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一枚の名車絵 第6回 メルセデス・ベンツ(Mercedes Benz) 190E 2.3-16


ドイツのプレミアムカー・メーカーであるメルセデス・ベンツの屋台骨を支えるミドルサイズサルーン「Cクラス」は、現在4代目です。形式名はW205。ちなみに初代のCクラスは、W202でした。ではW201は?ということなのですが、それがCクラスの前身である「190クラス」になります。

現在では「Aクラス」「Bクラス」・・・「Gクラス」「Sクラス」などと車種が別れているメルセデス・ベンツですが、かつては基本的には排気量が車名でした(Sクラスなど例外もあった)。そして、いちばん小さいメルセデス・ベンツが、現在Eクラスに相当する【ミディアム・クラス】が「コンパクト・クラス」と呼ばれていた(全然コンパクトじゃないけど)時期もありました。名車の誉れ高い「W123」がそれにあたります。


◆人々が思い描くメルセデス像を体現


そんなメルセデス・ベンツでしたが、ライバルであったBMW3シリーズに対抗する車種として、1982年に「190クラス(190シリーズなどとも呼ばれる)」をリリースします。1.7mに満たない全幅で全長も4.4m弱という「コンパクト」なサイズでしたが、「ベンツが作った小さな大衆車」では決して無く、大きなメルセデスをそのまま凝縮した設計のため、安全性や設計思想は見事なまでに引き継がれていました。

四角いヘッドライト、メルセデス・ベンツを象徴するグリル、段差のついたテールランプなどの意匠で、外観は誰が見てもメルセデス・ベンツであると感じられるテイストが盛り込まれていましたが、デザイナーであるブルーノ・サッコの手によるモダンでシンプルなデザインを纏っています。メッキパーツは大幅に減り、質素なデザインとなっていますが、そのおかげでCd値は0.33となり、空力特性が改善されています。


◆排気量を示す「190」ではあるものの・・・


「190」とありますが実際にはメイン車種である「190E(Eは電子制御インジェクションの意味)」の排気量は1997ccでした。排気量=車名の法則からは外れていたのです。これは、ミディアム・クラスのW123に存在した最小排気量モデル「200」との差別化のため(W123は1984年まで製造された)でもありました。

また、190クラス(W201)にはのちに直4・2.3Lや直6・2.6Lエンジンを押し込んでバリエーションを拡充していますが、ミディアム・クラスのW123のように排気量を車種にする(200、230、240,250,280など)と車名がかぶってしまうことになるので、2.3LのW201は「190E 2.3」、2.6Lでは「190E 2.6」といった少々ややこしい命名方法を採用しています。

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◆厳ついエボリューションモデル


copyright_izuru_endo_2016_02_MB190E_1280_748(クリックで拡大)さてさてようやく本日の本題、「190E 2.3-16」の出番です。ズバリ、W201の高性能版という位置づけで、派手(今見ると大人しいのだが)はエアダムで見た目も速そうに装い、エンジンもコスワース・チューンが施された2.3L DOHC16バルブエンジンを搭載。最高出力は185psをマーク、これはW201の最大排気量モデル190E 2.6の165psよりも高いパワーでした。Cd値も0.32へと向上、最高速度は220km/hオーバーというスポーツモデルだったのです。

190E 2.3-16は1988年に2.5Lエンジンに進化して「190E 2.5-16」(195ps)となったあと、グループAのホモロゲーション取得用に1989年には「190E 2.5-16エボリューション1」が、続いて1990年には「190E 2.5-16エボリューション2」が各500台ずつ発売されています。エンジンは派手なエアロパーツで武装した外装に負けず、エボ1では231PS、エボ2では235PSまでパワーアップされていました。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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