マツダCX-3「ライバルのヴェゼルに3倍以上の差を付けられ大敗している理由とは?」

マツダは、コンパクトSUVであるCX-3に一部改良を施した。また、同時に特別仕様車「XD Noble Brown(クロスディー・ノーブル・ブラウン)」を11月24日より販売を開始する。

‖ジュークやヴェゼルと競う、良いトコ尽くしのコンパクトSUV

マツダCX-3は、2015年2月に登場した。CX-3は、基本骨格などデミオをベースとしたモデルだ。しかし、若干ボディサイズはアップされており、全長4,275×全幅1,765×全高1,550、ホイールベース2,570mmとなっており、デミオよりひと回り大きいといった印象だ。国産車でのライバルは、日産ジュークやホンダ ヴェゼルだ。

立体駐車場OKのサイズ

こうしたライバルとの大きな違いは2つ。1つ目は、CX-3の全高が1,550㎜であること。これは、都市部で多い立体駐車場の全高制限内。都市部のマンションなどで立体駐車場を使う顧客が、駐車場の全高制限で車庫証明が取れないことから、購入を断念することがないように配慮されている。全高を低くしたことで、スタイリッシュなフォルムに仕上がっているのも特徴。

燃料コストは最安なのに、最もパワフル

そして、2つ目の大きな違いはパワーユニット。CX-3には、国内のこのクラスで唯一となるクリーンディーゼルエンジンが搭載されている。そして、CX-3は、大胆にも1.5Lのクリーンディーゼルエンジンのみの設定となっている。このクリーンディーゼルエンジンは、デミオのエンジンと基本は共通だが、若干パワーアップされており77kW&270Nmを発揮。270Nmという大トルクは、2.7Lガソリン車並み。コンパクトSUVであるCX-3には十分すぎるトルクだ。

マツダCX-3クリーンディーゼルエンジンの魅力は、燃料経済性。燃費は、最も優れたモデルで25.0㎞/L。ヴェゼルのハイブリッド車とは僅差で負けている。しかし、クリーンディーゼルエンジンは、燃料に軽油を使う。軽油はガソリンに比べ20円/L前後価格が安い。そのため、ヴェゼルと比べても多少燃費で負けていても燃料費という視点では、CX-3の方が同等か優れているのだ。しかも、270Nmという大トルクは、ヴェゼルを上回る力強さをもつ。

‖なのに、売れていないCX-3。改良で起死回生をはかる!

しかし、CX-3の国内販売は苦戦中だ。発売時の月間販売目標台数は3,000台。直近では2,000台売るのも厳しい状況が続いている。2016年1~6月の販売台数は、ヴェゼルが39,183台に対して、CX-3は12,429台と3倍以上の差が付けられている。

優れた走りの質感を追求

今回の改良では、まず他のモデルでも投入されたGベクタリングコントロールが全車に標準装備化された。この機能は、ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを緻密に変化させ、横方向と前後方向の加速度を統合的にコントロールする。乗員にかかる加速度の変化をより滑らかにつなぐことで、体の揺れが減り、乗り心地も改善する。とくに、運転技術が未熟なドライバーや、そもそも運転が上手くなりたいなどと考えたこともないドライバーでも運転が上手くなったように感じる技術だ。ほとんどのドライバーが、このGベクタリングコントロールの恩恵を受けることができる。

ただ、乗り心地が良すぎて弊害も・・・

マツダCX-3ただ、人馬一体を目指すマツダの考え方とは、微妙に食い違う。本来、クルマの運転が上手くなりたいと考えるドライバーは、こうしたGのコントロールを自ら練習し覚える。ところが、機械が勝手にやってしまっては、ドライバーの成長を促すことができない。この状態では、能力の高い馬に乗せられている未熟な騎手といったところだ。運転が上手くなりたいドライ―バーにとっては、余計なお世話になりかねない。人馬一体を目指すなら、せめてONとOFF機能が欲しい。

また、より上質な走りの質感を求め、クリーンディーゼルエンジン特有の不快な音を抑制。音の周波数帯に着目し、燃料噴射タイミングを0.1ミリ秒単位で制御することで、ノック音の発生そのものを抑制する「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」を全車標準装備した。さらに、リフトゲートのガラスの板厚アップ、遮音・吸音材の追加採用などにより、風騒音やロードノイズを抑制。車室内での会話のしやすさを向上。小さな高級SUVとしての価値を高める快適な室内空間としている。

歩行者検知式自動ブレーキが標準装備!安全性能もライバルを超えた!

今回の改良では、歩行者検知式自動ブレーキである「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(アドバンストSCBS)」が全車に標準装備化された。従来の検知対象を車両のみから、歩行者まで拡大。作動速度域も従来の約4~30km/hから、車両検知で約4~80km/h、歩行者検知で10~80km/hまで拡大している。歩行者との衝突事故は、30㎞/hを超えたあたりから急速に致死率がアップするだけに、より高い速度からの作動する自動ブレーキが望ましい。80㎞/hから歩行者に減速できる自動ブレーキは、交通死亡事故減に大きく貢献してくれるだろう。

マツダCX-3また、高く評価したいのは全車標準装備ということだ。クルマは、扱い方を間違うと人を殺める凶器となる。いつ、どこで加害者になるかは分からない。こうした装備をオプションとして「顧客の財布の中身次第」とするのは、凶器になるかもしれないものを製造するメーカーが自らの責任を顧客に負わせているのと等しい。歩行者を守れる技術があり、10万円前後の価格で装備できるのであれば、全車標準装備化しコストを下げる努力をすべきだからだ。そういう意味で、CX-3は高く評価したい。


小さな高級SUV、特別仕様車「XD Noble Brown」も新登場!

こうした改良と同時に、特別仕様車「XD Noble Brown」が投入された。「先鋭と上質」をアーティスティックに研ぎ澄ませたという特別仕様車だ。CX-3がもつ上質感をさらに引き延ばした感がある内装が魅力的だ。インテリアは、ブラウンの空間にグレーのアクセントと硬質な金属加飾を組み合わせることで意外性を感じさせ、先鋭感を印象づけるインテリアを実現。シート素材に、しっとりとしたなめらかな触感の高級革ナッパレザーと質感高いグランリュクス(スエード調人工皮革)を採用。高輝度ダーク塗装を施したアルミホイールを採用し、精悍なスタイルを強調した。


‖多くの装備・制御追加ながら、価格はほぼ据え置き!

マツダCX-3今回の改良では、歩行者検知式自動ブレーキやGベクタリングコントロールなど、装備や制御の向上が図られた。歩行者検知式自動ブレーキだけでも、10万円くらいはする装備だ。そう考えると、少なくても10万円程度価格アップしてもおかしくはないが、価格はほぼ据え置きとなった。実質、価格引き下げのようなものだ。

売れなかった原因は、高価さ

これは、CX-3が売れない理由のひとつとなっている高価な価格の改善とみていいだろう。CX-3は、装備や質感が高く、高価なクリーンディーゼルエンジンを搭載しているためライバル車より価格はやや高め。クリーンディーゼルエンジンのメリットやパフォーマンスをしっかりと理解できていれば、ある程度納得いく。しかし、一番多いクルマに詳しくない顧客にとっては、その価値が上手く伝わっていない。その状況下で、これ以上の価格アップは、ますますジリ貧となる可能性が高いからだ。

高性能でこの価格。ますます買う価値のある車になった

我々顧客側から見れば、より良いクルマが安くなるのはメリットがある。高価で良いクルマというのは当たり前だからだ。今回の価格据え置きにより、装備面まで含めライバル車と比べれば、ライバルに対して競争力が出てきた。今後の販売にも期待がもてる。

‖ずばり、選ぶならどのグレード?

マツダCX-3の選び方。エンジンはクリーンディーゼルのみなので、好みの装備があるかないかが選ぶポイントとなる。歩行者検知式自動ブレーキ、サイド&カーテンエアバッグなどの基本的な安全装備は、標準装備化されているので、どのグレードを選んでも安心できる。予算重視というのであれば、エントリグレードのXDでも十分。豪華装備は好みで選ぶとして、より安全性を高める装備であるブラインド・スポット・モニタリングや車線逸脱警報システムなどがセットになったセーフティパッケージがお勧めだ。

■マツダCX-3特別仕様車XD Noble Brown価格

・2WD 6AT/6MT 2,840,400円
・4WD 6AT/6MT 3,066,400円

■マツダCX-3価格
・XD 2WD 6AT/6MT 2,376,000円/4WD 6AT/6MT 2,602,000円
・XD PROACTIVE 2WD 6AT/6MT 2,592,000円/4WD 6AT/6MT 2,818,000円
・XD L Package 2WD 6AT/6MT 2,808,000円/4WD 6AT/6MT 3,034,000円