プジョー2008

 

<1.2Lターボ&6速ATにグレードアップしながら、価格は約6万円の上昇。買い得感も加わり、クロスシティが2008の売れ筋にグレードに!>

プジョー2008プジョーは、コンパクトSUVの2008に、1.2L直3ターボ&6速ATを搭載した特別仕様車「2008 クロスシティ」を設定し発売を開始した。
プジョー2008は、2014年に日本デビューした。ボディサイズは、全長4160×全幅1740×全高1550㎜。ベースとなっているのは、Bセグメントのコンパクトカー208。そのため、SUVとはいえコンパクトなボディサイズをもつ。全長4160mmというと、国産車では日産ノートやマツダ デミオといったコンパクトカー並み。最小回転は5.5mで、Bセグメントのクルマとしては、やや小回りは苦手なタイプだ。ただ、このボディサイズは、日本で使う上では使いやすい。

2008の導入時には、1.2L直3エンジンが搭載されていた。出力は82ps&118Nmで、燃費は18.5㎞/L。1.2Lの自然吸気エンジンなので、スペックからは、やや非力な印象を受ける。しかし、実際に試乗してみると、ビックリするくらい元気よく走る。その理由は、ミッションがMTベースの自動変速機能付き5速ETGが搭載されていたからだ。やはり、ATやCVT比べるとダイレクト感あるシフトフィールは、元気の良い走りのイメージと直結する。日本では、あまり評価されない5速ETGだが、シフトチェンジ時の空走感も少なく、かなり完成度は高くなっている。しかし、やはり洗練されたATやCVTと比べると、空走感やシフトタイミングやスピードなど、やや違和感があり万人にお勧めかという訳にはいかない仕様だ。

プジョー2008国内のプジョーもこうした仕様については、少々悩ましく思っていて、あまり積極的に顧客へアピールできていないのが現状だった。しかし、新投入された特別仕様車2008クロスシティには、待望の6速ATが搭載され、パワーユニットには、よりパワフルな1.2L直3ターボエンジンが組み合わされたのだ。このターボエンジンは、110ps&205Nmを発揮し、2.0L自然吸気エンジン並みの最大トルクを誇る。車重は、多少重くなったとはいえ1230㎏。205Nmもの最大トルクをもつエンジンなので、なかなか力強い加速を味わえるはずだ。

また、ターボ化さらえても、それほど燃費は悪化されておらず17.3㎞/Lとなった。輸入車で数少ないライバルであるルノー キャプチャーは17.2㎞/L。わずかに2008クロスシティは、キャプチャーに対して燃費で上回っている。

また、2008はFFのみの設定だが、グリップコントロールと呼ばれる悪路での走破性を高める装備も用意されている。この機能には「スノー」、「マッド(泥、ぬかるみ)」、「サンド(砂地)」と3つのモードを備えており、4WDほどとはいわないまでもラフロード程度なら十分に走破できる能力をもつ。

とくに、6速AT化されたことにより、プジョーの営業現場では、他のモデルと遜色が無くなったことで、より積極的に営業できるようになった。プジョーの苦悩は、いつもトランスミッションだ。スムースなATやCVTを好む日本マーケットでは、自動変速機能付き5速ETGでは、生粋のプジョーファンにしか売りにくい。プジョーも幅広く、より多くの顧客にクルマを売りたいと考えている。スムースなATに慣れた新規顧客には、自動変速機能付き5速ETGでは不満が多く出て、買い替えまでに至らないという。2008クロスシティは、6速ATを得たことでネガティブな要素が無くなり、より多くの顧客に勧めることができるコンパクトSUVになった。また、各車種に6速AT仕様が増えたことで、プジョーの2016年販売台数は絶好調だ。

さて、2008クロスシティの価格は265万円。2008のエントリグレードであるプレミアム約259万円に対して、わずか6万円差という設定になっている。エンジンやミッションがグレードアップしてるのにもかかわらず6万円差という価格設定は、かなり戦略的な価格設定といえる。

プジョー2008もちろん、ターボと6速ATが装備されたからと言って、むやみに価格アップできない理由もある。同じフランス車であるルノー キャプチャーの上級グレードどインテンスの価格が267万円。キャプチャーは直4ターボで、2008クロスシティは直3ターボ。基本的に、エンジンの気筒数が多い方がコスト高になる。また、マーケットも、直3より直4の方がコストがかかっていて高級と言うイメージをもっている。そうなると、直3の2008クロスシティが、直4のキャプチャー インテンスの価格を上回ってしまっては、顧客は割高なイメージをもち営業戦略上メリットは無いと判断したのだろう。

メーカー側の論理はともかく、コストダウンなどの効果があり直3を採用しているのに、他社の直4を上回るような価格では、顧客側から見れば、なんのために直3にしているのか分からない。直3にしてコストを抑えて利益を上げているに、コストダウンした分、顧客への価格メリットが提示できないのでは本末転倒。価格競争力が重視されるコンパクトカーとしの本質を問われる。

価格上昇をわずかに抑え、キャプチャーに対しても競争力のある価格にした2008クロスシティ。しかし、ライバルを国産車コンパクトSUVとすると、やはりかなり高価な印象となる。日本車のコンパクトSUVなら、265万円もあれば、クリーンディーゼルを搭載したマツダCX-3や、ハイブリッドのホンダ ヴェゼルも十分に購入できてしまうからだ。また、こうした国産モデルの多くは、エコカー減税が免税でレギュラーガソリン仕様で燃費も優れる。車両購入費用は同等でも、ランニングコスト大幅に安い。輸入車もせめて、レギュラーガソリン仕様に変更してから日本に導入するくらいの努力は必要だろう。

プジョー2008クロスシティの安全装備面では、サイドエアバッグ&カーテンエアバッグが標準装備されている。この点については、サイドエアバッグ&カーテンエアバッグがオプション装備が当たり前の国産車と比べると、衝突安全性能は一定水準をクリアしている。

ただし、物足りない装備もある。キャプチャーも同じなのだが、2008にも歩行者検知式自動ブレーキの装備が無いのだ。欧州の自動車安全性能を評価するEURO NCAPでは、今後、歩行者検知式自動ブレーキが標準装備化されていないと高評価されない状況になってきている。こうなると、安全装備が貧弱なクルマとされ、クルマが売れなくなる。それだけは避けたいはずなので、プジョーも歩行者検知式自動ブレーキを標準装備化しないとならないときが近い将来やって来るはずだ。国産車ではヴェゼルが、歩行者検知式自動ブレーキをほぼ標準装備化し、先進安全装備面では頭ひとつ抜け出している。2008の購入を考えているのなら、こうした先進安全装備が標準装備化されてからが買い時だ。

■プジョー2008 クロスシティ(CROSSCITY)価格:2,650,000円