日産ノート

<お買い得感はないが、アラウンドビューモニターや踏み間違い衝突防止アシストが標準装備された特別仕様車Vセレクション+SafetyⅡ>

日産ノート日産は、コンパクトカーのノートに、充実の安全装備をプラスした特別仕様車Vセレクション+SafetyⅡの発売を開始した。

日産ノートは、2012年にフルモデルチェンジ。現行モデルが2代目となる。このクラスのコンパクトカーは、4,000㎜前後が一般的だが、ノートは全長4,100㎜と、やや大きなボディサイズをもつ。こうしたボディサイズの影響もあり、ノートの室内はとても広い。

ノートに搭載されているエンジンもユニークだ。ホンダやトヨタが、このクラスではハイブリッド車を投入し大人気だ。しかし、残念ながら、日産にはこのクラスに投入できるハイブリッドシステムが無い。そのため、日産はガソリンエンジンの低燃費化で対応せざるをえなかった。なんと、コストがかかることを承知でミラーサイクル方式の1.2Lエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせたHR12DDR(DIG-S)エンジンを搭載。このHR12DDRエンジンは、通常時1.2Lエンジンだが、パワーが必要な時はスーパーチャージャーが瞬時に過給。1.5L並みのパワーを発揮する。また、自然吸気の1.2Lエンジンも用意された。

また、ライバルがハイブリッド車なので、エコカー減税はほぼ免税に対応になる。そうした部分が販売面でハンデにならないように、モデル途中で車両が停止する前にアイドリングストップ機能が働くタイプに変更するなどの改良が行われた。その結果、現在では26.2㎞/Lという優れた低燃費性能を実現。ガソリン車の中では数少ないエコカー減税免税対応となっている。

日産ノート安全装備面では、デビュー当初のノートは物足りなかった。なんと、横滑り防止装置であるVDCが標準装備化されてなかったのだ。しかし、その後自動ブレーキ関連の安全装備が注目されると、ノートはいち早く対応しこのクラスではめずらしい歩行者検知式の自動ブレーキであるエマージェンシーブレーキを用意した。ハイブリッド車やクリーンディーゼルが無く、HR12DDRエンジンは高価で車両価格も高くなるため、ノートは価格勝負もしにくい。そこで目を付けたのが自動ブレーキ。他社が装備が遅れていただけでなく、ほとんどのメーカーが30㎞/h以下で車両にしか対応しない簡易型自動ブレーキしかなかったことに目をつけ、歩行者検知式の自動ブレーキを用意したのだ。これを自動運転のイメージと重ね「安全と自動運転の先進技術」として売り出した。そして、現在では全車標準装備化することで、日産=安全というイメージ作りに成功している。

マーケティング主導の安全装備の拡充だが、この判断は英断だ。日本は高齢化が進み、高齢者の運転操作ミスなどによる交通死亡事故は頻繁に起きている状態。とくに、こうしたコンパクトカーは高齢者や運転に慣れていない初心者が乗るケースも多いのでリスクは高まる。全車標準装備化することで、より安全なクルマが社会に増える。これは、交通死亡事故を減らすという意味で、大きな社会貢献だ。

日産ももちろん、慈善事業ではないので、顧客がその対価を払わなくてはならない。車両価格が上がると、メーカー側は売れなくなると危惧するケースが多い。メーカー側にもリスクはあるが、オプション設定にしてしまっていては普及のスピードが鈍りコストも下がらない。交通死亡事故減という社会的な責任をユーザーに押し付けるのではなく、自動車メーカーが自らの責任で進めていることを選択したことは高く評価できるものだ。未だ標準装備化をしないメーカーの言い訳は「価格を高くすると売れないから」。しかし、そんなことはない。日産ノートは、ガソリン車しかないハンデを負いながらも、同じガソリン車しかないヴィッツよりも売れているし、2015年度の販売台数では5位にランクされている。

日産ノートそうしたノートの強みである安全性をさらに生かした特別仕様車がVセレクション+SafetyⅡだ。装備面では、まず安全性を高める「踏み間違い衝突防止アシスト」がプラスされる。踏み間違い衝突防止アシストは、アクセルとブレーキの踏み間違いによる衝突を回避、被害軽減してくれる。誤操作により駐車場から商店などへ突入してしまうような高齢者の事故が頻繁に起きているが、こうした事故を未然に防いでくれる効果がある。

安全と便利機能を融合したのが「アラウンドビューモニター」。上空から見下ろしているかのような映像をディスプレイ付ルームミラーに映し出す。駐車時で、クルマ周辺がモニターで確認できるので駐車も楽になる。さらに、MOD〔移動物 検知〕機能もある。この機能は、モニターに映っていない範囲からの移動物も検知する。モニターばかりを注視して、モニター外の状況確認を怠り、接近する自転車や歩行者などとの接触を警告音などで未然に防いでくれるものだ。

その他「ディスプレイ付自動防眩式ルームミラー」、「ヒーター付ドアミラー」、「LEDヘッドランプ」を標準装備。このVセレクション+SafetyⅡは、ノートのすべてのグレードに設定されているので、積極的に選んでいい特別仕様車だ。

日産ノート Vセレクション+SafetyⅡの価格は、X DIG-S Vセレクション+SafetyⅡで1,883,520円となっている。ベース車に対して、約17万円高。プラスされた装備分をみると、お買い得感はなく、装備アップ分相当の価格だ。

アラウンドビューモニターなどの安全装備類は、88,560円で装備できるメーカーオプション。つまり、約8万円分がLEDヘッドランプ分ということになる。メダリストにしか装備されいないLEDヘッドランプが、特別装備されているといった印象。 LEDヘッドランプが必要ないというのであれば、アラウンドビューモニターが装備されるセットオプションのみを選択すれば約180万円で購入できる。Vセレクション+SafetyⅡより9万円程度予算が絞れる計算になる。

日産ノートただ、9万円という価格差は微妙なところ。商談時には、まずマツダ デミオやトヨタ アクア、ホンダ フィットハイブリッドなどと競合させ、事前にライバル車の見積りをもって行くといい。2015年度の日産は新型車が1台も投入されなかった。さらに、三菱の燃費不正問題で、頼みの綱だった軽自動車もしばらくの間売れない状況。集客に苦労しているところに、台数が稼げる軽自動車もないという状況なので、販売店は非常に厳しい状況にある。こうした状況は買い手が有利だ。

まず、X DIG-Sにアラウンドビューモニターなどのセットを装備して約180万円の見積りを最初に取る。値引き交渉が進まなくなったところで、X DIG-S Vセレクション+SafetyⅡの見積りも取り「価格を同じにしてくれるのなら、今すぐX DIG-S Vセレクション+SafetyⅡに決める」というような商談もいいだろう。ライバル車の見積りをもっていることをしっかりと伝えているのであれば、相応の値引きが期待できるだろう。

ただし、これは2016年上期くらいまでと考えておきたい。日産はセレナをこの夏にフルモデルチェンジする予定だ。待望の新型車が出れば、セレナユーザーの代替えに忙しくなり、営業マンも値引き交渉に応じなくなる可能性があるからだ。

■日産ノート V セレクション+SafetyⅡ価格

・X Vセレクション+SafetyⅡ 1,651,320円

・MEDALIST X Vセレクション+SafetyⅡ 1,782,000円

・X DIG-S Vセレクション+SafetyⅡ 1,883,520円

・MEDALIST Vセレクション+SafetyⅡ 2,007,720円

・X FOUR Vセレクション+SafetyⅡ 1,865,160円

・MEDALIST X FOUR Vセレクション+SafetyⅡ 1,995,840円