izuru_endo_title101

「気になるくるま」第11回 プジョー 205


ひとことでくるまと言っても、誰にも知られていないようなマイナーなものから、みんなの憧れのようなスーパーカーまで、実に様々です。そんなクルマたちの中から、マニアックカー・マニアでもある遠藤イヅルが、独断と偏見で選び出したくるまたちをイラストとともにみなさんにお送りいたします。第11回は、いまなお「プジョーといえばこれ」と思い出す方も多いと思われる、同社を代表するコンパクトハッチ「205」をお送りいたします。


◆日本にプジョーのイメージを定着させたヒット車「205」


それまでのプジョーに対する「地味だけど堅実で良質な渋いクルマを長年延々と作るメーカー」という印象を一新させ、“若々しくてスポーティ”というイメージを作り上げた一台がこの205です。1983年に発売後欧州で好調なセールスを記録した205は、日本には1986年からオースチン・ローバー・ジャパン(ARJ)の手で本格的な輸入が開始されていますが、日本でもヒット作となることに成功しました。イラストも205GTIを描いています。

copyright_izuru_endo_2017_k011_205_1280_848

日本における販売の主軸は205を代表するホットハッチ、「GTI」と、オシャレなイメージでこちらも一定の販売数を記録したオープンモデル「CTI」でした。

GTIは1.6リットルエンジンで登場し、後に1.9リットルに排気量が拡大されましたが、DOHCもターボもないごく一般的なSOHC8バルブエンジンでした。パワーも1.9リットルエンジンで120psです。決して高性能なエンジンではありません。でも、205GTIは小さくて軽い車体にしなやかなのに粘る足回りと素晴らしいハンドリングを持った、とても気持ちのいいクルマだったのです。205はプジョーの日本での知名度アップにも大きく貢献しました。


◆欧州ではごく普通の大衆車


なお、日本では205といえば「GTI」ですが、実際のところ205は欧州ではごくふつうの大衆車で、下は1リットルや1.1リットルエンジンのモデルまでありました。グレードもXE、GL、XR、SR、XTなどがあり、膨大なバリエーションを誇っていました。

copyright_izuru_endo_2017_k011_205_1280_848(クリックで拡大)日本にはGTI以外では「Automatic」、「SRD(ディーゼル)」、「XS」、日本専売車「SI(エスアイ)」、などの実用車である205らしい地味目なモデルや、「ラコステ」や、1992年のル・マンでプジョー905が優勝したことを記念した「ブロンシュ」などの限定車も輸入されていますが、いずれも極少ない台数に留まりました。

205は1998年まで製造されましたが、1994年に205よりひとまわり大きくなって実施的な発展後継車の306が登場したことでかなり車種が整理され、306に事実上道を譲るカタチとなっています。1998年には数字上の後継車206が登場、こちらも日本では大ヒット作となったのは記憶に新しいところです。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

>> 過去のイラスト記事一覧はコチラをクリック