日産セレナがフルモデルチェンジし、5代目になった。

セレナの歴史

日産セレナ
新型日産セレナは、1991年に初代がデビューした。初代セレナから、先代4代目セレナまで順調に成長。モデルチェンジするたびに、販売台数を伸ばしている。とくに、先代セレナの人気は高かった。2016年1~6月の販売台数は約3.5万台。モデル末期だとういうのに車種別販売台数ランキングで10位に入ったほどだ。フルモデルチェンジ直前で、これほどのセールスは異常ともいえるもの。なんと、フルモデルチェンジしたばかりのライバル車ホンダ ステップワゴンの販売台数が約2.9万台で、セレナを超えることができなかったほどだ。いかにセレナが売れていたか分かる。

日産にとって、セレナは非常に重要な基幹車種。軽自動車を除くと、ノートの次に売れている車種なのだ。つまり、セレナは是が非でも売らなくてはならない車種でもあり、開発陣にとっては失敗が許されないクルマでもある。失敗が許されない新型セレナは、歴代セレナのコンセプトである「BIG・EASY・FUN」を引き継いでいる。新型セレナでは、このコンセプトにアクティブセーフティとエコをプラスした。

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新型セレナは、とにかく室内の広さにこだわった。このクラスのミニバンは、室内スペースの広さと大きく見えるスタイルが重要視される。その結果、ミニバンクラスナンバー1の室内長と室内幅3,240㎜を達成。シートの1列目から3列目まで、どの席に座っても広くゆったりした空間が生み出されている。

また、ミニバンは、ママが運転することも多い。そこで、運転のしやすさにもこだわっている。ママは、クルマの購入決定権に大きな影響力をもつことから、ママに好かれるためには、運転のしやすさは重要なのだ。そこで、新型セレナは、運転席の視界と開放感を考え、 強度を落とさずにAピラーをできるだけ細かく設計。同時にAピラートリムの色を前後で変えた。これらにより、三角窓とフロントドアガラスの視界も物理的に広くなり、心理的にも開放感のある空間を実現することができた。

使い勝手抜群の後部シート

日産セレナさらに、3列目シートへのアクセスを向上させている。そのために、ボディ側から出ていた2列目シートのシートベルトをシート内に内蔵。シートベルト内蔵のシートは、シートそのものに高い強度が求められ、重く高価になるが利便性を重視。また、3列目シートからスライドドアを開閉できるスイッチを追加し使い勝手を良くしている。

新型セレナのシートは、8人乗りの1タイプのみの設定だ。ライバル車は、2列目をキャプテンシートとした7人乗りも用意されている。このキャプテンシートのニーズが多く、最近の主流は7人乗りになってきている。そうしたニーズとは、新型セレナは逆行している。ただ、こうしたニーズを無視している訳ではない。基本的には7人乗りをベースとしながら、スマートマルチセンターシート+横スライド機能を用意し8人乗りにも対応しているといったイメージだ。2列目シートをキャプテンシートのようにする場合、スマートマルチセンターシートを1列目シート中央までスライドさせる。こうすることで、完全に2列目シートは分割されキャプテンシートのように使える。また、1列目中央では、スマートマルチセンターシートが便利なセンターテーブルとして利用できる。基本は7人乗りとして使い、いざという時には8人乗れるというのは、日本マーケットのニーズに合っている。

3列目シートは、分割の左右跳ね上げ式。女性でも簡単に操作できる仕様となっているが、荷室として使うには少々邪魔。また、後側方の視界も悪くなる。ただし、下方に深く掘られたアンダーボックスが使えるので便利だ。

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使い勝手抜群のバックドア

使い勝手面で、大きく進化したのがバックドア。従来の重くて大きなバックドアは、後方に一定のスペースがないと開閉できないなどのデメリットがあった。こうしたデメリットを解消するために、新型セレナは、バックドアを上下に2分割して開くデュアルバックドアを採用。狭い場所では、上部のみを開けて荷物の出し入れができる。

世界初!ハンズフリーオートスライドドア

日産セレナさらに、使い勝手面では世界初となる「ハンズフリーオートスライドドア」を搭載した。荷物などで両手が使えない場合、キーさえ持っていれば足先をスッと車体の下に入れて引くだけでスライドドアが開く。すでに、BMWなどがバックドアやトランクにこうした機能をすでに装備している。世界初というのは、スライドドアでということになる。

新型セレナの一番のウリ、運転支援機能

そして、新型セレナの大きな魅力といえるのが、自動運転技術を使った運転支援機能「プロパイロット」だ。日産は、プロパイロットを自動運転とするイメージでアピールしているが、自動運転ではない。ドライバーが操作する部分もあり、もしもの場合はドライバーが危険回避操作をする必要があるので、あくまでも運転支援機能であることは忘れてはならない。

ドライブパイロットの機能で最大のメリットは、渋滞時の追従走行。渋滞時の少し走り停止、再び走り出すという繰り返しは、ドライバーの疲労を高めるだけでなくストレスも溜める。しかし、ドライブパイロットの機能を使えば、前走車が停止すれば自動停止。前走車が再び走り出した場合、クルーズコントロールのリジュームスイッチを押すか、アクセルペダルを軽く踏むなどすると再発進し、再び追従走行に入る。ペダル操作が大幅に減ることから、ドライバー疲労やストレスから解放される。疲労とストレスの軽減は、事故のリスク軽減にも効果がある。

こうした機能は、ドイツ系輸入車を中心にもはや当たり前の機能だ。しかし、日本車ではこうした歩行者検知式の自動ブレーキを含め装備が大きく遅れていたため普及していない。前走車追従式のクルーズコントロールを装備したクルマもあるが、ほとんどが停止までシステムが解除されるものが多い。停止維持から最発進という機能をもつのは、スバルはアイサイトくらいなものだった。セレナのようなミニバンでは、セレナが初となる装備だ。

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新型セレナの燃費


日産セレナ新型セレナの燃費は、従来の16.0㎞/Lから17.2㎞/Lへと進化した。搭載されたエンジンは、2.0LのMR20DD型にエコモーターを組み合わせたS-ハイブリッドで従来通り。しかし、型式などは同じでもエンジンの中身は大きく変更され、モーターも新たなタイプに変更されている。S-ハイブリッドという名前から、トヨタなどのモーター走行も可能な本格的なハイブリッド車を想像するかもしれないが、新型セレナのハイブリッド機能はマイルドハイブリッドと呼ばれるもので、モーターはエンジンのアシストをする程度で、モーターのみでの走行はできない簡易型だ。

モーターでの走行はできない新型セレナだが、マイルドハイブリッド機能をもつため、アイドリングストップからエンジンの再始動が非常に静かで振動もほとんどない。この静かさと低振動さは、他のガソリン車と比べると圧倒的。再始動したことに気が付かないほどで、高級車並み。さらに、新型セレナは、より静粛性が高められていることもあり、車内は快適だ。

セレナのデザイン性


新型セレナのデザインは、随分変化した。トヨタの強面系にミニバンデザインに近い。ミニバンは、こうした強面系でないと売れないとされているからだ。強面系とは違うスタイリッシュなデザインだった先代セレナの面影をやや残している感があるが、かなり力強さを増した。

新型セレナの選び方


さて、新型セレナの価格。エントリーグレードとなるBの価格は2,316,600円となった。このグレードはマイルドハイブリッド機能もない仕様。まぁ、価格訴求用グレードともいえる。先代同様、売れ筋はエアロパーツを装着したハイウェイスター。新型セレナには、期間限定の特別仕様車プロパイロットエディションが用意されている。プロパイロット機能に加え、16インチアルミホイール、ハンズフリーオートスライドドアなどが装備され、ほんの少しだけ安価な設定となっている。価格はハイウェイスターをベースとしたものが2,916,000円。ハイウェイスターGをベースとしたものが3,187,080円となっている。売れ筋グレードになると思われるハイウェイスターの価格は、2,678,400円。これにオプションのプロパイロット機能を含むセーフティパックBの243,000円をプラスすると2,921,400円。これにナビなどを装備すると、軽く300万円オーバーとなる。先代セレナと比べると、やや高価な印象になる。

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リセールバリューが高いのはハイウェイスター

旧型セレナのリセールバリューは高い。ミニバンが人気ということもあり、新型セレナも同様に高いリセールバリューを誇ることになると予想できる。ただ、高いリセールバリューとなるのは、やはりエアロパーツ系が装着されたハイウェイスターが中心。それ以外のモデルはあまり期待できないので、リセールバリューを気にするのなら、ハイウェイスターを選んだ方がいい。

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セレナの価格


新型セレナの価格は以下の通り。

FF(前輪駆動)

B 2,316,600円
S 2,435,400円
X 2,489,400円
G 2,847,960円
ハイウェイスター  2,678,400円
ハイウェイスター プロパイロットエディション  2,916,000円
ハイウェイスターG 3,011,040円
ハイウェイスターG プロパイロットエディション  3,187,080円

4WD

B 2,603,880円
X 2,733,480円
G 3,135,240円
ハイウェイスター  2,965,680円
ハイウェイスター プロパイロットエディション 3,176,280円

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。