
<優れたデザイン力、パワフルな1.2Lターボ&6速EDCは高評価。しかし、商用車と共用のクルマなのに高価格なのは・・・>

ルノー カングーは、すでにデビューから8年目に入っている。2009年にフルモデルチェンジし2代目となった。新グレードが追加されたとはいえ、モデル末期に入っている。カングーは、両側スライドドアをもつMPV。輸入車で、両側スライドドアをもつモデルは非常に少ない。その理由は、カングーが商用車で郵便や宅配などに使われるバンとして売られているからだ。そのため、スペース効率や使い勝手などは、国産モデルと比べても非常に高いレベルにある。観音開きのダブルバックドアなども、そうした使い勝手を考え採用されている。また、カングーは、LUDOSPACE(ルドスパス: 遊びの空間)と呼ばれている。レジャーやショッピング、ビジネスにスポーツなど、使い勝手の良さがもたらすメリットにより、色々な用途に使えるからだ。
すでに、モデル末期に入ったカングーだが、未だ根強い人気がある。これは、機能性だけではなく、カングーがもつ独特のデザイン力にある。愛着を感じるユニークなデザインは、単に便利な道具としてのクルマという枠を超える。この優れたデザイン力が、カングー最大の武器だ。
インテリアのデザイン力も秀逸だ。ベースが商用車なので、基本的に非常にシンプル。質感も良いとは言えない。こうしたクルマを3トーンのシート表皮やドアパネルのカラーなどセンス良くまとめていて、カジュアルでオシャレな仕様に仕立てている。チープな素材感さえ魅力のひとつとしているのはさすが。日本車ではなかなかできない技がここにある。

ルノーの販売台数は、多くの輸入車の中でもかなり少ない。というのも、ルノーそのものがATをほとんどもっていないという状況だからだ。ATがあっても、完全に競争力がないため、ATが主流の日本では導入しても売れない。MTを入れ一部ファン向けに売るが多くの販売台数は見込めない。このような売り方をするため、高額車はMTのハイパフォーマンスモデルであるルノー・スポール(R.S.)ばかりが売れる。日本では、完全にメジャー化できないマニアックなメーカーとなってしまっている。
同様な悩みをプジョーももっていた、しかし、日本のインポーターによる説得が功を奏したこともあり6AT車が導入され、販売面では好調だ。そもそも、当たり前だが、日本で販売台数を増やしたければ、日本のニーズをくみ取り、それにあった仕様にしなければ売れる訳がない。欧州ではMTが主流だとか、日本マーケットは特殊だとか云々はルノー本国側の逃げの口実でしかない。
ルノーにも6速EDCが開発されたこともあり、カングー ゼンの1.2Lターボと組み合わせることで、ようやく一定数が売れる仕様になったといえるだろう。

このカングー ゼンEDCの価格は、259万円。6MT車に比べ12万円高。エンジンとミッションの性能がグレードアップしたのは理解できるが、価格はやや高価な設定だ。この価格だと、国産車ではノア&ヴォクシーなど5ナンバーミニバン の中間グレードやマツダ プレマシー の上級グレードが買えてしまう金額だ。さらに、カングーには、国産車では当たり前になりつつある自動ブレーキ関連の安全装備が用意されていない。サイドエアバッグなどは標準装備化されているので、一定の安全装備は確保されているが、やはり割高感が強い。元々、カングーは商用車と共用されているクルマだ。さらに、ルノーはカジュアル系でオシャレなイメージが強いが、プレミアムブランドではない。こうした価格設定が、一般的な顧客を対象にしておらず、ルノーに対するロイヤリティが高いファン向けの価格になっていることが販売面で伸びない理由のひとつだろう。
装備を簡易化し235万円という価格設定されたカングー アクティフ(6MT)もやや割高感がある。安全装備を簡素化しなかったことは英断だが、さすがに6MTだけというのは一般的な顧客層のメニューリストに載るのは難しい。ルノーファンの中には、簡易装備のMT車を望む顧客が多く、一般的な顧客というよりファン層に向けたグレードだ。日本の免許制度を考えても、この仕様では多くの販売台数は見込めないだろう。
■ルノー カングー価格
・ルノー カングー ゼン(EDC) ¥2,590,000
・ルノー カングー アクティフ(6MT) ¥2,350,000
カングーのカタログ情報

- 現行モデル
- 令和5年3月(2023年3月)〜現在
- 新車時価格
- 384.0万円〜427.0万円
カングーの在庫が現在13件あります
以下車両の保証内容詳細は画像をクリックした遷移先をご確認ください。