トヨタ エスティマ

<自動ブレーキのトヨタ セーフティセンスCが標準装備。しかし、歩行者検知式でないのは物足りない>

トヨタエスティマトヨタは、デビューからすでに10年が経過したミニバンのエスティマをマイナーチェンジし発売を開始した。

エスティマは、2006年にデビュー。現行モデルが3代目となっている。すでに、10年以上が経過したベストセラーモデルだ。エスティマの歴史のなかで、最も注目したいのが初代エスティマ。初代エスティマは、1990年にデビューした。アンダーフロア型のミッドシップレイアウトという例をみない設計と、近未来感あるデザインで話題になった。当時、商用車ベースのミニバンが多かったこともあり、より乗用車感覚のミニバンとして人気を得た。「天才タマゴ」というキャッチフレーズもあり、先進性をアピールし、あっという間に人気ミニバンとなった歴史的なモデルだ。そして、2代目は、一般的なFFモデルとなり2000年にデビュー。現在の3代目につながる共通したスタイリングをもつ。

初代、2代目、そして3代目とエスティマは、すべてのモデルが大ヒットした。3代目エスティマは、デビュー直後は高級ミニバンとしては異例ともいえる1万台/月越えも幾度となく達成している。トヨタにとって、まさにドル箱。約半年ほど遅れてハイブリッド車が投入され、エスティマ人気は不動のものとなった。

ただ、売れ筋グレードは、エスティマハイブリッドではなくガソリン車。ハイブリッド車は、400万円を超えるような高額車になってしまうことや、E-Fourと呼ばれる電気式4輪駆動になるため、降雪地域の顧客に向くが、そうでない顧客にとっては、あまり必要のない機能になってしまうからだ。

トヨタエスティマすでに、エスティマは幾度となくマイナーチェンジや改良を繰り返し、すでにデビューから10年が経過した。5ナンバーミニバンや上級ミニバンのアルファード/ヴェルファイアの間を埋めるボディサイズということもあり、今ではこの隙間を埋めるモデルになっている。そのため、昔のような勢いは無く、販売台数は1,000~1,500台/月程度。それでも、日産エルグランドより売れている。トヨタとしては、隙間を埋めるエスティマは必要だが、ほぼ国内専用車となるモデルを開発するにはコストがかかり過ぎる。そうしたことなどもあり、10年以上経過しても売られている。

今回のマイナーチェンジでは、お色直し感が強い。やや、古さを感じさせるデザインを中心に手が入れられている。基本的な丸みを帯びたワンモーションフォルムはそのままだが、フードやグリル、フェンダーを中心にデザインを一新した。アッパーグリルから連続してサイドまで回り込んだ薄型のヘッドランプを採用。LEDクリアランスランプと組み合わせたBi-Beam LEDヘッドランプ、デイライト機能付のLEDアクセサリーランプが、精悍さと先進性を強調。ややシャープな顔つきになり、新鮮味や先進性が増した。また、特徴的な大開口のアンダーグリルと張り出したバンパーコーナーの造形がワイド感とスタンスのよさを強調。人気が高く、エアロモデルでスポーティなグレード、アエラスのみの設定としている。

リヤビューは、立体的に造形で赤基調のリヤコンビネーションランプを採用。LEDライン発光ストップランプと面発光テールランプとの組み合わせにより、夜間でもひと目でエスティマとわかるデザインとなった。

インテリアは、スタイリッシュさに磨きがかかった。合成皮革にインストルメントパネルにアクセントステッチの加飾を施し、モダンで上質な室内空間を演出。さらに、横長に施したサテン調加飾オーナメントが室内の横方向への広がりを感じさせるとともに、サテン調加飾のステアリングホイールとあいまって、質感の高さを表現した。

トヨタエスティマメーターの意匠も変更された。新デザインとなったオプティトロンメーターは、より先進性を追求するとともに、視認性を確保。また、マルチインフォメーションディスプレイ(4.2インチTFTカラー)を標準装備。さらに、大型ナビと一体化したタブレット端末のようなセンタークラスターには、直感的な操作が可能な静電式スイッチを採用した。ただ、静電式スイッチは、見栄えは良く高級感があるのだが、実際の操作性は今ひとつなものが多い。走行中はクルマが揺れるので、指先で確実に操作しにくい。そうなると、指先を注視しなくてはならなくなり、安全面では少々微妙。指でつまめるボタンやダイヤル式の方が操作は確実。このあたりは、メーカーにより考え方が色々。あえて、ダイヤル式を使っているメーカーもある。こうした部分は、実際に試乗するなどして、チェックしてみるといいだろう。

快適装備面では、スーパーUVカットプライバシーガラスをリヤドア・リヤクウォ―ター・バックドアに設定。従来より設定のあるフロントドアガラスとウインドシールドグリーンガラスとあわせて、トヨタ初360度全方位においてUVカットガラスの採用を実現し、快適性を向上させている。

走行性能面での改良は微小。コイルスプリングをはじめとしたサスペンションのチューニング最適化。縦安定性の確保に加え、さらなる上質な乗り心地を実現した。空力統制面では、リヤコンビネーションランプにエアロスタビライジングフィンを採用することで空力性能を高め、車両の優れた走行安定性確保した。さらに、フロントパフォーマンスダンパーを装備。走行中のボディに発生する小さなたわみや微振動を速やかに吸収し、よりシャープなハンドリングを実現した。

トヨタエスティマ今回の改良では、パワーユニットやボディなどの改良は行われていない。エスティマは、すでに10年が経過したモデル。こうしたサスペンション関連のチューニングでどこまで、現代のミニバン並みの走行パフォーマンスが出せているのかというのも重要。エスティマを購入する場合、必ずライバル車も含め試乗して決めたいところだ。

安全装備面は、若干進化した。自動ブレーキ関連の安全装備であるトヨタ セーフティセンスCが標準装備された。この機能は、衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビームをセットにした衝突回避支援パッケージとなっている。ただ、トヨタ セーフティセンスCは、歩行者検知式ではない。プリウスには、歩行者検知式の自動ブレーキが用意されている。本来なら、ミニバンのように大きく重いクルマほど歩行者と衝突した場合、衝撃は大きくなり大事故になりやすいからだ。さらに、300万円をはるかに超えるエスティマが装備していないのは、高級ミニバンとしては物足りないと言わざるを得ない。

グレードは、Xグレードなどがなくなりスポーティで人気グレードのアエラスのみの設定となった。価格はエスティマ アエラス8人乗りベースで15万円ほど高価な価格設定となった。トヨタ セーフティセンスCが標準装備されたり、装備向上分を考えると、まぁ妥当な価格アップといえるだろう。ただ、微妙なのはエスティマは10年間売り続け、ほぼ開発費などの元は取れていると思われる。そう考えると、せめて価格据え置きくらいの太っ腹感を出すなど、顧客への還元があってもいい。そうすれば、結果的により競争力もアップする。

トヨタエスティマエスティマの選び方は、まず、すべてのグレードにサイドエアバッグやカーテンエアバッグがオプションとなっているので、必ずこのオプションを選択したい。家族を乗せるミニバンなので、ここでケチってはいけない。オプション価格は81,000円か75,000円だ。

走行性能面では、設計が古いクルマなので、走行性能を向上させるパフォーマンスダンパーが装備されているモデルがおすすめとなる。ライバル車に比べると古さは隠せない可能性が高い。そのため、こうした走行性能を向上させるアイテムは外せない。そうなると、パフォーマンスダンパーが装備されていないアエラスグレードは除外される。アエラススマートグレードは、オプション設定されているので、このグレードを選択するのならパフォーマンスダンパーを選びたい。その他の装備差は、豪華装備の有無によるものなので、好みで選択すればいいだろう。エスティマは、人気モデルということもあり、リセールバリューがやや高いのも魅力だ。

■トヨタ エスティマ/エスティマハイブリッド価格

<エスティマ>
・AERAS 8人乗り 2WD 3,271,418円 7人乗り 3,312,655円 “サイドリフトアップシート装着車”7人乗り 3,332,000円
・AERAS PREMIUM 7人乗り 2WD 3,401,018円 “サイドリフトアップシート装着車” 3,414,000円
・AERAS SMART 7人乗り 2WD 3,514,909円
・AERAS PREMIUM-G 7人乗り 2WD 3,700,473円

<エスティマ ハイブリッド>
・AERAS 8人乗り E-Four 4,311,163円 7人乗り 4,352,400円 “サイドリフトアップシート装着車”7人乗り 4,321,000円
・AERAS PREMIUM 7人乗り 4,391,673円 “サイドリフトアップシート装着車”7人乗り 4,357,000円
・AERAS SMART 7人乗り 4,532,073円
・AERAS PREMIUM-G 7人乗り 4,928,727円