5点
ヴェゼルの評価は4.0点
激戦カテゴリー!大幅値引きが期待できるヴェゼル
ヤリスクロスはデビュー直後なので、しばらくの間、値引きは非常に厳しいだろう。
しかし、現在はコロナ禍により新車販売台数が激減している。
メーカーは少しでも販売台数を伸ばしたいため、商談次第では一定の値引き額が引き出せる可能性がある。
まず、時期が大切だ。
2~3月が最も値引きを引き出しやすい。
この時期は各社決算直前ということもあり、「多少値引きしても、1台でも多く販売したい」と考えている。
まさに、買い手が有利な時期だ。
さらにコロナ禍ということもあり、少ない顧客を奪い合う状態だ。
新型車とはいえ、値引き勝負に出てくる可能性が高い。
ただ、何もしなければ、値引きはほとんど提示されない。
大切なのは、ライバル車との競合だ。
ヤリスクロスのライバル車は、ヴェゼルや日産キックス、マツダCX-3など。
このクラスは激戦カテゴリーのため、こうしたライバル車と競合させれば、値引きで勝負に出る可能性が高い。
商談のコツは、ライバル車の見積りを先に取ること。
本命がヤリスクロスだと、分からないようにするためだ。
ただ、ヤリスクロスは非常に売れているため、すぐには値引きが提示されないはずだ。
じっくりと長めに商談し、ジワジワと値引き額を引き上げていくとよい。
対するヴェゼルはモデル末期のため、すでに大バーゲン状態に入っている。
ライバル車の見積りを持って商談するだけで、最初から一定の値引き額が提示されるだろう。
ライバル車として効果的なのは、やはりヤリスクロスだ。
ヤリスクロスはヴェゼルに比べて価格設定が安いので、多少値引きしただけではヤリスクロスの価格に届かない。
あくまで、予算重視という姿勢で商談を続ければ、大幅値引きが期待できる。
4.デザイン比較
ヤリスクロスの評価は4.0点
ヴェゼルの評価は3.5点
タフネス系なヤリスクロス、スタイリッシュ都会派系のヴェゼル
ヤリスクロスのデザインは、「Robust & Minimalist」の思想のもと、デザインキーワードを「ENERGETIC SMART」とした。
ヤリスの派生モデルながらヤリスに似たテイストとはせず、オリジナリティあるデザインとなっている。
5.室内空間と使い勝手
ヤリスクロスの評価は4.5点
ヴェゼルの評価は4.0点
室内スペースはヴェゼル、使い勝手ではヤリスクロス
ヤリスクロスのボディサイズは、全長4,180×全幅1,765×全高1,590mm、ホイールベースは2,560mmだ。
ヴェゼルは、全長4,330×全幅1,770×全高1,605mmで、ホイールベースは2,610mmとなっている。
ボディサイズは、ややヴェゼルの方が大きい。
この数値どおり、室内スペースもヴェゼルが上回る。
とくに、ヴェゼルは後席が広く、足元、頭上ともにヤリスクロスよりゆったりと座れる。
これは、フィット譲りの高効率パッケージを可能とした、センタータンクレイアウトによるものだ。
6.安全装備の比較
ヤリスクロスの評価は4.0点
ヴェゼルの評価は3.0点
クラストップレベルの予防安全性能を誇るヤリスクロス
ヤリスクロスの予防安全性能は、クラストップレベルの実力を誇る。
搭載しているのは、トヨタの予防安全装備パッケージである「トヨタセーフティセンス」だ。
トヨタセーフティセンスは車種によって性能や機能が異なるが、ヤリスクロスはヤリスに搭載されたものと同じものが搭載されている。
これは、最新バージョンだ。
機能については、重要な自動ブレーキ系では、昼夜の歩行者検知に加えて昼間の自転車検知が可能。
さらに、右折時の対向直進車や、右左折後の横断歩行者も検知できる。
この機能により、より多くの事故パターンに対応。
リスクを大幅に軽減してくれる。
実はトヨタの高級車には、この機能はまだ装着されていない。
つまり、今のところヤリスクロスは、トヨタの高級車以上の安全性能を持つことになる。
加えて、エアバッグが開くような衝突時に、クルマが動くことで起きる二次衝突を回避・被害軽減するセカンダリーコリジョンブレーキも搭載。
さらに、横風対応制御付きのS-VSCもトヨタで初めて搭載した。
これは、背が高いSUVは横風に弱いため、横風でもフラフラしにくいようにするためだ。
ただ、後側方車両接近警報(ブラインドスポットモニター)などがオプション設定になっているなど、微妙に物足りない部分もある。
また、クラストップレベルの実力をもつヤリスクロスだが、エントリーグレードであるX Bパッケージには、このトヨタセーフティセンスが標準装備化されていない。
オプションでの装備も不可だ。
こうした設定は、トヨタが声高にアピールしている「交通死亡事故ゼロ」という方針に反している。
エントリーグレードの価格を安く見せ、販売台数を増やしたい意向を感じさせる。
クルマは使い方を誤れば、人を傷つけてしまうことがあるもの。
そんなクルマを売る自動車メーカーは、社会的に予防安全装備を積極的に推進する責任がある。
トヨタのような世界トップレベルの自動車メーカーであれば、超重要な予防安全装備はすべてのグレードで設定してほしいところだ。
対するヴェゼルの予防安全装備パッケージは、ホンダセンシングだ。
このホンダセンシングだが、機能などはこのクラスの平均レベルといったところ。
ホンダはトヨタと異なり、全グレードに標準装化している。
ただ、やはり夜間の歩行者検知、昼間の自転車検知、右折時の対向直進車や右左折後の横断歩行者も検知などの機能はなく、ヤリスクロスには及ばない状態だ。
7.走行性能の比較
ヤリスクロスの評価は4.5点
ヴェゼルの評価は4.0点
オフロード系のヤリスクロス、オンロード重視のヴェゼル
ヤリスクロスのパワーユニットは、1.5Lハイブリッドと1.5Lガソリンの2タイプが用意されている。
まず、ハイブリッドから見ていこう。
ハイブリッドのシステム出力は116psで、数値的にはやや非力に感じる。
コンパクトカーのヤリスハイブリッドと比べると、車重も約100㎏重い。
しかし、減速比などを調整するなど力強いフィーリングとしている。
体感的には、116psという数値以上のパワフルさを感じる。また、静粛性も高い。
乗り心地もこのクラスではトップレベルといえるもので、とても快適だ。
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さらに4WD車になると、リヤサスペンションがより上級なダブルウィッシュボーン式に変更されていることから、路面の凹凸によるリヤサスペンションからの突き上げ感は、とてもマイルドになっている。
次にガソリン車だ。
直列3気筒1.5Lガソリンエンジンを搭載したヤリスクロスの出力は、120ps&145Nm。
こちらも、数値的には控えめ。
ハイブリッド車より軽量でパワフルなのだが、加速力に大きな差は感じない。
このエンジンは、優れた燃費値を誇る。
しかし、高回転ではパンチに欠け、直3エンジン特有の振動も感じる。
また、エンジン音も賑やかで、静粛性もハイブリッド車より1ランク以上下がる印象だ。
乗り心地もハイブリッド車ほどの上質感はなく、ややドタバタした感じが残る。
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ガソリン車はハイブリッド車と比べると、走りの質感がやや劣る印象があり、FF(前輪駆動)車なら、圧倒的にハイブリッドがおすすめだ。
しかし、4WDの走破性能を重視すると、ガソリン車という選択になる。
ガソリン車の4WD機能には、マルチテレインセレクトが採用されている。
これは、路面状況に応じ3つのモードから選択できる機能だ。
さらに悪路走破性という面では、ガソリン車の4WDは後輪に大きなトルクをかけられる。
ただし、ハイブリッドの4WD機能であるE-Fourの実力も、たいしたものだ。
5.3ps&52Nmという小さなモーターで後輪を駆動するE-Fourは、2つの走行モードをもつ。
ヤリスクロスハイブリッドは、170mmという最低地上高を確保していることもあり、片輪が浮くようなオフロードでも十分に走り切ることが可能だ。
一般的な使い方であれば、ハイブリッドのE-Fourでも、十分な走破性をもつだろう。
対するヴェゼルは、1.5Lハイブリッド(システム出力152ps)と、1.5Lガソリン(129ps&153Nm)、1.5Lガソリンターボ(172ps&220Nm)と3タイプのエンジンが用意されている。
どのパワーユニットも、ホンダのエンジンらしい、高回転域でもパンチのある力強さを感じさせる。
力強さという面では、1.5Lハイブリッドも1.5Lガソリンもヤリスクロスを上回っている印象だ。
8.リセールバリュー比較
ヤリスクロスの評価は4.0点
ヴェゼルの評価は4.0点
高いリセールバリューに期待大
ヤリスクロスのリセールバリューは、高くなると予想できる。
トヨタ車はほぼすべての車種が、他メーカーに比べて高めのリセールバリューになっている。
さらに人気のSUVなので、リセールバリューが下がる要素が見つからない。
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唯一、心配なのがあまりに売れすぎることだ。
新車で人気が高いモデルは、中古車でも人気が高く、一般的にはリセールバリューが高くなる。
しかし、あまりに売れすぎて中古車が一気に増えると、需要を供給が上回り、中古車価格が下がるのだ。
こうなると、当然、リセールバリューも下がる。
同じトヨタ車のアクアやプリウスが、この傾向となっている。
ヤリスクロスで、より高査定が期待できるのは、ハイブリッド車だ。
最上級グレードのZ系が高価買取となるだろう。
4WD車や純正ナビ、パワーバックドア、2トーンカラーなどのオプションが装備されていれば、さらにプラス査定の対象となる。
一方、ヴェゼルのリセールバリューは、すでに高値維持といった状態。
2016年の改良で予防安全装備であるホンダセンシングが装備されたモデルは、さらに高値傾向になっている。
ヴェゼルもやはり高いリセールバリューを維持しているグレードは、ハイブリッドの上級グレードであるZ系。
さらに、高値になっているのがスポーツグレードのハイブリッドRSだ。
ガソリン車もRS系は、高値になる。
なお、プラス査定となる装備やオプションは、純正ナビくらい。
ボディカラーは、白黒系がプラス査定になりやすい。
9.まとめ・総合評価
ヤリスクロスの総合点は32.5点/40点
ヴェゼルの総合点は29.5点/40点
総合力のヤリスクロスハイブリッド、ヴェゼルは新型待ちがベスト!?
ヤリスクロスのおすすめは、ハイブリッド車だ。
悪路走破性を重視するのであれば、ガソリン車の4WDという選択も悪くはないだろう。
ガソリン車のFF(前輪駆動)であれば、オンロードでの走りを重視したヴェゼルがよい。
ヤリスクロスハイブリッドは、世界トップレベルの燃費を誇り、優れた静粛性や乗り心地など総合力が高い。
選択に悩んだら、ヤリスクロスハイブリッドを選んでいれば間違いない。
ヴェゼルは、かなりオンロードでの使い方を重視したSUV。
スポーティなRS系は、背の高いSUVとは思えないくらい爽快な走りを楽しめる。
また、ヤリスクロスより広い室内も大きなメリットのひとつだ。
ただ、ヴェゼルは、2013年デビューと設計が古いため、多くの部分ではヤリスクロスには及ばない部分が多いのも事実。
近いうちに、4代目フィットをベースとした2代目新型ヴェゼルが登場する。
そうなると、今、あえてヴェゼルを買うメリットはあまりない。
大幅値引きが提示されたとしても、新型ヴェゼルが出るまで待つべきだろう。
どうしても、ヴェゼルというのであれば、ホンダセンシングが装備された2017年式の中古車という選択もありだ。
中古車価格も安くなってきているので、コストパフォーマンスが高い。
ヤリスクロス | ヴェゼル | |
---|---|---|
合得点(40点満点) | 32.5点 | 29.5点 |
1.燃費 | 5点 | 4点 |
2.価格 | 4点 | 3点 |
3.購入時の値引きしやすさ | 2.5点 | 4点 |
4.デザイン | 4点 | 3.5点 |
5.室内空間と使い勝手 | 4.5点 | 4点 |
6.安全装備 | 4点 | 3点 |
7.走行性能 | 4.5点 | 4点 |
8.リセールバリュー | 4点 | 4点 |
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ヤリスクロスのカタログ情報
- 令和2年8月(2020年8月)〜令和6年6月(2024年6月)
- 新車時価格
- 179.8万円〜315.6万円
ヤリスクロスの在庫が現在209件あります
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