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一枚の名車絵 第23回 フェラーリ BB512(Ferrari BB512)


ある一定の年齢層には響く話なのですが、彼ら(そして僕ら)が子供だったとき、スーパーカーブームというのが巻き起こりました。子供たちは必死にスーパーカーの名前だけでなく、馬力やエンジンの気筒数、そして最高速度を覚えたものです。

中でもやはり多くの子供を虜にしたのが、ランボルギーニ カウンタックとフェラーリ BBでした。どちらも12気筒エンジンをミッドマウント(MR)し、スーパーカーの代名詞でもあったリトラクタブル・ヘッドライトを備えたスーパーカーでしたが、カウンタックの最高速度は300km/h、BBは302km/hと云われていたため、どちらがすごいか、速いかの論争が子供の中で巻き起こっていました。

これらの最高速数値はメーカー公表値で、実際にはそこまでの速度に達していないと云われており、BBの最終形である「BB512i」では280km/hという現実的な数字になっています。

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1973年、FRレイアウトだった365GTB/4“デイトナ”の後継、フェラーリの旗艦としてMRレイアウトを採用して登場したのがBBです。当初は365GT4/BBと呼ばれ、4.4リットル12気筒エンジンの1気筒あたりの排気量を車名にしていました。

1976年にはエンジンが5リットルに拡大された512BBに進化しますが、車名の数字は5リットル12気筒エンジンを表しています。

BBはベルリネッタ・ボクサー(Berlinetta Boxer )の略で、ベルリネッタはクーペ、ボクサーは水平対抗エンジンを表していました。余談ですが車名に「ボクサー」が入るので水平対抗エンジンと思われがちですが、厳密には「180度V型エンジン」なのです。


◆子供たちを熱狂させたピニンファリーナの傑作


ピニンファリーナの傑作と誉れ高いBBのボディは365、512ともに基本的フォルムは変わっていませんが、リアランプが丸形6個から4個に、リアタイヤ手前にエアスクープ(NACAダクト)が新設されるなど細部に小変更を受けていて、その違いを知っているか否か、などということでも子供たちは熱狂しました。

copyright_izuru_endo_2017_m023_BB512_1280_748(クリックで拡大)1981年には燃料供給がそれまでの4キャブレターからボッシュのKジェトロニック燃料噴射(インジェクション)に変更された「BB512i」が登場。1000台以上が生産されるヒット作となりました。馬力は最初の365GT4/BBでは385psだったものの、BB512では360psにダウン、BB512iはさらに340psという数値になりますが、逆に乗りやすさはどんどん増していきました。

そして1984年、大胆なデザインをまとった新たな旗艦、「テスタロッサ」が衝撃的なデビューを果たすと、日本中の子供たち(そして大人たち)を熱狂させたBBもいよいよカタログから姿を消していくことになりました。

【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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