1. 目次
  2. ■ 燃費、安全装備にと競争力に欠けるeKシリーズ
  3. ■ 横滑り防止装置を標準装備化した一部改良
  4. ■ コストパフォーマンスでライバルを圧倒!


 

燃費、安全装備にと競争力に欠けるeKシリーズ



三菱eKワゴン/eKスペース三菱は軽自動車のeKワゴンとeKスペースを一部改良。同時に特別仕様車「PLUS Edition(プラス エディション)」を新設定し発売を開始した。

現行の三菱eKワゴンは、3代目のモデルでハイト系ワゴンと呼ばれるジャンルに属している。このeKワゴンがデビューしたのは2013年。このモデルから、日産との軽自動車の合弁会社NMKVによる初のモデルとなった。そのため、日産デイズとデイズルークスとは姉妹車関係にある。

その後、2014年にはスーパーハイト系というジャンルに属する背高のeKスペースが発売された。このモデルから、低速域の自動ブレーキであるe-Assistが用意された。

eKワゴン、eKスペースが属する軽自動車は、スズキにダイハツ、ホンダが常に激しい戦いを繰り広げている。燃費や安全性能、装備など常にアップデートされている。eKシリーズもライバルに負けないように、毎年のように改良が加えられてきた。

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燃費偽装問題で販売台数急落


しかし、eKシリーズには大きな事件が待っていた。2016年に燃費偽装問題が発覚したのだ。これにより、三菱のブランド価値は失墜。販売中止にまで追い込まれた。その後、再び燃費を正しく計測し直し販売が再開されたものの、燃費値はライバルに対して大きく引き離された。

ブランド価値も落ちたこともあり、大きく販売台数を落とすことになる。eKシリーズは競争力失い、フルモデルチェンジまでいかに延命措置が取られるかという状況だった。その延命処置の手法もほとんどない状態だ。

 

横滑り防止装置を標準装備化した一部改良


eKシリーズの一部改良では、横滑り防止装置であるアクティブスタビリティコントロール(ASC)が全車標準装備化された。これは、自ら積極的に安全性能を上げるため標準装備化したというよりは、装備の義務化期限が迫ってきたことを受けての対応といえる。

すでに、横滑り防止装置を標準装備化したグレードが販売されていたのだから、標準装備化するのは難しいことではない。安全を重要視するのであれば、義務化の期限ギリギリまで待つことなく装備すべきだった。こうした姿勢もブランド価値を下げる要因のひとつだ。

走行性能面では、ロールを抑えて走行安定性を向上させるフロントスタビライザーが標準装備された。

横滑り防止装置やフロントスタビライザーの標準装備化により、eKシリーズはようやくライバル車と同等レベルになった。苦しいのは、ライバルの対してeKシリーズが優れているという部分があまりない点だ。今回の一部改良では、ライバルに対して同等の競争力があるとはいいにくい。

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コストパフォーマンスでライバルを圧倒!


5123-3ライバル車に対して競争力があるとは言えないeKシリーズ。今のeKシリーズにできることとは何か? そんな疑問に単純明快な回答が新設定された特別仕様車「PLUS Edition」だ。

特別仕様車「PLUS Edition」は、eKワゴンは「M」、「M e-Assist」、eKスペースは「カスタムT Safety Package」をベースとした。装備内容は、ステアリングオーディオリモコンスイッチを採用。さらに、後席でもより良いサウンドを楽しめるようにリヤスピーカーを装備した。eKスペースの「カスタムT Safety PLUS Edition」には、より高音質を楽しめるツイーターも装着した。

 

燃費で劣っても元が取れる価格設定


そして、三菱が出した単純明快な回答は、「PLUS Edition」を購入すると「特別仕様車専用ワイド2DINナビゲーション(ハイスペックモデル)」(税込179,280円相当)が無料でプレゼントというものだ。つまり、コストパフォーマンスでライバル車を上回るということになる。

特別仕様車の価格は、eKワゴン M e-Assist PLUS Editionで、驚きの1,183,680円。これは通常のM e-Assistグレードと同じ価格なのだ。これは、なかなか買い得感がある。

約18万円以上の装備がプラスされ価格が据え置きというインパクトは大きい。これなら、多少燃費が悪くても心が揺れる。そもそも、燃費差で18万円分の元を取るのは容易ではないからだ。購入時の予算を重視という買い方なら、eKシリーズという選択肢もありになる。なかなか分かりやすい販売戦略だ。

 

ディーラー下取りではなく買取店での査定を


ただし、eKシリーズを買う場合、注意しなくてはならないことがある。それは、リセールバリューだ。eKシリーズは、中古車でも人気がなくリセールバリューは期待できないからだ。つまり、短期の乗り換えではリスクが高くなるだけなのだ。

こうしたことを回避するためには、あくまで乗り潰すことが前提になる。また、三菱のディーラーは下取り車の処理能力も微妙。下取り車の価格が安くなることも十分考えられるので、下取り車は必ず買取り店で査定しておく必要がある。しっかりとライバル車と競合させて、一定の値引きを獲得できれば、さらにコストパフォーマンスに優れた軽自動車になるだろう。

■三菱eKシリーズ特別仕様車「PLUS Edition」の価格
■eKワゴン
・M PLUS Edition 2WD 1,155,600円/4WD 1,262,520円
・M e-Assist PLUS Edition 2WD 1,183,680円/4WD 1,290,600円

■eKスペース
・カスタムT Safety PLUS Edition 2WD 1,828,440円/4WD 1,935,360円

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。

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