日産ノート

日産は、コンパクトカーのノートに新パワーユニットであるハイブリッドシステムを採用した「ノートe-POWER(イー・パワー)」の発売を開始。同時に、ガソリン車も仕様向上が図られた。

日産ノートは、2012年にフルモデルチェンジし2代目となった。すでに、モデル末期に入ってきているが、シリーズハイブリッド車であるノートe-POWERを投入し、更なる販売増を狙う。日産はノートシリーズで、e-POWERの比率を約6割と見込んでおり、他社に取られていたハイブリッド車を好む顧客を取り込みたい考えだ。

‖1.2Lエンジンを使ったシリーズハイブリッドシステムを搭載

ノートe-POWERは、シリーズハイブリッドシステムを採用している。ただし、すでにあるシリーズハイブリッドシステムを搭載したモデルとは若干方式が異なる。他社のシリーズハイブリッドシステムは、エンジンが2通りの役割を果たす。メインは発電としての機能。しかし、エンジンの負荷が小さい高速巡航時など、発電よりエンジン走行の方が効率がよい場合にはエンジンの力で走ったりする。また、よりパワフルな走りを望むときは、エンジンの力とモーターの力を同時に使用することもある。しかし、ノートe-POWERのエンジンは、発電のみ。これは、よりEVらしさを出すためというよりは、機能を複雑にして高価なクルマにするのではなく、シンプルな構造としてより安価な価格設定をするためのコストダウンの一環だろう。

日産ノートノートe-POWERに搭載される発電用エンジンは、発電用に最適チューニングされた1.2Lのガソリン。組み合わされるモーターは、リーフとほぼ同じ最高出力 80kW(109PS)、最大トルク 254Nm発揮するEM57モーターが搭載されている。ここで注目したいのが、ノートe-POWERの車重。車重はわずか1,220㎏。なんと、リーフに比べ260㎏も軽いのだ。リーフでも十分過ぎるほどの加速感を誇っていたこともあり、同じモーターを使い軽量なノートe-POWERの加速力が、どれだけのものか期待が高まる。

リーフの加速力をも超える瞬発力を誇る可能性が高いノートe-POWERには、更に走行性能を際立たせたモデルとなるニスモが用意されている。今冬登場ということなので、このモデルも注目だ。そして、オーテックジャパンが用意した「モード・プレミア」など、選択肢が多いのもノートの魅力のひとつだ。モード・プレミアには、ツーリングパッケージと呼ばれる仕様があり、ボディ補強や専用チューニングサスペンション、専用VCMなどが装備され、安心感と快適性を高める仕様となっている。


‖低価格のワケは、ボンネットの中にあり!

さて、ノートe-POWERのボンネットの中を覗くと、エンジンとモーター、発電機、インバーターなどが隙間が無いくらいギッチリと詰め込まれている。ボンネットに収まるアイテムは、ガソリン車に比べかなり増えていることから、かなりのフロントヘビーなイメージが強い。前後重量配分なのか、ボンネット内に搭載できなかったのかは不明だが、12Vの通常バッテリーは後方の荷室へと移設されている。

日産ノートそして、シリーズハイブリッドシステムに重要なリチウムイオンバッテリーは、フロントシート下付近に設置された。これで、若干、フロントヘビー感は解消される。ノートe-POWERのバッテリー容量は、わずか約1.5Kwh。かなり容量は小さい。日産によると、満充電で数キロ程度のEV走行距離しかできないという。つまり、このことから、ノートe-POWERは、モーターの出力が小さいときはなるべくEVで走り、モーター出力が大きい時には、ほぼエンジンが始動し発電しながら走るシリーズハイブリッド車といえるだろう。当然、バッテリー容量が小さいので、外部からの給電機能はない。バッテリー容量を小さくしたり、外部からの充電機能が無いことで、大幅なコストダウンを図り、安価な価格での販売が可能になった。

‖理由その二。難しいが慣れれば燃費軽減、ワンペダルドライブ式

日産には、リーフやエクストレイルハイブリッドに採用されている協調回生ブレーキという優れた技術がある。この技術は、ブレーキの踏み込み量やスピード、クルマの速度などをコンピューターが判断。ドライバーが望む減速度をモーターの回生ブレーキで自動でコントロール。ドライバーは、ブレーキを踏んでいても、実際にはブレーキは使われておらず、回生ブレーキのコントロールで最適な減速度を出す。通常運転の場合、ほとんど止まる寸前しかブレーキが使われていないという機能だ。

日産ノートこの技術の優位性は、ドライバーが普通のクルマと同じように操作しながら、回生ブレーキの効率を最大化できるというものだ。ドライバーに特別な運転テクニックを求めない優れた技術。運転が下手なドライバーでも、下手な運転なりに最も効率のよいエネルギー回生が可能のため燃費も良くなる。しかし、こうした技術がノートe-POWERには使われていない。これも、より安価な価格設定とするためだろう。

代わりに、ノートe-POWERは、割り切ってワンペダルドライブという方式にした。これは、ECOモードやSモード時にはアクセルを戻すと通常の約3倍という減速度が発生する。これは回生ブレーキによるもの。0.1Gを超える減速度が発生する場合は、追突防止のためブレーキランプが点灯する。

この運転が普通の人には難しい。ほとんどの人が、アクセルをスイッチのようにONとOFFしか使えないからだ。こういう運転しかできない人は、ノーマルモードを使用すればいいが、それほどエネルギー回生ができないため燃費は伸びない。ただし、微妙なアクセルコントロールができるようになれば、停止までアクセル操作ひとつで可能となる。これは、EVであるBMW i3と同じ。このワンペダルドライブが上手に使えるようになると、約7割もペダルの踏みかえが減り疲労軽減にも役立つという。

‖ノートe-POWERの選び方は?

日産ノートノートe-POWERは、先進の技術を使いながら大胆なコストダウンにより、e-POWER Sグレードで1,772,280円からというガソリン車並みの価格を実現した。このグレードは、クラストップの37.2㎞/Lを達成している。
ただし、e-POWER Sグレードは、オトリグレード。販促やCM用の燃費・価格訴求用の専用グレードと考えていい。自動ブレーキもなければ、エアコンすらなく、燃料タンクも軽量化のためか他のモデルより小さい。そんな状況なので、このグレードは選択肢から外れる。実際の売れ筋グレードは、中間グレードのe-POWER X 1,959,120円からとなる。燃費値もやや落ちて34.0㎞/L。それでも、クラストップだ。ライバルとなるアクアやフィットもこうしたオトリグレードを用意しており、一般の顧客を無視した燃費争いを繰り広げている。誰も買わないこのオトリグレードのために、わざわざコストをかけ専用パーツを用意している。こうした見せかけの燃費にだまされて購入してはならない。

■オススメは、e-POWER X プラス、セットオプション

グレード選びは、e-POWER Xをベースとして、セットオプションであるインテリジェントアラウンドビューモニター(移動物 検知機能付)+スマート・ルームミラー(インテリジェントアラウンドビューモニター表示機能付)+踏み間違い衝突防止アシスト+フロント&バックソナー+ヒーター付ドアミラーを選ぶといい。これに、カーテンエアバッグを装備すれば、クラストップレベルの高い安全性能を得ることができる。

■理由その三。リセールバリューが高い!

また、これからのクルマの人気を考えても、ノートはe-POWERがベストの選択だ。今、中古車マーケットでは、アクアやプリウスの中古車が大量に発生。両車とも、人気の高いハイブリッド車なのに、かなり買い得感ある中古車価格になっている。こうなると、今、あえてガソリン車を買ってもリセールバリューは期待できない。一定のリセールバリューが期待できるのは、ハイブリッド車のみで、ガソリン車はドンドンその価値を失っていくだろう。そう考えれば、高いリセールバリューが期待できるe-POWERを買ったほうが結果的にメリットがある。

さて、ノートe-POWERの投入と同時に、ガソリン車のノートも改良された。エクステリア・インテリアに新デザインを採用。スマート・ルームミラー(インテリジェントアラウンドビューモニター表示機能付)追加により安全装備を向上。さらに、助手席バニティミラーを新たに装備するなど、使い勝手を向上させている。

‖日産ノート e-POWERの価格


・HR12DE(1.2L) 2WD
S 1,393,200円
X 1,495,800円
MEDALIST X 1,627,560円

・HR12DE(1.2L) 4WD
X FOUR 1,711,800円/スマートセーフティエディション 1,827,360円
MEDALIST X FOUR 1,843,560/スマートセーフティエディション 1,929,960円

・HR12DDR(1.2Lスーパーチャージャー)2WD
X DIG-S 1,738,800円
MEDALIST 1,985,040円

・HR12DE-EM57(モーター) 2WD
e-POWER S 1,772,280円
e-POWER X 1,959,120円
e-POWER MEDALIST 2,244,240円