ホンダは、スーパーハイト系の軽自動車であるN-BOXをこの秋にフルモデルチェンジすると発表。新型N-BOXの一部をホンダのホームページ上で先行公開した。

ホンダN-BOXの先行公開HPはコチラ▶︎http://www.honda.co.jp/Nbox/new/

軽自動車販売台数ナンバー1の座を守り続けるN-BOXの実力とは?


「日本にベストな新しいのりものを創造したい」という想いを込めた新型軽乗用車「N」シリーズの第1弾モデルとして2011年にホンダN-BOXは登場した。N-BOXのプラットフォーム(車台)は、フィットにも採用され優れたスペース効率を誇る「センタータンクレイアウト」をベースに新開発された。その結果、N-BOXは当時の軽乗用車としては最大級となる室内空間を生み出した。背の高さを生かし、リヤシートを折り畳めば自転車さえも積み込めた。

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いち早く先進的な安全装備を取り入れたN-BOX

また、当時の軽自動車としては、安全装備にも優れていた。標準装備化が義務化される横滑り防止装置(VSA)をいち早く標準装備化していた。これは、安全面だけでなく、背の高いスーパーハイト系の軽自動車は横転の危険性があるため、それを避ける狙いもあった。

そして、モデル途中からは、低速域の簡易型自動ブレーキ「シティブレーキアクティブシステム」にサイドエアバッグ、サイドカーテンエアバッグを安価で装備できる「あんしんパッケージ」を用意。現在では、軽自動車でも歩行者検知式の自動ブレーキが採用されているが、当時としては、このあんしんパッケージを装備すると、ライバル車よりも高い安全性能を誇る軽自動車として評価された。

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N-BOXが売れ続けていた理由は?


新エンジンを搭載したN-BOXだったが、燃費ではナンバー1にはなれなかったものの、広さや安全性、デザインなどが評価され、デビュー直後から人気モデルとなる。

ホンダは当時、超円高で輸出が不調で国内生産を縮小。ホンダの基幹工場である鈴鹿工場は、存続の危機に陥ってしまった。ホンダは、鈴鹿工場で国内専用車Nシリーズを生産することで、鈴鹿工場の存続をかけたのだ。当然、あらゆる手段でN-BOXの販売増にエネルギーを傾けていた。

燃費ではN-BOXに買っていたスペーシアは、カスタムで失敗

また、燃費性能で負けていたスズキ スペーシアがカスタム系のデザインが不評で自滅するという追い風もあった。また、N-BOXには、N-BOX+とN-BOXスラッシュという派生車もあり、販売台数アップに寄与した。

そして、ダイハツ タントと接戦を繰り広げながら、N-BOXシリーズの累計販売台数は107万台を超る販売台数を記録。販売台数が衰えるはずであるモデル末期でも、値引きが大きいこともあり2015年、2016年と2年連続で軽4輪車新車販売台数 第1位を獲得する。

これだけ売れていれば、フルモデルチェンジなどしなくてもいいように思えるが、ホンダはさらに新型N-BOXを投入することで、軽自動車でより強い国内販売の基盤を作ることを選択した。

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新型N-BOX、どう変わる?


新型ホンダN-BOXは、今のところ公開された画像は、わずか1枚のみ。フロントフェイス半分が写っている画像だ。恐らく標準モデルと思われ、従来モデルのようにやや笑ったような顔つきであることが分かる。第1印象はキープコンセプトのようだ。注目したいのは、丸型のリングライト。なかなか個性的なライトだ。

全高は現行の1,780㎜より高くなるのか?

注目したいのが、全高だ。現在の全高は1,780㎜。このクラスの軽自動車は、ミニバンと同様に大きく見えることが重要とされる。しかし、むやみに全高を高くすると、クルマとしての走行性能は百害あって一利なし状態になる。全高が高くなると、まず重心高が高くなる。横幅が決まっている軽自動車だと、まず横風に弱く不安定になり、カーブでの傾きも大きくなり、事故などでは横転しやすくなる。また、風の抵抗が大きくなり、車重も増えることから燃費も悪くなるのだ。

全高を高めるとこうしたデメリットが大きくなるのだが、顧客のニーズは高い全高による大きく見えるスタイリングと広い室内だ。このあたりをどうバランスさせるかが重要。走行性能など、それなりでいいというユーザーの声を反映するならば、全高は現行より高くなるかもしれない。こうした部分をホンダが技術的にどう解決するかにも注目したい。

歩行者検知式自動ブレーキなどの予防安全装備「ホンダセンシング」は導入されるか?


安全装備面では、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「ホンダセンシング」が用意されるだろう。現行の低速域の簡易型自動ブレーキでは、もはや役不足で高齢者の事故にも対応することは難しいからだ。現在のホンダセンシングの性能がそのまま使えるとなると、このクラスではトップレベルの安全性能をもつことになる。

ただ、こうしたホンダセンシングも全車標準装備化でないと意味がない。事故は誰もが起こす可能性がある。これを防ぐ役割をもつ安全装備をオプションにして、顧客の予算次第としてしまうのは、人を殺める可能性がある製品を売るメーカーが自ら安全に関して責任を放棄しているのと同じだからだ。

ホンダの安全思想は、セーフティ フォー エブリワン。「事故に遭わない社会」を目指すとしている。これを実現するには、標準装備化しかないはずだ。

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。

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