<なんと、直4 2.0Lターボへ大胆ダウンサイジング! PHV化で42㎞のEV走行が可能! BMW 740e iPerformance>

BMW7シリーズBMWは、フラッグシップモデルでセダンの7シリーズのPHVモデルとなるBMW740e iパフォーマンス(Performance)の発売を開始した。


‖7シリーズ6代目に新規追加

7シリーズは、2015年10月に登場。6世代目の7シリーズとなったこのモデルは、カーボンファイバー強化樹脂(CFRP)を採用した革新的ボディ構造「カーボン・コア」が採用された。カーボンファイバーを採用したことにより、軽量化と強固なキャビンを実現。この先進性の高いカーボンボディと同様に、LEDヘッドライトに比べ2倍もの照射距離を実現した次世代のライト技術「BMWレーザーライト」、ドライバーの手の動きを認識して車載コントロール・システムの操作が可能な「ジェスチャー・コントロール」、車外から遠隔操作で駐車することができる「リモート・パーキング」など、量産車初の革新的機能を数多く採用。フラッグシップモデルに相応しい、先進技術の塊となっている。

今回新たに投入された740e iパフォーマンスは、環境時代に対応したPHV高級セダンだ。搭載されるエンジンは、なんと直4の2.0Lターボ。思い切ったダウンサイジングが施された。このクラスは、V6よりV8、V8よりV12といったように、多気筒エンジンが好まれる傾向がある。より数字の大きい多気筒エンジンを買うことが、このクラスの顧客のステータスを表していたといってもいい。そんなこともあり、すでに、SクラスのPHVを投入しているメルセデス・ベンツでさえ、3.0LのV6ターボを採用している。ところが、BMWは740e iパフォーマンスに搭載したエンジンは2.0Lの直4ターボ。燃費や軽量化、そして効率的には2.0L直4ターボのメリットは大きいが、マーケット的には、かなりリスクのある大胆ダウンサイジングといえる。

BMW7シリーズ

‖ハイパワーのスペック

この2.0L直4ターボエンジンは、最高出力190kW(258ps)/5,000rpm、および、最大トルク 400Nm(40.8kgm)/1,550-4,400rpmを発生。2.0Lターボとしては、かなりハイパワーな仕様となっている。

組み合わされるモーターは、最高出力83kW(113ps)/3,170rpm、最大トルク250Nm(25.5kgm)を発生。システムトータルの最高出力240kW(326ps)、最大トルクは500Nm(51.0kgm)の卓越したパワーとトルクを発揮する。0-100km/h加速は僅か5.4秒(ヨーロッパ仕様車値)と俊足。このシステム最高出力は直6 3.0Lターボの740iと同じだが、最大トルクは50Nmほど上回っている。

そして、このハイブリッドシステムの要ともいえるリチウムイオン電池の容量は9.2kWhと大容量。大型のセダンである7シリーズのボディを42㎞までEV走行が可能な容量となっている。充電は200V/15Aで約4時間で満充電可能。小まめに充電する環境があれば、日常的な使い方では、ほぼガソリンを使うことはないだろう。

<日本では十分!? EV最高速度は140㎞/h! 多彩な走行モードで、自由自在な走りが可能!>

BMW7シリーズ740e iパフォーマンスは、多くのドライビングモードが存在する。電気モーターとガソリンエンジンをどう使うか「eDriveボタン」で切り替え可能としている。走行モードは、3つある。

ひとつめは、 AUTO eDriveモード。基本はこのモードを使う。電気モーターとエンジンが最適なバランスで高効率に連動する。時速約80kmまではEV走行が可能。

二つめは、MAX eDriveモード。140km/hまでの速度域で、電気モーターの駆動力のみで走行。この状態で、アクセルのキックダウン操作すると、エンジンが始動。エンジンのパワーも加わり、よりパワフルな走行ができるようになる。このモードは、徹底してEVで走行したい時向けのモードとなる。

三つめは Battery Controlモード。バッテリーの充電量を減らさないように効率的な走行するとともに、ガソリンエンジンによる発電も行う。バッテリー充電量の値を最高100%までドライバーが任意に設定可能。走行中においても、100%まで充電量を増やすことができる。あまり効率的とは言えないが、都市部の夜間などの目的地付近で、なるべくEV走行したいときなどに事前にバッテリーの容量を増やしておくモードといえる。

こうしたPHV特有のモードに加え、ドライビングパフォーマンスコントロールボタンにより、エンジンレスポンス、ステアリング、トランスミッション、サスペンションのダンピング特性を、ドライバーの好みに応じて「COMFORT」、「SPORT」、「ECO PRO」、「Adaptive」の各モードに設定が可能だ。これにより、多彩な走行パターンが設定できドライバーの色々なニーズに対応してくれる。

<ラゲッジスペースの低容量化は、痛手か>

さて、気になるトランク容量だが、大型のリチウムイオン電池を搭載したことで420Lとなった。ガソリン車が515Lなので、約100Lもトランク容量が少なくなっている。ゴルフやレジャー、旅行などでトランクに荷物を積むケースが多い顧客にとってトランク容量は重要。約100Lも減るとなると、PHVという選択を諦めるということにもなりかねない。ただ、同じメルセデス・ベンツS550eロングが365Lしかないので、740e iパフォーマンスの方が多少広いとはいえる。しかし、ラゲッジスペースを犠牲にしなければいけない設計がそもそも間違いだ。PHVへの過渡期ということで、既存車種に後付けでリチウムイオン電池を搭載しなければならないということであれば、仕方のない部分でもある。ただ、次期モデルは、そんな言い訳は許されないだろう。使い勝手で我慢が強いられるようでは、PHVの普及スピードは上がらない。

<大胆価格戦略! ガソリンの740iよりも安い11,690,000円!>


BMW7シリーズそして、注目したいのは740e iパフォーマンス価格だ。BMWは、3シリーズのPHVでもかなり戦略的な価格設定をしてきた。同様に、7シリーズでも戦略的な価格設定とした。なんと、740e iパフォーマンスの価格は、11,690,000円から。ガソリン車の740iが12,250,000円なので56万円も安い計算になる。

<PHVも普及させなければ意味がない!!>

このクラスを買う顧客に取って、56万円安いという価格差が購入マインドを左右するほどのインパクトは残念ながら無いだろう。しかし、ガソリン車よりPHVの方が安いという価格設定にBMWの強固なメッセージを感じる。つまり、これからの時代、普及させるべきはPHVであるということだ。

7シリーズには、この740e iパフォーマンスとまったく対極にあるハイパフォーマンスにこだわったV12エンジンを搭載したM760Li xDriveが同時期に発売された。この2台、まったく趣向の異なる顧客に向けたモデルだ。しかし、M760Liは、あまりにも古典的過ぎるクルマだ。クルマの電動化が加速する中、旧態依然のクルマでは、まったく未来が感じられない。V12エンジンじゃなくても、よりモーターアシストを強力にしたりするなどのMモデルがあっていいだろう。もはや、単に排気量が多く速いクルマが、オーナーのステータスシンボルとなる時代ではない。これからは、速さだけでなく環境性能を意識した知性が必要な時代だ。


‖BMW 740e iPerformance価格

・740e iPerformance 11,690,000円
・740e iPerformance M Sport 12,400,000円