ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

BMW Z4と姉妹車関係にある新型トヨタ GRスープラ

トヨタは、2人乗りのスポーツカーである新型GRスープラの発売を開始した。

新型トヨタ GRスープラは、BMWとの提携から生まれたモデル。
スープラのプラットフォーム(車台)やエンジン、サスペンションなどといった基本てな部分はBMW製。
主に内外装でデザインや、セッティングなどが若干異なる。

大きく違う部分はボディの形状。
スープラがクーペボディのみなのに対して、Z4はオープンボディのみの設定となっている。
ここで差別化しているわけだが、モデルサイクルのなかでスープラとZ4それぞれがクーペとオープンボディをもつと思われる。

スープラの生産は、オーストリアのマグナ・シュタイヤー社グラーツ工場で行われている。

トヨタは「Supra is Back!」と大々的にアピールしているものの、すべてがトヨタで行われたクルマではなく、これが純粋に従来のスープラと同じか? と、いう点では少々疑問が残る。

これにはやはり理由があり、スポーツカーを独自開発しても多くの販売台数を見込めるわけではなく、利益が出ないからだ。
スバルとの提携から生まれた86やBRZも基本的に同じ。

トヨタのように世界トップレベルの自動車メーカーでも、こうした選択を取るしかできないくらい、スポーツカーマーケットはシュリンクしているということなのだろう。

また、見方を変えればこうした選択ができるからこそ、スポーツカーを残しながら、高収益を上げられるともいえる。

賛否両論あるからこそスポーツカーの証といえるデザイン

新型トヨタ GRスープラの外観デザインは、とにかく個性的だ。
強烈な線と面が複雑に混じり合い、筋肉質なボディであることを感じさせるアグレッシブなデザインを採用。

レクサスも含め、トヨタには最近、こうした複雑で難解なデザインが多い。
クセが強いというべきなのか、好き嫌いが明確に出るデザインとなっている。
そのため、新型スープラのデザインに関しては賛否両論ある。

こうしたデザインアプローチは良くも悪くもある。
プリウスなどは量販車として少々先鋭過ぎたようで、マイナーチェンジでは、縦型のリヤコンビネーションランプを横型に変えるなどし、全体的にマイルドなデザインに変更された。

ただ、新型スープラは特殊なスポーツカーだ。
デザインが、誰にでもそこそこ好かれるような80点主義では、恐らくヒットしないだろう。
ある意味、新型スープラのように賛否両論を巻き起こすくらいのデザインでちょうどよいかもしれない。

新型スープラは、エアロダイナミクスにもこだわった。
リフトを抑えることに特化したデザインとされ、前後の空力バランスはスポーツカーとして最適なものとされている。

象徴的な点は、運転席と助手席の頭上部分を盛り上げたダブルバブルルーフ。
これも空気抵抗の低減に貢献している。

適度にタイトなコックピット感あふれるインテリア

インテリアはコックピット感あふれたものとなっている。

適度にタイトで、クルマとの一体感を感じさせる。
水平に軸の通ったインパネ形状は、ハイスピード時の見晴らし性や車両の姿勢変化のつかみやすさを考慮したものだ。
ダッシュボード上部に設置されたモニターは高い位置に設置されているため、視認性も良好。
走るために必要な目から入る情報が分かりやすい。

また、ドライバー正面に集中配置されたメーターやステアリングスイッチなどの視認・操作系のエレメントに、ドアトリムからコンソールのニーパッドまで繋げる新しいコクピット様式を採用。
なかなかユニークなデザインとなった。

シートは、腰を中心に身体を保持するホールド性にこだわったハイバック仕様。
インテリアデザイナーの実体験に基づいたこだわりの形状だ。

ハンドリングにこだわったボディサイズとは?

スープラは徹底的に走りにこだわった。
キレキレのハンドリング性能を目指して、全長は86よりも100mmも短いコンパクトカー並みの4380mmに抑えた。
しかし全幅は1865mmとワイド。全高は1300mm以下と低く抑えられている。
最低地上高も112mmまたは118mmで、かなり低めの設定とした。

スポーツカーとして卓越したハンドリングや安定したコーナリング姿勢を実現するため、「ホイールベース」「トレッド」「重心高」の3要素を追求したディメンションといえる。

ホイールベースとトレッドの比は1.55。
他のスポーツカーと比較して、トップレベルの小さい数値を達成したことからも、ハンドリング性能にいかにこだわったかが分かる。

コーナーリング性能に大きく影響を与える重心高も、水平対向エンジンを搭載した86よりもさらに低い設定となった。

計3タイプのエンジンを用意した新型スープラ

スープラ搭載エンジンは2機種、3タイプとった。
直列6気筒エンジンを頂点に、直列4気筒エンジンも用意。

RZグレードは直列6気筒は3.0Lのツインスクロールターボ仕様で、250kW(340ps)の最高出力を発生。
500N・mの最大トルクをわずか1600rpmという低い回転数で発生する。

2.0L直4ターボエンジンは、出力が異なる2タイプを用意。
SZ-Rグレードに搭載されるエンジンには高出力チューニングが施され、最高出力190kW(258ps)/400N・mを発生する。
標準版のSZグレードのエンジンも145kW(197ps)/320N・mを発生する。
トランスミッションは、全車に8速のスポーツATが組み合わされる。

軽快なフットワークにこだわった軽量サスペンション

スープラのサスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リヤはマルチリンクがを採用。
フロントのマクファーソンストラット式サスペンションとサブフレームはアルミニウム製とし、軽量化すると共に前後重量配分の適正化に寄与している。

また、一部グレードには減衰力をコントロールできるアダプティブバリアブルサスペンションシステムを設定。
走行モードや路面状況に応じて4輪のショックアブソーバーの減衰力を連続的に最適に制御。
優れた走行性能と乗り心地を高次元で両立させている。

さらに一部グレードには、アクティブディファレンシャルを装備。
VSC(車両安定性制御システム)と連携しながら、電子制御多板クラッチによって後輪左右間のロック率を0~100の範囲で連続的に最適制御。
高いコーナリング速度と最適なトラクション、安定性、ニュートラルなステアリング特性を実現した。

充実した安全装備とコネクティッドサービスをもつ新型スープラ

今や、歩行者検知式自動ブレーキなどの予防安全装備は、スポーツカーとはいえ必須アイテム。
新型スープラには、昼間の歩行者に加え自転車の運転者を検知し、衝突回避支援または被害低減を図るプリクラッシュセーフティ(ミリ波レーダー+単眼カメラ方式)を始め、隣車線の死角を走る車両を検知するブラインドスポットモニター、前方車両の追従走行を支援する「レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付き)、車線を逸脱しそうな際にステアリング操作をアシストするレーンディパーチャーアラートなどを装備。

また、最近のトヨタ車が積極的に勧めるコネクティッドサービスも充実。
車載通信機DCMを全車に標準搭載し、スープラ専用のコネクティッドサービス「Toyota Supra Connect」を提供。

専用のスマホアプリなどから車両の遠隔操作、確認ができるリモートサービスのほか、バッテリーの電圧低下を自動的にメールでお知らせするバッテリーガード、運転中に端末に触れることなくiPhoneを操作することができるApple Car Playにも対応している。

新型スープラの選び方(グレード選び)

スープラのグレードはRZ、SZ-R、SZの3グレードの構成。
価格は、2.0LターボのベースグレードとなるSZが490万円、ハイパフォーマンス仕様のエンジンを搭載するSZ-Rが590万円、3.0Lエンジンを搭載する最上級グレードのRZが690万円という設定だ。

前述したアダプティブバリアブルサスペンションシステムとアクティブディファレンシャルはRZとSZ-Rに設定されていて、SZには設定がない。

グレード間の装備の違いは少ない。シートがRZとSZ-Rはアルカンターラ+本革のパワーシート、ヒーター付きシートになるのに対し、SZではマニュアル操作のファブリックシートになる。

ブレーキはRZのみブレンボ製。ペダルもスポーツペダルが装備される。ほかにRZとSZ-Rはカラーヘッドアップディスプレーが装備され、インテリアにカーボン製のオーナメントパネルが採用される。「Toyota Supra ConnectのHDDナビゲーション」は全車に標準だ。

同じ3.0LターボモデルをBMW Z4と比べると、ボディ形状や多少装備差があるとはいえ、スープラはZ4より145万円も安い。
オープンかクーペかという違いがあるにせよ、スープラは意外なほど安価といえるだろう。

価格重視か走り重視で選び方は変わる

スープラはグレードによって100万円ずつ予算が変わる。

そのため、予算の優先順位が高いのなら、比較的選びやすい。
ただ、スープラがもつ本来の走行性能を味わいたいのであれば、SZ-RかRZということになる。

直4エンジン搭載車のSZ-Rは、4気筒エンジンということもあり、より軽快な走りが楽しめる。
また、直6ターボ車のRZはパワフルで豪快な走行性能が魅力だ。
それほど、試乗車があるとは思えないが、しっかりと試乗してから決めるといいだろう。

また、こうしたスポーツモデルは、長期間に渡り高いリセールバリューが期待できる。
とくに、最上級グレードはそうした傾向が強い。
そうなると、やはり最上級グレードであるRZを選ぶとよいだろう。

新型トヨタ GRスープラ価格、スペックなど

価格とスペックは以下の通り。

スープラSZ 4,900,000円
スープラSZ-R 5,900,000円
スープラRZ 6,900,000円

代表グレードはスープラRZ。

  • 全長 4,380mm 全幅 1,865mm 全高 1,290mm
  • ホイールベース 2,470mm
  • トレッド フロント 1,595mm リヤ 1,590mm
  • 最低地上高 112mm
  • 車両重量 1,520kg
  • エンジン  直列6気筒DOHCツイン・スクロール・ターボチャージャー
  • 排気量 2,997cc
  • 最高出力 250[340]/5,000(kW[PS]/rpm)
  • 最大トルク 500[51.0]/1,600-4,500(N・m[kgf・m]/rpm)
  • トランスミッション 8速スポーツAT
  • WLTCモード燃費 12.2km/L
  • サスペンション F:マクファーソンストラット R:マルチリンク
  • タイヤ F: 255/35ZR19 R:275/35ZR19