ホンダは、人気コンパクトミニバンであるフリードをフルモデルチェンジし発売を開始した。また、従来のフリードスパイクは、フリード+(プラス)と車名が変更されている。

‖先代フリードは、コンパクト+多人数乗車+スライドドアで人気に

初代のフリードは、2008年にデビューした。短い全長と5ナンバーサイズの全幅というコンパクトなサイズに、両側スライドドアを装備。さらに、広々とした室内空間や多彩なシートアレンジをもち、6人、もしくは7人乗りという多人数乗車を可能とした。こうした高効率パッケージは、日本で非常に使いやすいモデルということもあり、フリードはあっという間にヒットモデルとなった。まさに、ホンダらしい独創性にあふれるモデルで、コンパクトミニバンクラスというカテゴリーを生み出した。

その後、フリードはその優れたパッケージングを生かし、多人数乗車ではなくラゲッジスペースをフレキシブルに使えるフリードスパイクを発売。車中泊などにも対応。工夫次第で多くのレジャーで便利に使えるクルマとしての価値もアピールした。

そして、待望のハイブリッドがモデルが登場し、フリードの人気はさらに高まっていった。フリードの価格は、両側スライドドアを装備していたこともあり、コンパクトカーの枠を超えたやや高めの価格帯だったが、マーケットのニーズと合致したこともありよく売れた。まさに、ドル箱車となり約8年間もの長い間ヒットモデルとして君臨し続け、国内ホンダを支える車種として成長。

‖新型フリードは、先代のコンセプトを継承しながら、運転のしやすさや使い勝手大幅アップ!

ホンダフリード新型フリードは、基本的にキープコンセプト。使いやすさや、室内スペースはさらに向上している。新型フリードは、1~3列目ヒップポイント間距離を先代フリードより90mm拡大。また、6人乗りの3列シート車はキャプテンシートを採用。先代フリードより120mm拡大した360mmのロングスライドを使い、4人乗りにすると、2列目は非常にゆとりある空間になる。

乗降性も向上した。先代フリードよりスライドドア開口幅を20mm広げて665mmとした。ステップ高も15mm下げ390mmとした。開口部がよりワイドで低くなったことで乗降性が向上している。とくに、お年寄りや子供にも優しい仕様となっている。

新型フリードは、運転のしやすさにもこだわった。子育て層がメインターゲットだが、平日はママが運転するケースも多い。また、54%もの女性がフリードを購入していることもあり、女性が運転しやすいと思えるような工夫をしている。特徴的なフロントウインドウにより、ドライバーの見上げ角を向上し、視界を大幅に拡大。大きなフロントコーナーウインドウと、さらに細くしたフロントピラーにより、斜め前方視界も向上。良好な視界を確保することで安心感をもたらすとともに、開放的な室内空間を実現した。

インテリアデザインは、かなり洗練された印象だ。先代のややプラスチック感あふれる質感も随分改良されており、なかなか高い質感を誇っている。価格に合った質感になっている。

‖最小回転半径は5.2m! 小回りの良さでライバルとの違いをアピール

ホンダフリード使い勝手の良さを表す数値が最小回転半径。この数値が小さいほど小回りがきき、狭いところでの駐車や走行が容易になる。新型フリードは、5.2mの最小回転半径で、特別スゴイ数値ではないが使い勝手のよい部類に入る。なぜ、新型フリードがこの数値をアピールするのかというと、ライバルのシエンタの数値がかなりスゴイことになっているからだ。シエンタも通常の15インチホイール車であれば、フリードと同じ5.2m。しかし、16インチホイール車を選択してしまうと、なんと最小回転半径は5.8mにもなる。 この数値は、アルファード&ヴェルファイアなどの大型ミニバン並み。こうなると、なんのためにコンパクトカーを選んでいるのか? という、本末転倒な話になる。そうした違いをアピールしたいために、普通はあまり宣伝材料にされない最小回転半径をアピールしているのだろう。

<フリード+もフルフラットになり、さらに便利に>

フリード+も使い勝手を向上。フリードスパイクから185mm低くし、開口部地上高335mm(FF車)の超低床化した荷室を実現。背の高い荷物や自転車なども容易に積載が可能となった。シートアレンジは、6:4分割のダブルフォールダウン機構を採用。フルフラット化が実現できたことにより、車中泊もより便利になった。軽量・高強度のユーティリティボードを使ってシートアレンジをすれば、セミダブルサイズのマットレスが敷けるフラットスペースが出来上がる。このフラットスペースの下は床下収納として使用可能だ。

‖ハイブリッド車も改良で、ライバルを超えた?

ホンダフリード新型フリードとフリード+のパワーユニットは、1.5Lハイブリッドと1.5Lガソリンの2タイプが用意されている。先代のフリードは、IMAと呼ばれる旧式のハイブリッドシステムだったため、それほど燃費は良くなかった。今回、最新の1.5Lハイブリッドシステムが搭載されたことで、燃費性能は先代フリードから飛躍的に向上した。FF(前輪駆動)車で、27.2㎞/Lか26.6㎞/Lという低燃費を実現。ライバルのシエンタは、全グレードで27.2㎞/Lという燃費値になっているので、若干負けている。

ただ、このハイブリッドシステムは、ハイブリッド車用モーターに世界初の重希土類完全フリーのネオジム磁石を採用している。この技術は、コストダウンが図れるだけでなく、安定して素材が調達できるメリットもある。

<ハイブリッド車に4WDを設定し、シエンタと差別化>

新型フリード ハイブリッドが、シエンタと大きく異なる点は、4WDの設定があること。シエンタには4WDの設定がない。4WDがあるか無いかは、降雪地域に住む人々にとって重要な要素となる。ハイブリッドが欲しくても、4WDじゃないと冬は不便、という顧客にはシエンタでは対応できない。

ホンダフリード

<ガソリン車の馬力とトルクは、力強いつくりに>

1.5Lガソリン車の出力は、131ps&155Nm。燃費は19.0㎞/Lとなった。ライバルのシエンタは20.2㎞/Lなので、燃費値はやや放されている。ただし、シエンタの出力は109ps&136Nmなので、パワーとトルクはフリードが勝っている。多人数乗車が基本のクルマなので、力強さの方が重要と考えるのなら新型フリード、とにかく燃費が大切と考えるのならシエンタということになりそうだ。こうした違いは、試乗してみて確かめるといいだろう。

‖注意!安全装備「ホンダセンシング」はオプション設定


装備面では、歩行者検知式自動ブレーキ関連の安全装備「ホンダセンシング」 が用意された。ホンダセンシングは、前走車や歩行者などとの衝突回避軽減、車線維持支援、誤発進抑制などの機能をもつ先進の予防安全技術だ。こうした高機能なタイプの自動ブレーキがコンパクトクラスに装備される例は、国産車ではまだ少ない。ライバルのシエンタは、歩行者を検知することができない。高機能な自動ブレーキが選べるという点では、一定の評価はできる。しかし、問題なのはホンダのHPには大きく「Safety for Everyone」「事故にあわない社会」の実現をめざして、と書かれている。新型フリードは、このホンダセンシングを一部のグレードを除きオプション設定としている。全車に標準装備されていないのだからホンダの安全思想「Safety for Everyone」とは合致していない。ホンダのいう「事故にあわない社会」の実現というのは「顧客の財布の中身次第」ということになる。ホンダだけではないが、ご都合主義と顧客に思われても仕方がない。

スバルも昔は、安全装備に関して積極的ではなかったが、安全が売るための重要な要素であると判断してからは、大きく方向転換。今秋発売予定のスバル インプレッサには、歩行者検知式自動ブレーキ関連の安全装備「アイサイト」 やニーエアバッグを含む7エアバッグ、歩行者エアバックが全車標準装備化されている。ここまでやったなら「Safety for Everyone」「事故にあわない社会」といってもおかしくない。

クルマは、操作を誤れば凶器になる。そのため、社会で愛され続けるためには、同乗者だけでなく歩行者も傷つけてはならない。現在、できるだけ人を傷つけることを回避するための技術があるのだから、早急に標準装備化するべきだ。

‖選ぶなら、オススメはハイブリッドGホンダセンシング

ホンダフリード新型 フリードの選び方だが、重要なホンダセンシングがオプションでも選ぶことができないハイブリッドBとBグレードは除外したい。その上で、ハイブリッドかガソリン車かの選択だ。上級グレードのハイブリッドGホンダセンシング7人乗りの価格は2,517,600円で、ガソリン車のGホンダセンシングとの価格差は約40万円。

約40万円という価格差はかなり大きいが、ハイブリッド車にはLEDヘッドライトやナビ装着用スペシャルパッケージ+ETCなどの装備差も大きい。実質の価格差はかなり縮まる。それでも、ハイブリッド車の優れた燃費による燃料費差で元を取ることは難しい。また、絶対的な速さでは70㎏くらい軽量なガソリン車が上回る。静粛性やモーターアシストによるレスポンスの良い加速感はハイブリッドだ。

また、ガソリン車とハイブリッド車では、リセールバリュー差が今後大きくなると予想できる。5年以内程度で乗り換えるというのであれ、リセールバリューやエコカー減税差を入れて考えると、ハイブリッド車とガソリン車が同等程度になる可能性もある。こうなると、満足度の高いハイブリッド車がお勧めだ。

新型フリードの価格は、やや高価にみえる。これは、標準装備化されている装備がよいからだ。ホンダセンシングが標準装備化されたグレードなら、左右のスライドドアがパワースライドになっているので十分に満足できる。そうした点を含め考えると、お勧めグレードはハイブリッドGホンダセンシングになる。

また、6人乗りか、7人乗りかという判断もある。多人数乗車するケースは少なく、2列目をパーソナルで余裕ある空間として使いたいのなら6人乗り。とにかく、子供の送迎などで、たくさん人数を乗せたいというのであれば7人乗りという選択になるだろう。フレキシブルにこなせることを考えれば、よほど2列目シートの余裕を重視するという人以外は、7人乗りを選んだ方が無難だ。

新型フリードの価格は高い。価格はハイブリッドGホンダセンシングが2,516,000円なのに対して、ガソリン車だがひとクラス上のステップワゴンGホンダセンシングが261万円! 価格差はわずか10万円ほど。フリードの大きさにこだわらなければ、5ナンバーミニバンという選択肢もある。


‖ホンダ フリード/フリード+(プラス)の価格

<フリード>
・B 6人 FF 1,880,000円/4WD 2,096,000円
・G 6人 FF 1,980,000円/7人 FF 2,001,600円/6人 4WD 2,212,200円
・G Honda SENSING 6人 FF 2,100,000円/7人 FF 2,121,600円/6人 4WD 2,332,200円
・HYBRID B 6人 FF 2,256,000円/4WD 2,472,000円
・HYBRID G 6人 FF 2,376,000円/7人 FF 2,397,600円/6人 4WD 2,608,200円
・HYBRID G Honda SENSING 6人 FF 2,496,000円/7人 FF 2,517,600円/6人 4WD 2,728,200円
・HYBRID EX 6人 FF 2,656,000円

<フリード+>
・B FF 1,900,000円
・G FF 2,000,000円/4WD 2,232,200円
・G Honda SENSING FF 2,120,000円/4WD 2,352,200円
・HYBRID B FF 2,276,000円
・HYBRID G FF 2,396,000円/4WD 2,628,200円
・HYBRID G Honda SENSING FF 2,516,000円/4WD 2,748,200円
・HYBRID EX FF 2,676,000円


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