<質感と装備向上させ競争力をアップ! 燃費と安全装備で負けるが、使い勝手ではフィールダーの圧勝!>

ホンダ シャトルハイブリッドホンダは、コンパクトワゴンであるシャトルを一部改良して発売した。

シャトルは、以前フィットシャトルと呼ばれていた。しかし、2015年のフルモデルチェンジ時に改名しシャトルとなった。理由は、フィットと名前が付くことで、フィットの派生車であることが分かり、顧客が嫌がるため。そして、デザインも大きく変更し派生車のイメージを消すことで、よりブランド力を強化。高値で売りたいという狙いもある。

こうしたシャトルブランの強化は、見事に成功する。2016年1~6月の販売台数は22,504台を売り、登録車では18位にランキングされていて、良く売れている。この販売台数は、販売不調のステップワゴンと同等程度にまで成長。ホンダの売れ筋車種順では、フィット、ヴェゼル、ステップワゴン、シャトル、フリードとなっており、国内ホンダを支える車種となった。また、ライバルのカローラフィールダーに近い販売台数にもなってきた。

シャトルのハイブリッド比率は8~9割と非常に高い。これは、グレード設定によるもので、ガソリン車は1グレードのみの設定。ほとんどガソリン車を売る気がない。さらに、この1グレードしかないガソリン車も、非常にシンプルな装備となっている。こうなると、ビジネス系で使う顧客ではないと買いにくい。

対して、ハイブリッド車のグレード展開は豊富。3グレードが用意されていて、それぞれ4WDが用意されている。シャトルが売れている理由のひとつは、こうした4WDのグレード設定が幅広いことだ。そもそもフィールダーには、ハイブリッド車に4WD設定が無い。シャトルはこうしたフィールダーの弱点を突いている。4WD機能を必要とする降雪地域の顧客が、ハイブリッドでさらに豊富なグレードから選べるからだ。

しかし、シャトルハイブリッドの燃費は、フィールダーに負けている。シャトルハイブリッドの燃費は、グレードによって異なるが、簡素化されたエントリグレードのハイブリッドは34.0㎞/L。わずかにカローラフィールダーの33.8㎞/Lを上回るが、装備が簡素化されたグレードなので、ほとんど顧客が選ばないグレードだ。ある意味、燃費でフィールダーに勝つためだけに存在するグレードともいえる。中間グレードのハイブリッドXは32.0㎞/L、ハイブリッドZは29.6㎞/Lとなっていて、フィールダーにやや差をつけられている。実際には、フィールダーが燃費で勝っているという状況だ。

ただし、燃費でフィールダーに負けても、ワゴンモデルで重要な要素である積載スペースでは、シャトルハイブリッドが勝る。フィールダーが407Lという積載容量なのに対して、シャトルハイブリッドは570Lと完全にクラスを超えた積載性を誇っているのだ。さすがに、荷物を多く積む顧客にとってこの差は大きい。実用性という面では、シャトルハイブリッドという選択になる。

ホンダ シャトルハイブリッド両車ともコンパクトカーなので、やはり狭い場所での使い勝手も重要。シャトルハイブリッドの最小回転半径は4.9mで、フィールダーと同じ。しかし、両車とも16インチホイールを選択すると、シャトルハイブリッドが5.2m、フィールダーは5.5mにもなる。シャトルハイブリッドの5.2mで、コンパクトカーとしての使い勝手はギリギリといったところ。フィールダーの5.5mというのは、もはやミニバン並み。クルマは小さいのに、ミニバン並みに使いにくいということになる。このあたりも、コンパクトカーを選ぶ時に十分にチェックしたいポイントだ。狭い駐車場を使う顧客の場合、今まで一回で入っていたのにフィールダーだと切りかえししないと、駐車場に入らないなどの場合があるからだ。 燃費ではフィールダー、使い勝手ではシャトルハイブリッドといった状況になっている。

さて、今回シャトルハイブリッドの改良では、燃費部分は改良されず、主に装備や質感のグレードアップが中心に行われた。質感と装備を向上させることで、フィールダーに対してより高い競争力を得たい考えだ。まず、インテリアライトのLED化、カラーバリエーションの変更に加え、「HYBRID X」、「HYBRID Z」には2015年12月に発売した特別仕様車「STYLE EDITION」の装備を標準化するなど、内外装ともにさらなる質感の向上を図った。

シャトルハイブリッドの価格は、中間グレードのハイブリッドXで2,195,000円。5,000円ほどだが価格がアップしている。プラスされた装備などを考えると、ややお買い得感がある価格設定になっている。

ただし、シャトルハイブリッドとフィールダーともに、安全装備が物足りない。自動ブレーキ系は、両車とも歩行者検知式の自動ブレーキではない。しかし、歩行者検知式の自動ブレーキではないが、フィールダーのトヨタ セーフティセンスCの方が、シャトルハイブリッドより性能的には勝っている。

ホンダは、コンパクトSUVのヴェゼルにいち早く歩行者検知式の自動ブレーキ「ホンダ センシング」をほぼ標準装備化した。これは、高く評価できる。しかし、シャトルは未だ簡易型の自動ブレーキのみの設定。もはや、軽自動車以下の装備ともいえる状態。ホンダの安全思想には「セーフティ フォー エブリワン」という立派なものがあるが、現実と大きく異なっていることが分かる。

 

シャトルハイブリッドのリセールバリューは、ある程度期待できる。このクラスのワゴン車は、シャトルとフィールダーだけ。中古車の流通量もそれほど多くなく、しかも、中古ワゴン車というのは一定のニーズがあるので比較的高値維持されている。

■ホンダ シャトル価格
・HYBRID FF 1,995,000円/4WD 2,189,400円
・HYBRID X FF 2,195,000円/4WD 2,389,400円
・HYBRID Z FF 2,395,000円/4WD 2,557,000円
・G FF 1,695,000円/4WD 1,889,400円

ホンダ シャトル主な変更点

○エクステリア・インテリアの質感を向上
<全グレード共通>
・インテリアライト(フロントマップランプ、ルームランプ、ラゲッジルームランプ)のLED化
<HYBRID X>
・フォグライト
・ステンレス製スポーツペダル
・ETC車載器(音声タイプ)
<HYBRID Z>
・本革巻ステアリングホイール(スムースレザー)
・ステンレス製スポーツペダル
・ETC車載器(音声タイプ)
・トノカバー
○新ボディーカラーの採用
・プレミアムクリスタルレッド・メタリック
・ルーセブラック・メタリック
・ルナシルバー・メタリック